第93回国家試験必修問題解説
正解 1
医療保険の種類についての問題。
- 国民健康保険
- 医療保険には、健康保険、共済組合(国家公務員共済組合、地方公務員共済組合、私立学校教職員共済)、船員保険、国民健康保険がある。尚、2008年4月1日より施行された後期高齢者医療制度も医療保険の一種である。
- 介護保険
- 介護保険は、2000年4月1日より施行された社会保険制度である。医療保険、年金保険と共に、公的保険の3つの柱を構成している。
- 雇用保険
- 雇用保険は、労働者が失業した場合に、生活の安定、雇用安定、労働者の能力の開発及び向上を図ることを目的として給付される。2007年4月23日の法改正により雇用福祉事業は廃止された。
- 厚生年金保険
- 厚生年金保険は、民間企業の労働者が加入する公的年金制度である。
【問題2】 喫煙者に起こりやすい健康障害で誤っているのはどれか。
正解 2
禁煙により、心血管系障害(狭心症、心筋梗塞)の減少、初期の慢性閉塞性肺疾患の改善、肺癌の減少がもたらされることが判明している。
- 肺癌
- 喫煙、大気汚染、アスベストは肺癌の危険因子である。特に扁平上皮癌や小細胞癌の発生は喫煙と密接な関係がある。
- 鉄欠乏症貧血
- 喫煙により鉄欠乏症貧血がみられることはない。
- 慢性気管支炎
- 喫煙は肺気腫、慢性気管支炎等を起こしやすくする。
- 冠動脈疾患
- 喫煙は冠動脈疾患の危険因子である。
【問題3】 平成19年におけるわが国の有訴者の自覚症状のうち、最も多いのはどれか。
正解 4
有訴者の自覚症状は、筋骨格系、呼吸器系の症状が多い。尚、平成19年の有訴者率(人口千対)は327.6である。
- 胃のもたれ・胸やけ
- 平成19年の国民生活基礎調査によると、「胃のもたれ・胸やけ」の有訴者率(人口千対)は30.9である。
- 熱がある
- 平成19年の国民生活基礎調査によると、「熱がある」の有訴者率(人口千対)は11.7である。
- 歯の痛み
- 平成19年の国民生活基礎調査によると、「歯の痛み」の有訴者率(人口千対)は21.8である。
- 腰痛
- 平成19年の国民生活基礎調査による有訴者の自覚症状のうち、最も多いのは「腰痛」で103.2、次が「肩こり」で97.1。男性は「腰痛」が最も多く、女性は「肩こり」が最も多い。
【問題4】 介護保険制度における第1号被保険者の年齢で正しいのはどれか。
正解 3
介護保険の被保険者についての基本的な問題。
- 40歳以上
- 55歳以上
- 65歳以上
- 介護保険の被保険者は、40〜64歳の医療保険加入者(第2号被保険者)と、65歳以上の者(第1号被保険者)である。
- 75歳以上
【問題5】 患者の自己決定を擁護する看護師の行動で適切でないのはどれか。
正解 1
自己決定とは、患者が示された選択肢の中から医療行為を自主的判断によって選択することである。
- 患者が理解できない説明は省略する。
- 十分な理解が得られない説明では、患者は医療を選択することができない。理解が得られない場合は、補足説明や再度の説明が必要である。
- 患者の希望を尊重する。
- 患者が望む医療が受けられるように、患者の希望を尊重することが重要である。
- 患者に説明して同意を得る。
- 医療従事者は、インフォームド・コンセント(説明と同意)によって同意を得て初めて医療行為を行うことができる。ただし、緊急事態のため同意を得る時間的余裕が無い場合は省略しても良い。
- 患者が質問する機会を作る。
- 自己決定権を尊重するため、インフォームド・コンセントを実施し、患者が質問する機会を作るべきである。
正解 3
マズローの欲求段階についての問題。
- 帰属の欲求
- 帰属の欲求とは、友人や家族など周囲の人々と関わりたいという欲求である。マズローの欲求段階は第3段階である。
- 自己実現の欲求
- 自己実現の欲求とは、自分の能力や可能性を最大限発揮したいという欲求である。マズローの欲求段階は最高位の第5段階である。
- 生理的な欲求
- 生理的な欲求とは、食欲や睡眠欲など人間が生きるうえでの基本的な欲求であり、最も優先して満たされるべき欲求である。
- 承認の欲求
- 承認の欲求とは、自分の存在や価値を他者に認めてほしいという欲求である。マズローの欲求段階は第4段階である。
正解 1
出生時の体重(平均)は約3kgである。
- 生後3か月
- 生後3か月の体重(平均)は約6kgで出生時の約2倍。
- 生後6か月
- 生後6か月の体重(平均)は約8kg。
- 生後9か月
- 生後9か月の体重(平均)は約8.5kg。
- 生後12か月
- 生後12か月の体重(平均)は約9kgで出生時の約3倍。
正解 2
思春期は、12〜18歳頃の第二次性徴が出現する時期である。
- ギャングエイジ
- 学童期の特徴。友人との関わりを求め、顔ぶれの決まった5〜6人の友人と結束の強い集団を作り、親や教師の干渉から逃れて活発に遊ぶようになる。これにより相互性や責任感、役割分担等の社会性を学んでいく。
- 自我形成
- 思春期においてアイデンティティが確立する。アイデンティティ(自我同一性)とは、自分の性格や、生い立ち、環境、能力、体験などを通して、自分らしさを見つけることである。
- 分離不安
- 母親などの依存対象者との物理的・心理的分離に伴う不安のことを分離不安といい、乳児期から学童期にかけての特徴である。
- モラトリアム
- 大人にも子供にも属さない猶予期間、という青年期の特徴を表した言葉である。厚生労働省発表の正解では2であるが、この選択肢も正しいといえる。
正解 4
訪問看護とは、主治医が認めた者に対し、居宅を訪問し、療養上の世話または必要な診察の補助を行う行為である。
- ステーション管理者は医師である。
- 訪問看護ステーションの管理者は看護師または保健師である。
- 従事者にはホームヘルパーが含まれる。
- 訪問看護ステーションの従事者は、看護師、保健師、准看護師ほか助産師、理学療法士、作業療法士、言語聴覚士であり、ホームヘルパーは含まれない。
- 事業の一環には給食サービスが含まれる。
- サービス内容は、治療介助や介護指導、リハビリ指導等であり、給食サービスは含まれない。
- 訪問看護には医師の指示書が必要である。
- 訪問看護を提供するにあたっては、医者(主治医)の指示書が必要である。
正解 2
体温は主に視床下部で調節される。
- 延髄
- 延髄は、呼吸や血圧を調節する反射、嚥下や嘔吐等の反射が統合されている。
- 視床下部
- 視床下部は本能行動(食欲、睡眠等)を起こしたり、体内の内部環境を調節する。
- 小脳
- 小脳は、四肢の平衡運動を調節する。
- 橋
- 橋は、三叉神経、外転神経、顔面神経、内耳神経が通過しており、意識の保持に関与している。
正解 1
静脈血とは、全身に酸素を供給した後の、二酸化炭素を多く含んだ血液のことである。
- 右心房
- 静脈血は大静脈を通って右心房に流入する。
- 右心室
- 右心室は肺動脈に静脈血を送り出す。
- 左心房
- 動脈血は肺静脈を通って左心房に流入する。
- 左心室
- 左心室は大動脈に血液を送り出す。
正解 4
過度の安静、膀胱・直腸の充満、卵膜や胎盤の遺残、授乳しない等は子宮収縮を妨げる要因である。
- 安静臥床
- 過度の安静は子宮収縮を妨げる要因である。
- 温罨法
- 子宮収縮を促すのに効果的なのは冷罨法である。
- 外陰部洗浄
- 子宮収縮には影響を与えないが、膀胱・直腸の充満は子宮収縮を妨げる要因である。
- 直接授乳
- 直接授乳による乳頭刺激でオキシトシンが分泌され、子宮収縮を促す。
正解 4
医療における基本的な問題。
- 心停止
- 呼吸停止
- 瞳孔散大と対光反射の消失
- 体温低下
- 死の三徴候は、心停止、呼吸停止、瞳孔散大と対光反射の消失である。
正解 3
各体位の特徴について。
- シムス位
- 膝部を屈曲させ腹壁の緊張をとり、状態もやや前屈させた体位。腹痛時や妊婦の休息時、膣や直腸の診察・処置時に用いられる。
- 仰臥位
- 背中を下にして仰向けに寝た姿勢。横隔膜が下がらないため呼吸は楽にならない。
- ファウラー位
- 仰臥位で下肢を水平にしたまま上半身を45度程度上げた半座位の体位。腹部臓器による肺の圧迫を軽減することから呼吸機能の改善を目的として用いられる。
- 骨盤高位
- 仰臥位で腰部を頭部より15〜20cm高くした体位。ショック時や婦人科における大量出血時に用いられる。
正解 4
弛緩性便秘とは、大腸の筋肉がゆるみ、腸の運動が低下することで便が出にくくなる機能的便秘である。
- 飲酒
- 多量の飲酒により腸が刺激され、下痢がみられることがある。
- 不眠
- 便秘により不眠等の体調不良の原因になることがある。
- ビタミンC服用
- ビタミンCを大量に内服すると、胃の不快感や下痢等がみられることがある。
- 運動不足
- 運動不足は弛緩性便秘の主な原因である。他に食物繊維不足、腹筋の筋力低下などが挙げられる。
正解 2
糖尿病は、高血糖の持続により全身の細小血管が障害されやすく、様々な合併症を引き起こす。
- 腎障害
- 腎障害は、糖尿病の三大合併症の一つである。
- 肝硬変
- 肝硬変は、慢性肝炎やアルコール性肝障害などが主な原因である。
- 神経障害
- 神経障害は、糖尿病の三大合併症の一つである。
- 網膜症
- 網膜症は、糖尿病の三大合併症の一つである。
正解 2
経口感染とは、感染動物由来の食物や汚染された水などの経口摂取による感染である。
- HIV感染症/AIDS
- HIVの感染経路は、性的感染、血液感染、母子感染である。
- A型肝炎
- A型肝炎は、A型肝炎ウイルスに汚染された水や野菜、魚介類などの経口摂取により感染する。
- 疥癬
- 疥癬の感染経路は、皮膚の接触や医療器具、寝具などを介しての間接接触が原因の接触感染である。
- 肺結核
- 肺結核の感染経路は、飛沫として空気中に飛散した病原体を呼吸により吸い込んで起こる空気感染がほとんどである。
正解 1
コプリック斑とは、頬粘膜に出現する直径1mm程度の少し膨らんだ白色小斑点である。
- 麻疹
- 感染初期のカタル期、発疹出現の1〜2日前にコプリック斑が出現する。
- 風疹
- 麻疹よりも感染力は弱く、融合しない発疹が出現する。口蓋に小さな赤い点状の口内疹が出現することが多い。
- 水痘
- 全身に直径3〜5mm程度の丘疹が出現する。ひとつの発疹は、丘疹、水疱、痂皮と変化する。
- 帯状疱疹
- 水痘治癒後に神経に潜伏している水痘・帯状疱疹ウイルスが再活性化することによって生じる。神経に沿って帯状に赤い発疹と水ぶくれが出現し、疼痛を伴う。
【問題19】 1モル塩化カリウム注射液で誤っているのはどれか。
正解 3
高カリウム血症は、心臓の刺激伝導障害を引き起こす。
- 乏尿と無尿時には禁忌である。
- カリウムは腎臓から排泄されるので、投与時は尿排泄量が十分であるかを確認する必要があり、乏尿・無尿時のカリウムの投与は避けるべきである。
- 希釈し静脈内点滴注射を行う。
- 1モル塩化カリウム製剤は、必ず希釈して静脈内点滴注射を行う。
- 原液(1モル)で静脈内注射を行う。
- 原液で投与すると、血清カリウムの急激な上昇を招き、心室細動から死に至る危険性がある。
- 副作用に心臓伝導障害がある。
- 副作用に心臓伝導障害があるので、投与中は血清カリウム値や心電図を頻繁に確認する必要がある。
正解 2
モルヒネの作用は鎮痛、鎮静作用であり、鎮痛薬の代表的な副作用は呼吸抑制である。
- 骨髄抑制
- 骨髄抑制は、抗がん剤や放射線などによる治療後にみられる。
- 呼吸抑制
- 呼吸抑制はモルヒネの代表的な副作用である。また、モルヒネを使用する際には悪心や嘔吐、幻覚などを起こしやすい。
- 聴力低下
- 抗菌薬の副作用として、聴力低下が起こることがある。
- 満月様顔貌
- 満月様顔貌は、副腎皮質ホルモン(ステロイド)の服用による副作用である。
正解 2
口腔温測定の特徴についての問題。
- 水銀計では1分間測定する。
- 水銀計は口腔検温では5分間測定する。
- 舌下中央付近で行う。
- 口腔検温では舌下中央部にやや斜めに置き測定する。
- 意識障害のある患者に適している。
- 意識障害がある場合は誤飲の可能性があるので適していない。
- 測定値は腋窩温より低い。
- 測定値は、直腸温>口腔温>腋窩温の順である。
正解 3
主観的情報とは患者の訴えや自覚症状など、患者の言葉から得られる情報のことである。
- 心電図の所見
- 記録から得られる客観的情報である。
- 苦悶様の顔貌
- 観察から得られる客観的情報である。
- 痛みの訴え
- 患者から得られる主観的情報である。
- 便の性状
- 観察から得られる客観的情報である。
正解 3
グリセリン浣腸の特徴についての問題。
- 液の温度は45〜46℃にする。
- グリセリン液の温度は直腸温に合わせて40〜41℃に温める。
- 患者の体位は右側臥位とする。
- 液を腸内に浸透しやすく留まりやすくするために体位は左側臥位とする。
- カテーテルは6〜10cm挿入する。
- チューブの先にワセリンを塗り、口呼吸を促しながら肛門より6〜10cm挿入する。
- 注入後すぐに排便を促す。
- 注入直後の便意は浣腸刺激によるものなので、3〜5分程度我慢させてから排便させる。
正解 1
褥瘡とは皮膚、皮下組織等が長時間圧迫されることにより骨突起部にできる皮膚潰瘍である。臥床患者の褥瘡好発部位は、仙骨部、大転子部、腸骨部、踵部である。
- 仙骨部
- 仙骨部は、仰臥位の際に褥瘡が最もできやすい部分である。
- 内踝部
- 内踝部は、どの体位においても褥瘡は生じにくいが、体格や位置によっては起こる可能性がある。
- 腸骨部
- 腸骨部は、側臥位の際に褥瘡が最もできやすい部分である。
- 大転子部
- 大転子部は、側臥位の際に褥瘡が最もできやすい部分である。
【問題25】 経鼻胃チューブが胃内に入っていることを確認する方法はどれか。
正解 2
胃チューブの目的や挿入方法についても覚える必要がある。
- 口腔内の観察
- 口腔内の観察も必要ではあるが、これだけでは不十分である。
- 胃液の吸引
- チューブが胃内に入っているかを確認するには、注射器で空気を5〜10mL程度注入して上腹部の気泡音を聴取するか、胃液を吸引する。
- 水の注入
- 気道に入っている可能性もあるので、水を注入することは危険である。
- 挿入チューブの長さの確認
- チューブの先端が胃内に入っていない可能性もあるので、チューブの長さの確認だけでは不十分である。
【問題26】 点滴静脈注射の刺入部位が発赤腫脹しているときの適切な処置はどれか。
正解 3
刺入部位の発赤腫脹は薬液の漏れや感染の可能性がある。
- マッサージをする。
- マッサージをすると疼痛が増す。
- 温罨法をする。
- 温罨法は発赤を助長する場合がある。
- 注入を中止する。
- 発赤腫脹がみられた際には、即座に点滴を中止する。
- 体位を変える。
- 体位を変えても特に効果はない。
正解 3
採血についての基本的な問題。
- 駆血帯は強く巻くほど良い。
- ある程度血流を保つ必要があるので、駆血帯は適度に巻く。
- 血管が怒張しない場合は冷罨法を行う。
- 冷罨法では血管が収縮してしまうので、温罨法を行う。
- 抜針は駆血帯をはずしてから行う。
- 駆血帯をはずして血流を確保した後に抜針する。
- 抜針後は採血部位をよくもむ。
- 内出血を起こすので、抜針後は揉まずに圧迫止血する。
正解 1
酸素吸入療法の注意点についての問題。
- ライターの使用
- 引火の危険があるため、火気、電気製品は厳禁である。
- トイレへの歩行
- 装置が外れなければ移動、歩行は問題ない。
- 友人との面会
- 特に禁止する必要はない。
- 食堂での食事
- 経鼻チューブであれば食事も可能である。
正解 3
吸引により体内の貯留物を排出する。患者に負担を与えないよう配慮することが必要である。
- 1回吸引時間は30〜40秒とする。
- 気管内吸引の1回の吸引時間は10秒程度とする。
- 吸引圧は500〜600mmHgとする。
- 高圧で吸引を行うと気管内粘膜を傷つけるので、吸引圧は100〜150mmHg程度とする。
- 無菌操作で実施する。
- 感染を防ぐために無菌操作を行う。
- 吸引後に体位ドレナージを行う。
- 体位ドレナージは吸引前に行う。
【問題30】 意識障害者の救命救急処置で最優先するのはどれか。
正解 4
意識確認後の一次救命処置は、気道確保、人工呼吸、循環確保、除細動である。
- 保温
- 保温も大事であるが優先順位は高くない。
- 輸液
- 静脈路の確保は重要であるが、最優先ではない。
- 導尿
- 導尿の優先順位は低い。
- 気道確保
- 救命処置において最優先するのは気道確保である。