第94回国家試験必修問題解説
【問題1】 平成20年におけるわが国の老年人口の構成割合はどれか。
正解 3
老年人口(65歳以上人口)の構成割合は基本的な数値の一つである。
- 7.1%
- 19.1%
- 22.1%
- 平成20年10月1日現在での老年人口は約2,821万人で、総人口の22.1%にあたる。尚、平成21年10月1日現在での老年人口は約2,900万人で、総人口の22.7%にあたる。
- 25.1%
正解 1
過度のアルコール摂取は肝障害の原因となる。
- 肝硬変
- 肝細胞の変性、壊死、肝脂肪化、肝線維化を経て肝硬変を起こす。
- 白血病
- 白血病と飲酒との関連性は特にない。
- 膠原病
- 膠原病は、自己免疫反応により筋肉、関節、内蔵などの結合組織に炎症を起こす疾患の総称である。飲酒との関連性は特にない。
- メニエール病
- メニエール病は、内耳性めまい疾患であり、回転性めまいに難聴や耳鳴りを伴う。飲酒との関連性は特にない。
【問題3】 国民健康保険一般被保険者本人の自己負担割合はどれか。
正解 3
医療保険についての基本的な問題。
- 1割
- 2割
- 3割
- 国民健康保険の自己負担割合は、一般被保険者においては本人、被扶養者ともに3割である。
- 4割
正解 2
看護記録は患者の情報を共有する重要な資料である。また、法的資料、個人情報でもあるので取り扱いには注意が必要である。
- 記載間違いは修正液を使って訂正する。
- 法的資料としても用いられるものであり、改ざんの疑いがかかるような修正は避ける。間違えた場合は、二本線を引き署名して訂正する。
- ケア終了後直ちに記載する。
- 記録は、ケア終了後できるだけ速く記載する。
- カンファレンスの資料としてコピーする。
- 患者の個人情報でもあるので、むやみにコピーするのは適切でない。
- 法的に永久保存が必要である。
- 看護記録は2年間の保存が義務づけられている。尚、診療記録の法的保存期間は5年間である。
正解 4
「保健師助産師看護師法(保助看法)」の内容を理解しておく必要がある。
- 静脈内注射の実施
- 医師の指示のもとでは行える。
- 心マッサージの実施
- 「保助看法」37条に定められているように、医師の指示を待っていると手遅れになるような緊急時においては、臨時応急の手当てを行える。
- 創部の消毒
- 診察の補助は看護師の業務である。
- 薬剤の処方
- 薬剤の処方は医師の業務である。
【問題6】 患者のQOLを評価する上で最も重要なのはどれか。
正解 1
QOL(クオリティ・オブ・ライフ)は、患者の生命と生活の質のことであり、患者中心の医療の基礎となる概念である。
- 本人の満足感
- 治療等が患者の生活にとって意味のあることなのかを考える必要があり、患者自身の満足度が最も重要である。
- 家族の意向の実現
- 患者の治療に家族の意向は大きく関わるが、患者本人の意思を超えることはない。
- 生存期間の延長
- QOLは、単に命をながらえるよりも、どうすれば快適な生活を送ることができるか、ということを重視する。
- 在院日数の短縮
- 早期に在宅ケアに移行することも、本人が望むのであれば重要である。
正解 3
胎児心拍数は成人と比べて多い。
- 40〜80bpm
- 不整脈や重度の機能不全、もしくは母体心拍数の誤認が考えられる。
- 80〜120bpm
- 機能不全、もしくは子宮収縮による児頭圧迫から生じる徐脈である。
- 120〜160bpm
- 妊娠末期の正常値は120〜160bpmである。
- 160〜200bpm
- 頻脈である。母体発熱、胎児感染、不整脈などが考えられる。
正解 1
小児発達は小児看護において最も基本的なことである。
- 二語文を話す。
- 2歳になると、「ママ、キタ」など二つの単語からなる二語文が出てくる。
- ボタンをかける。
- ボタンがかけられるようになるのは3〜4歳以降である。
- ジャンケンをする。
- ジャンケンができるようになるのは4〜6歳以降である。
- スキップをする。
- スキップができるようになるのは5歳以降である。
正解 2
家族がまとまっている状態が最良である。
- 従属
- 従属とは、ある者につき従っている状態であり、従っている側の意思が反映されない恐れがある。
- 協力
- 家族が力を合わせて支えることが大事である。
- 依存
- 依存とは、他者に頼っている状態であり、頼られている者には過度に負担がかかってしまう。
- 干渉
- 干渉とは、他者のことに立ち入って自分の意思に従わせようとすることであり、干渉される側の意思が反映されない恐れがある。
【問題10】 訪問看護ステーションの管理者となることができるのはどれか。
正解 2
訪問看護ステーションの管理者は看護職しかなることができない。
- 医師
- 医師は管理者になることができない。
- 看護師
- 訪問看護ステーションの管理者は看護師または保健師である。
- 管理栄養士
- 管理栄養士であっても、栄養士は管理者になることができない。
- 理学療法士
- 理学療法士は従事者になることはできるが、管理者にはなれない。
正解 4
血球の特徴と機能についての問題である。
- 抗体産生
- Bリンパ球が最終段階まで成熟した形質細胞は、高い抗体生産能力を持つ。
- 浸透圧の調節
- 浸透圧の調節は主に血漿蛋白の約60%を占めるアルブミンによりなされる。
- 酸素の運搬
- 酸素の運搬は赤血球によりなされる。
- 血液凝固
- 血小板の機能は血液凝固である。一次止血として、血管が傷ついた際に、傷ついた部分に血小板が粘着し血栓を形成する。二次止血として血液凝固因子が活性化される。
正解 3
肝臓は、糖・脂質・蛋白質・ホルモン等の代謝を行う。肝機能低下時は、アルブミンや凝固因子が低下する。
- 体液量の調整
- 体液は主に腎臓と内分泌作用(抗利尿ホルモンによる体液浸透圧の調整やアルドステロンによる循環血液量の調整)により調節される。
- 胆汁の貯蔵
- 胆汁の貯蔵を行うのは胆嚢であり、肝臓が行うのは胆汁の生成・排泄である。
- 蛋白代謝
- 門脈を経て肝細胞に入ったアミノ酸を、身体に必要な蛋白に再合成したり、その一部を分解する。
- ホルモンの分泌
- ホルモンの代謝(ホルモンの分解、不活性化)は行われるが、ホルモンの分泌は行わない。
正解 2
黄疸は、血液中のビリルビン(胆汁色素)が増加し、皮膚や粘膜が黄染した状態である。
- 色覚異常
- 色覚異常との関連性は特にない。
- 掻痒感
- 血中の胆汁酸が皮膚を刺激することにより掻痒感が生じる。
- 関節痛
- 関節痛との関連性は特にない。
- 脱毛
- 脱毛との関連性は特にない。
正解 4
各波形の特徴を掴んでおく必要がある。
- 洞性徐脈である。
- 正常な波形である。
- 心室性期外収縮である。
- 心室細動。最も重大な致死性不整脈であり、心停止に移行しやすい。
正解 1
吐物を誤嚥しないようにすることが大切である。
- 側臥位にする。
- 右側臥位にすると胃からの逆流を重力により防止できるため、嘔吐を予防できる。
- 胸部を叩打する。
- 心室細動等の不整脈時に行う。
- 下肢を挙上する。
- 出血性ショックの場合などに行う。
- 腹部をマッサージする。
- 胃内圧の上昇により嘔吐を誘発してしまう。
正解 4
脳血管疾患は、虚血性疾患(脳梗塞)と出血性疾患(脳出血、クモ膜下出血)に大別される。
- 発疹
- 皮膚症状との直接的な関連はない。
- 腰痛
- 腰痛との直接的な関連はない。
- 下痢
- 下痢との直接的な関連はない。
- 嘔吐
- 脳梗塞が起こると脳浮腫により、脳出血、クモ膜下出血が起こると水頭症、髄膜刺激症状により嘔吐の症状が出る。
正解 1
ガフキー号数とは、結核菌の量を表した数字である。
- 結核
- 現在では、ガフキー号数での表示をやめ、検出菌数を1+、2+、3+で表されている。
- 風疹
- 風疹の診断は、病状とその経過から行うか、血清中の風疹抗体価を調べる。
- MRSA
- 黄色ブドウ球菌でメチシリン耐性菌であることが確認されれば、診断は確定する。
- HIV
- 血液検査によりHIV特異抗体を検出する事ができ、感染の有無を確認できる。
【問題18】 下腿骨骨折のギプス固定中に起こりやすいのはどれか。
正解 1
膝から下・踝から上が下腿である。下腿部には脛骨、腓骨があり、二つを総称して下腿骨と呼ぶ。
- 腓骨神経麻痺
- 腓骨神経は腓骨頭のすぐ下を通って後方から前方に出ている。神経が骨と接しており,表面を覆う軟部組織がほとんどないので,非常に圧迫されやすい。ギプス固定中は、ギプスの中、あるいはギプスの縁で圧迫され、麻痺を起こすことがある。
- 橈骨神経麻痺
- 橈骨神経は上肢の神経である。
- 尺骨神経麻痺
- 尺骨神経は上肢の神経である。
- 坐骨神経麻痺
- 坐骨神経は骨盤の損傷や股関節の障害などによって損傷されることが多い。
正解 2
ジギタリスの作用には、心筋の収縮力増大、心拍出量の増大、利尿作用がある。
- 鎮痛作用
- 鎮痛作用はない。鎮痛薬には、軽度の痛みの際の非オピオイド系(アスピリン等)、中度の痛みの際の弱オピオイド系(リン酸コデイン等)、強度の痛みの際の強オピオイド系(モルヒネ等)がある。
- 強心作用
- ジギタリスは強心配糖体と呼ばれ、強心作用を持ち、心臓の筋肉性機能不全の治療に強心剤として用いる。
- 抗菌作用
- 抗菌作用はない。抗菌薬とは抗生物質である。
- 造血作用
- 造血作用はない。
【問題20】 鍵をかけて保管しなければならない薬剤はどれか。
正解 3
毒薬や麻薬、向精神薬(盗難防止について十分注意を払える場合以外)は鍵をかけて保管する必要がある。
- ヘパリンナトリウム
- 抗凝固剤で、毒薬・劇薬ではない。
- 風疹ワクチン
- 毒薬・劇薬ではない。
- 塩酸モルヒネ
- 塩酸モルヒネは麻薬なので、他の薬剤と区別して鍵をかけた金庫に保管する。
- インスリン
- 劇薬なので、他の薬剤と区別して保管する。
正解 3
表層の温度ほど環境温度の影響を受けやすい。体温の測定値は直腸>口腔>鼓膜>腋窩の順である。
- 鼓膜
- 鼓膜温は深部体温に近い。
- 口腔
- 腋窩温より0.2〜0.5℃高い。
- 腋窩
- 皮膚温である。
- 直腸
- 体腔温である。腋窩温より0.5〜1℃高い。
【問題22】 ベッドに臥床している患者との面接で適切なのはどれか。
正解 3
患者と同じ目線で話すことが大切である。
- 枕元に立って話す。
- 患者よりも目線が高くなってしまう。
- ベッドに腰かけて話す。
- ベッドに座ると、ベッドの水平性が保たれなくなってしまう。
- ベッド脇の椅子に腰かけて話す。
- 患者と同じ高さの目線で話すことができ、なおかつゆっくり話をするという姿勢を示すことができる。
- 足元に立って話す。
- 患者から遠く離れてしまい、患者も落ち着いて話すことができなくなってしまう。
【問題23】 ストレッチャーでの移送時で患者の頭部側を先行させるのはどれか。
正解 2
移送時の進行方向は、患者の視野が広がるように、原則足側からである。
- 平坦な廊下
- 上り坂
- 上り坂の場合は頭部側を先行させる。足側からだと頭部が低くなり、うっ血状態になってしまう。また、不安感も強くなる。
- 曲がり角
- 段差のある所
正解 1
褥瘡の症状は、発赤、水疱、びらん、壊死の順に経過する。
- 発赤
- 初期症状として圧迫を受けた部位が赤くなる。
- 水疱
- 水疱はなるべく破らないようにする。
- びらん
- 水疱が破れるとびらんになる。
- 壊死
- 皮膚が壊死すると、黄色から黒っぽくなり、周りが炎症を起こして赤く腫れる。
【問題25】 体位変換時の看護師のボディメカニクスで正しいのはどれか。
正解 1
体位変換や患者移動時には、看護者の身体への負担を減らし、動作効率を高めるようにする。
- 大きな筋群を使う。
- 大きな筋群を使うと無理なく力を使うことができる。
- 基底面を狭くする。
- 両脚を広げ、支持基底面は広く保つ。
- 患者との間に距離をとる。
- 患者との距離は近づける。
- 重心を高くする。
- 膝を曲げ、重心は低くする。
正解 4
感染症の有無に関わらず、患者の血液、汗を除く全ての体液分泌物、排泄物、粘膜、損傷した皮膚を感染源とみなし対処する。
- 頭髪
- 汗
- 傷のない皮膚
- 粘膜
- 粘膜はスタンダードプリコーションの対象である。
【問題27】 成人に経鼻胃管を挿入するときに最も適切な体位はどれか。
正解 2
嚥下しやすい体位が適している。
- 仰臥位
- 仰臥位では嚥下しにくく、誤嚥の可能性もある。
- 半坐位
- 半坐位、または坐位が適している。
- 側臥位
- 側臥位では嚥下しにくい。
- シムス位
- 上体が下に向いているので嚥下しにくい。
【問題28】 注入された薬物の作用が最も速く発現するのはどれか。
正解 4
吸収速度は、静脈内>筋肉>皮下>皮内の順であり、持続性は逆の順である。
- 皮内注射
- 毛細血管がほとんどないので吸収は遅い。
- 皮下注射
- 皮下組織を介して毛細血管から吸収するので比較的遅い。
- 筋肉内注射
- 吸収は速いが、直接血管内に投与する静脈内よりは遅い。
- 静脈内注射
- 直接血管内に投与するので吸収は最も速い。
【問題29】 成人の静脈血の検査用採血に最も適した注射針はどれか。
正解 3
数字が小さいほど太くなる。使用目的に応じた適応サイズを覚える必要がある。
- 16G
- 太すぎるため患者の苦痛が大きい。
- 18G
- 18Gは輸血などに用いる。
- 22G
- 静脈血採血をする際は、21G〜23Gが適している。
- 27G
- 皮内注射では、26Gや27Gが適している。
【問題30】 下図のような体位でドレナージを行う肺葉区はどれか。
正解 2
体位ドレナージとは、重力を活かして、痰が貯留している部位を上にして排出しやすくすることである。
- 右上葉
- 右下葉
- 頭部を下げて、左側臥位にしているので、右下葉である。
- 左上葉
- 左下葉