第99回国家試験必修問題解説(午前)
【問題1】 我が国の平成20年における死因順位の第1位はどれか。
正解 4
全体の死因順位、各年齢階級の死因順位は覚えておく必要がある。
- 肺炎
- 「人口動態統計月報年計(概数)の概況」によると、平成20年(2008年)の肺炎の死亡数は115,240人、死亡率は91.5(人口10万対)で、死因順位は第4位である。
- 心疾患
- 「人口動態統計月報年計(概数)の概況」によると、平成20年(2008年)の心疾患の死亡数は181,822人、死亡率は144.4(人口10万対)で、死因順位は第2位である。
- 脳血管疾患
- 「人口動態統計月報年計(概数)の概況」によると、平成20年(2008年)の脳血管疾患の死亡数は126,944人、死亡率は100.8(人口10万対)で、死因順位は第3位である。
- 悪性新生物
- 「人口動態統計月報年計(概数)の概況」によると、平成20年(2008年)の悪性新生物の死亡数は342,849人、死亡率は272.2(人口10万対)で、死因順位は第1位である。
正解 2
ストレスホルモンにはカテコールアミンとコルチゾールがある。
- カルシトニン
- カルシトニンは主に甲状腺で産生されるホルモンで、骨の構成成分であるリン酸とカルシウムの、骨への沈着を促進し、血液中のカルシウム濃度を低下させる。また、骨から血液中へのカルシウム溶出を抑制するため、高カルシウム血症や骨粗しょう症の治療に用いられる。女性ホルモンであるエストロゲンは、カルシトニンの分泌を促進する。
- アドレナリン
- ストレスにより交感神経が刺激されると、副腎髄質からカテコールアミン(アドレナリン)が分泌される。アドレナリンは、血管収縮、瞳孔の拡大、血圧上昇、気管支拡張、心拍数増加などの作用がある。
- バソプレシン
- バソプレシンは脳下垂体後葉から分泌されるホルモンで、血管を収縮させて血圧を上げる効果と、腎臓に働いて尿量および尿の浸透圧を調節し利尿を妨げる効果がある。
- エリスロポエチン
- エリスロポエチンは、赤血球産生を調節する作用があり、主に腎臓で生成される。
【問題3】 国民健康保険に加入している30歳本人の自己負担割合はどれか。
正解 4
医療保険についての基本的な問題である。
- なし
- 1割
- 2割
- 3割
- 国民健康保険の自己負担割合は、一般被保険者においては本人、被扶養者ともに3割である。
【問題4】 我が国の平成20年における業務上疾病で最も多いのはどれか。
正解 1
災害性腰痛とは、突発的な出来事が原因となった急性腰痛のことをいう。
- 災害性腰痛
- 「平成20年業務上疾病発生状況等調査」によると、全国の業務上疾病者の62.1%が災害性腰痛である。
- 病原体による疾病
- 「平成20年業務上疾病発生状況等調査」によると、全国の業務上疾病者の2.3%が病原体による疾病である。
- 化学物質による疾病
- 「平成20年業務上疾病発生状況等調査」によると、全国の業務上疾病者の2.5%が化学物質による疾病である。
- じん肺およびじん肺合併症
- 「平成20年業務上疾病発生状況等調査」によると、全国の業務上疾病者の6.6%がじん肺である。
正解 1
医療・福祉現場で重要視されている機能である。
- アドボカシー
- 権利の代弁、権利の擁護のことを指す。自己の権利を行使したり表明することのできない終末期の患者や障害者、認知症患者などの権利を代弁することをいう。
- リビングウィル
- 生前の意思という意味であり、死期が迫ったときの治療方針を事前に書面に示すことである。
- パターナリズム
- 医療現場において見られるパターナリズム(父権主義)とは、患者の最善の利益の決定の権利と責任は医師側にあり、医師は自己の専門的判断を行なうべきで、患者はすべて医師に委ねればよい、という考え方であり、医師と患者間の支配関係を指す言葉である。
- コンプライアンス
- 医療現場におけるコンプライアンスとは、患者が処方どおりに服薬していることをいう。
正解 3
性染色体とは、性決定に関与する染色体であり、人間の場合、男性はXY、女性はXXである。
- X染色体1種類
- 卵子の染色体である。
- XY染色体1種類
- X染色体とY染色体の2種類
- 体内で精子が作られる際に、減数分裂によりX染色体を持つ精子とY染色体を持つ精子ができる。
- XX染色体とXY染色体の2種類
【問題7】 乳児でIgG抗体量が最も少なくなる時期はどれか。
正解 2
IgGは免疫グロブリンの中で最も数が多く、また、胎盤を通過することができる。
- 生後0〜2か月
- 生後3〜6か月
- 胎盤通過性があり出産直後は成人レベルの量であるが、その後母体由来のIgGは急速に低下し、生後3〜6か月で最低となる。産生組織の発達に伴い、血中濃度が徐々に増加し、10歳頃成人レベルに達する。
- 生後7〜9か月
- 生後10〜12か月
正解 4
小児の発達過程を覚えておく必要がある。
- 3か月でスプーンが持てない。
- 物を握るようになるのは5か月頃、スプーンを使うようになるのは2歳頃である。
- 1歳でスキップができない。
- スキップができるのは5歳頃である。
- 3歳で両親の名前が言えない。
- 自分の名前が言えるようになるのが3歳頃である。
- 5歳で2本の線の長い方が選べない。
- 3〜5歳頃は様々な部分で発達が著しく、発達遅滞を疑う必要がある。
【問題9】 我が国の平成20年の65歳以上の者のいる世帯のうち単独世帯(ひとり暮らし)の占める割合はどれか。
正解 2
65歳以上の者のいる世帯は1977万7千世帯で、全世帯の41.2%である。(平成20年)
- 約5%
- 約20%
- 「国民生活基礎調査」によると、平成20年の65歳以上の者のいる世帯は1977万7千世帯である。そのうち単独世帯は435万2千世帯で、割合は22.0%である。
- 約35%
- 約50%
正解 1
介護保険法に定められている。
- 市町村
- 要介護認定の申請先は市町村である。そして、介護認定審査会の判定に基づき、市町村が要介護認定を行う。また、更新の申請も市町村に対して行う必要がある。
- 保健所
- 保健所は要介護認定の申請先ではない。
- 主治医
- 主治医の意見書は、介護認定審査会における審査・判定の基礎資料となる。
- 介護保険施設
- 介護保険施設や指定居宅介護支援事業者に、申請の代行を依頼することができる。
正解 2
全身の骨格は覚えておく必要がある。
- 腓骨
- 腓骨は、下腿の後ろ外側にある。
- 橈骨
- 橈骨は、前腕の外側(母指側)にある。
- 脛骨
- 脛骨は、下腿の前内側にある。
- 尺骨
- 尺骨は、前腕の内側(小指側)にある。
正解 2
死の三徴候とは、心臓の停止、自発呼吸の停止、瞳孔散大と対光反射の消失をいう。
- 呼名反応の消失
- 死の三徴候には含まれない。意識消失の際に、呼名反応の消失が見られる。
- 自発呼吸の消失
- 死の三徴候に含まれる。
- 随意運動の消失
- 死の三徴候には含まれない。麻痺などによって、随意運動の消失が見られる。
- 深部腱反射の消失
- 死の三徴候には含まれない。末梢神経の障害などによって、深部腱反射の消失が見られる。
正解 3
チアノーゼとは、皮膚や粘膜が青紫色にみえる状態をいい、血中の酸素濃度が低下した際に見られる。
- 動脈血酸素分圧
- 血漿成分に溶け込んだ酸素の濃度を示したものである。低下した状態を低酸素血症という。
- 酸化ヘモグロビン
- 還元ヘモグロビンが酸素と結合したものが酸化ヘモグロビンである。
- 還元ヘモグロビン
- 血中の還元ヘモグロビンが5g/dL以上でチアノーゼが起こる。
- 動脈血酸素飽和度
- 動脈血の酸化ヘモグロビンの割合のことである。低下するとチアノーゼが起こる。
正解 2
ジギタリスは心筋収縮力を増大させる慢性心不全の治療薬であるが、安全域が非常に狭く、治療域を超えると副作用が見られる。
- 難聴
- 抗結核薬のストレプトマイシン、カナマイシン等の副作用として聴力障害がある。
- 悪心
- ジギタリスの副作用には、悪心、嘔吐、下痢、頭痛、食欲不振、不整脈などがある。
- 易感染
- 易感染とは、免疫力が低下して細菌やウイルスに感染しやすいことをいう。免疫抑制剤や抗がん剤を用いた後に、易感染状態になることがある。
- 満月様顔貌
- 満月様顔貌は、副腎皮質ホルモン(ステロイド)の服用による副作用である。
【問題15】 メタボリックシンドロームと診断する際の必須条件はどれか。
正解 3
メタボリックシンドロームの診断基準では、内臓脂肪の蓄積が必須条件である。
- 高血圧
- 空腹時高血糖
- 内臓脂肪型肥満
- メタボリックシンドロームのとは、内臓脂肪型肥満に加え、脂質代謝異常、高血圧、空腹時高血糖のうち2つを満たす場合をいう。内臓脂肪の蓄積はウエスト径で判定し、男性85cm以上、女性90cm以上を基準値としている。
- 高脂血症<脂質異常症>
正解 2
ネグレクト(neglect)を直訳すると、「無視する」である。
- 無理強い
- 養育放棄
- ネグレクトである。子供に食事を与えない、泣いていても無視するなどの行為によって、子供の精神的な発達が阻害される。
- 性的虐待
- 家庭内暴力
【問題17】 15%塩化カリウム注射液原液の静脈内投与で起こり得るのはどれか。
正解 3
カリウム製剤は、必ず適当な輸液に混合するなど希釈して投与しなければならない。
- 無尿
- 発熱
- 心停止
- 高濃度のカリウム製剤の静注は心停止を引き起こす。
- 骨髄抑制
【問題18】 Open-ended question<開かれた質問>はどれか。
正解 4
Open-ended questionとは、様々な答えが想定できる質問のことをいう。
- 「夕べは眠れましたか」
- 「薬はもう飲みましたか」
- 「傷は痛みませんでしたか」
- 1〜3のように、はい・いいえで答えられる質問を、Close-ended question<閉じた質問>という。
- 「退院後は何をしたいですか」
- Open-ended question<開かれた質問>である。
正解 1
四肢が身体から離れる運動を外転、四肢を身体に近づける運動を内転という。
- 肩関節の外転である。
正解 3
消化管や尿路の疾患などにより、腹部に便または尿を排泄するために増設された排泄口をストーマという。
- 褥瘡
- 長期間病床にある場合など、骨突出部の皮膚や皮下組織が長く圧迫され続けることで血行不全となり、接触部位の組織が壊死に陥って皮膚潰瘍を生じた状態である。好発部位は、仙骨部や坐骨部、大転子部などである。症状は、発赤、水疱、びらん、壊死の順に経過する。
- 胃瘻
- 胃瘻とは、経口摂取困難な患者に対して胃壁と腹壁に瘻孔を作り、カテーテルを通じて栄養剤などを注入するものである。
- 人工肛門
- 人工肛門とは、消化管排泄孔を腹部に造設し、内容物を排出するものである。
- 尿管皮膚瘻
- 尿管皮膚瘻とは、腹壁を通して尿管を直接皮膚に吻合し、尿を対外に排出するものである。
正解 1
ボディメカニクスを活用し、看護者の身体的負担を軽減、動作効率を向上させる。
- 立位では基底面を広くとる。
- 立位を安定させるために基底面積を広く保つ。
- 動作時の重心は高い位置におく。
- 動作時の重心は低い位置におく。
- 重心線は基底面の利き腕側におく。
- 重心線は基底面の内側におく。
- 足と床との間の摩擦力を小さくする。
- 床との摩擦が大きいほど安定する。
正解 3
インシデントレポートとは、ヒヤリハット事例の報告のことである。
- 実際に事故が発生するまでは報告しない。
- 事故の予防が目的であり、事故が起こる前に報告する。
- 法令で書式が統一されている。
- 書式は統一されていない。各医療機関で書式は異なる。
- 当事者以外が報告してよい。
- インシデントに気付いた者が報告し、事故の予防に役立てる。
- 警察署への届出義務がある。
- 警察署への届出義務はない。
正解 4
薬物の吸収速度は、静脈内>筋肉>皮下>皮内の順である。
- 皮内注射
- ツベルクリン反応や即時型アレルギーの診断の際に用いる。
- 皮下注射
- 予防注射や鎮静薬の投与などで用いる。
- 筋肉内注射
- 懸濁液や油性の薬液など、徐々に吸収させ作用の持続を期待する場合に用いる。
- 静脈内注射
- 直接血管内に投与するので、薬物血中濃度の上昇は最も速い。
正解 1
気管吸引とは、吸引により気管内の分泌物を排出する方法である。
- 低酸素
- 分泌物と共に気管内の酸素も吸引されるため、低酸素血症を生じやすい。
- 低体温
- 乏尿
- 浮腫
【問題25】 ドレッシング材で密閉してよい創の状態はどれか。
正解 2
ドレッシング材とは、直接創傷を覆い、治りを早める保護材である。
- 壊死組織の存在
- 壊死組織を取り除く必要がある。
- 鮮紅色の肉芽の形成
- 組織の修復過程で、新たにつくられる毛細血管に富む組織を肉芽組織といい、創部の赤くてやわらかい盛り上がった組織である。肉芽組織は経過とともに瘢痕組織(かたい白色調の膠原線維のみからなる組織)に変化し、欠損部周囲の組織が収縮することによって創面は徐々に小さくなっていく。
- 創周囲の発赤・熱感
- 感染の可能性があるので、密閉するべきではない。
- 大量の膿性分泌物の付着
- 分泌物を取り除く必要がある。