第100回看護師国家試験一般問題・状況設定問題解説(午前問題106〜120)
次の文を読み106〜108の問いに答えよ。
Aさん(73歳、女性)は、動悸の精密検査の目的で入院した。心電図や血液検査などで異常所見はなかったが、Aさんは全身倦怠感、食欲不振、腰痛、便秘などを訴え続け、薬物療法を行っているが症状は改善していないという。日中はぼんやりと過ごしており「心臓がドキドキして、ハッと朝早く目が覚め、死ぬんじゃないかと思い、その後眠れなくなる」と言う。
正解 4
- 脱抑制
- 脱抑制とは、感情や衝動の抑制が効かなくなった状態をいう。
- 慢性退行状態
- 退行状態は見られない。
- 認知機能の低下
- 認知機能低下に関する記述はない。
- 自律神経失調症状
- 全身倦怠感、食欲不振、便秘などから自律神経失調症状が考えられる。
【問題107】 Aさんは、夜、寝る前に「入院しているのに治らない。こんなはずではなかった。ここにいても仕方がない」と看護師に訴えた。このときの看護師の対応で最も適切なのはどれか。
正解 3
- 「薬が効くまでの我慢ですよ」
- 「治っているように見えますよ」
- 「治らないと感じるのはつらいですね」
- 患者の訴えを傾聴し、受容的、共感的に対応する。
- 「治っていないことを医師に相談しますか」
【問題108】 Aさんは午前0時ころ覚醒し、ベッドサイドでため息をついている。看護師のAさんへの対応で最も適切なのはどれか。
正解 4
- 就寝時間を遅くするように言う。
- 昼夜逆転する可能性があり不適切である。
- 眠れなくても横になっているよう話す。
- ため息をついて悩んでいる患者を放っておく対応は不適切である。
- 医師に確認して睡眠導入薬の服用を促す。
- 睡眠導入薬の服用は最終的な手段である。
- ベッドを離れるよう誘い、しばらく話をする。
- 患者の悩みを傾聴し、状態を把握する。
次の文を読み109〜111の問いに答えよ。
Aちゃんは39週0日に体重3,000gで出生した。両親との3人家族である。顔貌などの特徴や心室中隔欠損があることからダウン症候群が強く疑われた。
正解 4
- 早期療育の必要性を説明する。
- まだ検査の結果が出ておらず、現時点で早期療育の必要はない。
- ダウン症候群の親の会への入会を勧める。
- まだ検査の結果が出ておらず、現時点で入会を勧める必要はない。
- ダウン症候群の治療について説明をする。
- ダウン症候群の根本的な治療法や治療薬はない。
- 一緒にAちゃんの世話をすることを提案する。
- ショックを受けている両親が前向きに受け入れ、子供への愛着が育つようにサポートをしていく。
正解 2
- 母親の愛着不足
- 愛着不足という記述はない。
- Aちゃんの筋緊張の低下
- ダウン症候群の特徴の一つとして、筋緊張の低下があり、初めて育児を行う母親にとっては抱きにくいと考えられる。
- Aちゃんの心室中隔欠損症
- 心室中隔欠損症がうまく抱けない原因にはならない。
- Aちゃんの体重の増加不良
- 生理的体重減少からの回復途上であり、体重の増加不良とは言えない。また、それがうまく抱けない原因とはならない。
正解 1
- これからすぐに
- 離乳食開始時期は、一般的に生後5〜6か月からで、首がすわり、支えると座れるなども目安となる。Aちゃんは体重6,850gで成長にも大きな問題はないので、すぐに開始してよい。
- 乳歯が生え始めてから
- 体重が7,500gになってから
- お座りができるようになってから
次の文を読み112〜114の問いに答えよ。
9歳のAちゃんは、2か月前から口渇、多飲および多尿があった。学校の健康診断で尿糖が陽性であったため、受診した。受診時の検査で、Aちゃんは血糖398mg/dl(食後3時間経過)、HbA1C9.3%、動脈血pH7.40、尿糖4+、尿ケトン体+で、1型糖尿病の疑いで入院した。
【問題112】 Aちゃんのアセスメントで正しいのはどれか。2つ選べ。
正解 1,2
- 高血糖
- 空腹時血糖値110mg/dl未満、食後2時間血糖値140mg/dl未満が血糖値の正常値であり、食後3時間血糖値が398mg/dlは高血糖である。
- 浸透圧利尿
- 浸透圧利尿とは、尿細管内の浸透圧が上昇するために、尿細管における水分の再吸収が妨げられて尿量が増加することをいう。口渇や多尿がみられており、高血糖による浸透圧利尿が考えられる。
- 腎機能の低下
- 尿蛋白や尿素窒素、クレアチニンなどにより腎機能を知ることができるが、それらに関する記述はなく、腎機能の低下は判断できない。
- ケトアシドーシス
- ケトアシドーシスとは、ケトン体が血液中に増加し、血液が酸性の状態になることである。1型糖尿病で多くみられるが、pH7.40は正常である。
- グルカゴンの分泌低下
- グルカゴンは血糖値が低い場合に血糖を上げる作用があり、インスリンは血糖値が高い場合に血糖を下げる作用がある。インスリンの分泌低下が考えられる。
【問題113】 Aちゃんは1型糖尿病と診断され、インスリン注射4回法(朝・昼・夕に超速効型インスリン、就寝前に持続型インスリン)が開始された。Aちゃんへのインスリン注射の指導で適切なのはどれか。
正解 2
- 学校では注射をしない。
- インスリン注射4回法なので、学校でも注射を行う必要がある。
- 自己注射の習得を目指す。
- 自己注射習得に向けた指導を行う。
- 毎回、同一部位に注射する。
- 同一部位に注射し続けると皮膚が硬くなり、インスリンの効果が十分に得られなくなる。インスリンの吸収に影響を及ぼさぬよう同一部位から少し位置をずらして注射を行う。
- 注射は朝昼夕の食事の30分前に行う。
- 超速効型インスリンは注射後約15分以内に効果発現するため、各食直前に注射を行う。
正解 3
- おにぎりを食べさせる。
- 低血糖時におにぎりの摂取は有効であるが、低血糖の速やかな改善には適さない。
- 低血糖症状の教育を行う。
- 低血糖症状が出現しているときにすることではない。
- グルコースを摂取させる。
- 血糖値が54mg/dlで、悪心と手のふるえがあり、低血糖症状が出現している。速やかに血糖値を上げるために、吸収速度の速いグルコースを摂取させる。
- 夕食まで安静にするよう伝える。
- この状態が続くと、意識レベルが低下し、昏睡状態に陥る危険性がある。
次の文を読み115〜117の問いに答えよ。
Aさん(32歳、経産婦)は、身長160cmで、非妊時体重は52kgであった。妊娠33週2日の妊婦健康診査では、体重59kg、血圧110/76mmHg、尿蛋白(−)、尿糖(−)、浮腫+、子宮底長は28cmである。胎児心拍の最良聴取部位は左臍棘線中央にあり、「最近、動くとおなかが頻繁に張ります。便秘がひどくなっているせいかもしれません」と言う。
正解 4
- 骨盤位体操を勧める。
- 最良聴取部位は左臍棘線中央であり、胎児は第1頭位であると考えられる。骨盤位体操の必要はない。
- 市販の下剤を服用することを勧める。
- 市販薬は服用せず、病院で処方してもらう。
- 水分の摂取量を減らすことを勧める。
- 水分摂取量を減らす必要はない。
- 外出を控え自宅で過ごすことを勧める。
- 動くとおなかが張っており、子宮収縮がみられる。外出を控えて安静にするように指導する。
正解 2
- 分娩第2期である。
- 分娩開始(陣痛発来)から子宮口が全開になるまでは、分娩第1期である。
- 胎児心拍は正常である。
- 胎児心拍数基線の正常値は110〜160bpmである。一過性除脈もないため、胎児心拍は正常である。
- 母体に感染の徴候がみられる。
- 体温は上がっているが、感染の徴候はみられない。
- 努責を行うための指導が必要である。
- 努責をかけるのは分娩第2期からである。
正解 4
- 無呼吸発作
- 無呼吸発作とは、20秒以上持続する呼吸停止、または20秒未満の呼吸停止でも徐脈(心拍数100/分以下)か、チアノーゼを伴う場合をいう。この場合、無呼吸発作ではない。
- 呼吸窮迫症候群(RDS)
- 呼吸窮迫症候群は、肺サーファクタントの不足によって、肺胞の拡張不全、呼吸障害を起こす。在胎35週くらいまでの肺サーファクタントの生成量は不十分であるため、在胎32週以前の早産児や1,500g未満の極低出生体重児の場合に起こりやすい。
- 胎便吸引症候群(MAS)
- 胎便吸引症候群は、胎便で汚染された羊水を気道内に吸引することで生じる呼吸障害である。この場合、羊水混濁はないので考えられない。
- 新生児一過性多呼吸(TTN)
- 新生児一過性多呼吸は、出生後の肺胞内の肺水の排出・吸収遅延によって引き起こされる呼吸障害である。症状として、多呼吸、呻吟、陥没呼吸、チアノーゼなどがみられる。
次の文を読み118〜120の問いに答えよ。
Aさん(35歳、女性)は、夫と7歳の息子、2歳の娘と4人で暮らしている。ある日、震度6強の地震が起こり、Aさんの家は半壊した。Aさんは、倒れてきた家具の下敷きになるところだったが、何とか免れ、家族は全員かすり傷程度の怪我で済んだ。被災後、家族は避難所である小学校で生活をしている。
正解 4
- 心気症
- 心気症とは、身体的異常がないにも関わらず、重い病気ではないかと過度に気に病むことをいう。
- 身体化障害
- 身体化障害とは、身体表現性障害の一つで、原因となる身体的異常がないにも関わらず、多彩な身体症状が繰り返し発生するものである。
- 強迫性障害
- 強迫性障害とは、強迫観念と強迫行為によって日常生活が障害された状態をいう。
- 心的外傷後ストレス反応
- 震災によって命を落としかけたことによる心的外傷後ストレス反応(PTSD)であると考えられる。
【問題119】 Aさんから、「また地震の日のような状態になってしまうことが不安です。大丈夫でしょうか」と看護師に相談があった。Aさんへの看護師の対応で適切なのはどれか。
正解 5
- 「すぐに受診をした方が良いと思います」
- 前問の問題文で、「だいぶ落ち着き、日々楽になっている」という記述がある。すぐに受診をする必要性は低い。
- 「つらい体験は早く忘れるようにしましょう」
- 簡単に忘れられるものではない。
- 「誰にでもよいので積極的に自分の体験を話してください」
- 一般的に、体験の内容や感情を聞きただすような災害直後のカウンセリングは有害であり、行ってはならない。
- 「気分転換にご主人と一緒に家の片付けなどしてはいかがでしょう」
- 半壊した家の片付けをすることでフラッシュバックする可能性がある。
- 「強いストレスを体験したときには誰もがなり得る正常な反応です」
- 誰もがなり得る正常な反応であると伝えることで、安心できる可能性がある。
正解 2,5
- 「兄である自覚をもたせるようにしましょう」
- 「スキンシップを多くとるようにしましょう」
- 強い不安と恐怖から退行現象がみられている。スキンシップを多くとることが大切である。
- 「息子さんの状態は気にしない方がよいですよ」
- 「なるべく一人で行動させるなど、自立を促すようにしましょう」
- 「『怖かったね、でももう大丈夫』など、安心させる言葉をかけてください」
- コミュニケーションを十分にとり、子供の感情をしっかりと受け止めることが大切である。