第100回看護師国家試験一般問題・状況設定問題解説(午後問題91〜105)
次の文を読み91〜93の問いに答えよ。
Aさん(42歳、男性)は、統合失調症で入院中だが、3か月の治療で症状が改善したため、退院することになった。Aさんは、統合失調症で数回の入院経験があるが、前回の退院後に拒薬がみられたため、今回は2週間に1回の訪問看護が計画されている。Aさんはアパートで1人で暮らしている。身体的な疾患はない。
正解 2,5
- 「本当にうるさいですね」
- 静かな住宅地で騒音は聞こえておらず、幻聴がみられている。幻聴を肯定することは適切ではない。
- 「お薬は飲んでいますか」
- 以前に拒薬がみられているので、服薬の確認を行う。
- 「そんな声は気のせいですよ」
- 幻聴を否定することも適切ではない。
- 「苦情を言ったらどうですか」
- 幻聴を肯定する対応であり、適切ではない。
- 「どんなことが聞こえますか」
- 本人の話を傾聴し、どんなことが聞こえるかを確認する。
正解 3
- 電話を設置してほしいと依頼する。
- 本人は電話の設置をいやがっており、適切ではない。
- そんなに怒らなくてもよいと話す。
- 誠意ある対応をすべきであり、適切ではない。
- Aさんを心配していることを伝える。
- 訪問は2週間に1回であり、電話での連絡もとれないので、病状が心配であることを伝える。
- 遅刻の話題には触れず、訪問活動を続ける。
- 本人の感情を無視する対応は不適切である。
【問題93】 訪問時、ごみ箱に多くの内服薬が捨てられていた。Aさんは「その薬は飲んではいけないとみんなが言うし、飲むと体がだるくなるので飲みたくない」と言う。看護師の対応で適切なのはどれか。2つ選べ。
正解 4,5
- 「そんなはずはありませんよ」
- 本人の話を即座に否定するのではなく、まずは本人の訴えを傾聴し、状態を確認する。
- 「しばらく内服を休みましょう」
- 病状が改善しておらず、内服を休むのは適切でない。
- 「服薬チェック表を使ってみましょう」
- 飲み忘れているのではなく、本人の意思で捨てているため、効果的でない。
- 「薬を飲んだ後の症状を聞かせてください」
- 「飲むと体がだるくなる」と訴えており、詳しく病状を聞く必要がある。
- 「薬の内容について主治医に相談してみませんか」
- 主治医との相談は重要であり、それによって本人が安心感を得る可能性もある。
次の文を読み94〜96の問いに答えよ。
Aさん(55歳、男性)は、仕事中に胸痛発作に襲われ、急性心筋梗塞で緊急入院した。入院直後に、経皮的冠状動脈形成術(PTCA)を受けた。
【問題94】 入院翌日、Aさんは「昨日は、痛みが強くて医師の説明がよくわからなかった。僕はどんな手術をしたのでしょうか」と看護師に尋ねた。経皮的冠状動脈形成術(PTCA)の説明で適切なのはどれか。
正解 1
- 「詰まっていた血管を風船で拡げました」
- 経皮的冠状動脈形成術(PTCA)とは、冠動脈の狭窄・閉塞部位をバルーン等で拡張させ、狭窄(閉塞)した冠動脈を再開通させる治療法である。バルーンカテーテルによる治療で不十分な場合はステントを留置する。
- 「血管に詰まっていた血栓を吸引しました」
- 血栓吸引療法の説明である。
- 「足の血管の一部を心臓の血管に移植しました」
- 冠動脈バイパス術(CABG)の説明である。狭窄・閉塞した冠動脈の遠位側に内胸動脈や大伏在静脈等をグラフトとして吻合し、血流を再開通させる治療法である。
- 「血管に詰まっていた血栓を薬で溶かしました」
- 血栓溶解療法の説明である。
正解 4
- 調子が良いなら大丈夫だと話す。
- 脈拍が90/分になるくらいのスピードで歩くよう指導する。
- 心電図モニターの電波が届かない中庭には行けないと話す。
- 歩行範囲は計画に沿って拡大していく必要があることを説明する。
- たとえ本人の調子が良くても、歩行範囲はあくまでリハビリテーションの計画に沿って拡大していく必要がある。
【問題96】 看護師がAさんに心筋梗塞の再発作の予防について説明した。Aさんは「左胸が痛くならなければ大丈夫なんですか」と尋ねた。胸痛以外の発作の兆候の説明として適切なのはどれか。
正解 2
- 羞明
- 背部痛
- 心筋梗塞の症状は、30分以上持続する胸痛、背中や左肩、顎などへの放散痛があり、冷汗を伴うことが多い。
- 乾性咳嗽
- 出血傾向
次の文を読み97〜99の問いに答えよ。
Aさん(60歳、女性)は、身長155cm、体重70kgである。エレベータがあるマンションの4階に住んでいる。左膝の痛みが徐々に増強し、趣味の茶道での正座や和式トイレの使用が困難になった。Aさんは、変形性膝関節症と診断され入院した。左膝の人工膝関節全置換術を受け、術後経過は順調である。
【問題97】 Aさんの関節可動域訓練が開始された。Aさんは「痛いし、動かすと傷が開きそうで怖い」と話している。Aさんへの看護で最も適切なのはどれか。
正解 4
- 怖いことは何もないと伝える。
- 創部が開くことはないと伝える。
- 怖いという気持ちを尊重して訓練を延期する。
- 訓練は無理のない範囲から徐々に開始されることを伝える。
- リハビリテーションは痛みや腫れを見ながら、無理のない範囲から徐々に進めていく。
【問題98】 AさんはT字杖での三点歩行を開始することになった。AさんはT字杖を右手に持っている。三点歩行の指導で適切なのはどれか。
正解 4
- まず杖と右足を同時に出して、次に左足を出す。
- まず杖と左足を同時に出して、次に右足を出す。
- 杖をついた後で、右足を出し、次に左足を出す。
- 杖をついた後で、左足を出し、次に右足を出す。
- 三点歩行の方法は、杖を健側の手で持ち、杖をついた後で、患側の足を前に出し、次に健側の足を出す。
【問題99】 Aさんの退院後の生活の指導で適切なのはどれか。
正解 1
- 「正座は避けてください」
- 術後の生活は極力膝に負担をかけないようにする。正座は膝に重度の負担がかかるため、避けなければならない。
- 「和式トイレが使えます」
- 和式トイレではなく、洋式トイレを使用するようにする。
- 「なるべく階段を使いましょう」
- 階段の使用はなるべく避ける。
- 「ベッドではなく、畳に布団を敷いて寝ましょう」
- ベッドを使用するようにする。
次の文を読み100〜102の問いに答えよ。
Aさん(74歳、男性)は、強い下腹部痛のため救急車で搬入された。Aさんは顔面蒼白で、冷汗をかき、腹部を押さえている。一緒に来た妻は、「夫はいつも尿が出にくい。夜は、3回はトイレに行くのに、昨夜は行かなかった。今朝もポタポタとしか出なかった。便秘はしていない」と話した。Aさんは4年前に脳梗塞になり、重い構音障害があるが、理解力に問題はなく、身の回りのことは全部自分でできている。搬入時のAさんは、看護師と視線を合わせることができ、問いかけにはうなずきで答えている。
正解 1
- 導尿
- 強い下腹部痛、顔面蒼白、冷汗という記述から尿閉が考えられるため、導尿を直ちに行う必要がある。
- 摘便
- 便秘はしていないため、摘便の必要ない。
- 膀胱瘻の造設
- 導尿が不可能の場合は必要に応じて膀胱瘻の造設を行うが、直ちに行うべき処置ではない。
- 利尿薬の投与
- 症状が悪化するため、尿閉時の利尿薬使用は禁忌である。
【問題101】 処置を終えたAさんは、治療のため入院した。Aさんとコミュニケーションをとるうえで適切なのはどれか。2つ選べ。
正解 1,4
- 筆談用の文房具を準備する。
- 筆談ができる可能性を考え、筆記具やメモ用紙などを準備しておく。
- 理解を助ける絵カードを準備する。
- 失語症のリハビリテーションでは、絵カードを用いた呼称訓練が行われる。
- 構音の間違いを直して練習させる。
- 間違いは指摘しないようにする。
- 補聴器や眼鏡の使用状況を妻に確認する。
- 聴力や視力など、患者の状態の確認をする。
- 問いかけはopen-ended question(開かれた質問)にする。
- 問いかけは、「はい」か「いいえ」で答えられる、close-ended question(閉ざされた質問)にする。
正解 1
- トイレに近い病室に移動する。
- 「トイレまで間に合わず」とあることから、切迫性尿失禁が考えられる。尿意を我慢する膀胱訓練や時間ごとの排尿が尿失禁防止に効果的な場合もあるが、この場合最も適切なのはトイレに近い病室に移動することである。なお、高齢者の水分制限は脱水症につながる可能性があるため、適切ではない。
- 水分の摂取を控えるよう説明する。
- できるだけ尿意を我慢するように言う。
- 尿意はなくても、4時間ごとにトイレに行くよう勧める。
次の文を読み103〜105の問いに答えよ。
Aさん(80歳、女性)は、数年前から腰痛に悩まされ、腰部脊柱管狭窄症と診断されている。他に疾患はない。ADLは自立しているが、歩くと腰が痛むため活動は控えがちである。Aさんは夫と死別して1人で暮らしている。娘が1人いるが子育てのため、娘は毎日は手伝いに来られない。
【問題103】 Aさんにみられるその他の症状として可能性が高いのはどれか。
正解 2
- 突進歩行
- 突進歩行は、前かがみで身体を強ばらせて歩くようになるもので、パーキンソン病でみられる歩行である。
- 間欠跛行
- 間欠跛行は、腰部脊柱管狭窄症の代表的な症状である。歩行の持続などで下肢に負担をかけることによって、下肢に痛みやしびれを覚えるが、一時安静にすることで症状が軽減し、再び歩行可能となる。
- 膝蓋腱反射の亢進
- 腰部脊柱管狭窄症では、膝蓋腱反射は低下・消失することが多い。
- 膝関節の可動域制限
- 変形性膝関節症などでは、膝関節の可動域制限がみられる。
【問題104】 Aさんは腰痛が激しくなり、娘と一緒に受診した。痛みを起こさないための指導で適切なのはどれか。
正解 2
- 「腰をひねる運動が効果的です」
- 腰に負担をかける行為は、症状悪化を招くため、不適切である。
- 「しゃがむときは、腰を曲げずに膝を曲げましょう」
- しゃがむときは、腰を曲げずに膝を曲げるようにするとよい。
- 「物を持ち上げるときは、体から離して持ち上げましょう」
- 腰に負担をかけぬよう、物を持ち上げるときは、体に近づけて持ち上げる。
- 「ベッドから起きあがるときは、まずあお向けになりましょう」
- 腰に負担をかけぬよう、ベッドから起きあがるときは、仰臥位からではなく側臥位から起き上がる。
正解 3
- 「娘さんが、毎日様子を見に来られてはいかがですか」
- 「娘は毎日は手伝いに来られない」という記述があり、適切ではない。
- 「車椅子が使えるように住宅を改修してはいかがですか」
- 外出や家事もできるようになっており、車椅子の使用は必要ない。ADLの低下を招く恐れがあり適切ではない。
- 「Aさんがなるべく外で楽しめる機会を持つといいですよ」
- 腰痛が改善し、外出ができるようになっており、行動範囲を広げるよう助言することは適切である。
- 「家政婦さんを雇って、家事を手伝ってもらうといいですよ」
- 家事はできるようになっている。自立性の低下を招く恐れがあり適切ではない。