第100回看護師国家試験一般問題・状況設定問題解説(午後問題106〜120)
次の文を読み106〜108の問いに答えよ。
Aくん(12歳、男子)は、5歳で気管支喘息と診断され、抗アレルギー薬の服用と副腎皮質ステロイドの吸入をしている。アレルゲンはハウスダストである。Aくんは小学3年生までは、年に数回の中発作を起こし入院治療をしていた。その後は、月に1回の外来通院で症状はコントロールされ、入院することはなかった。小学6年生の冬に学校で中発作を起こし、学校に迎えに来た母親とともに救急外来を受診した。
【問題106】 救急外来受診時のAくんの状態で考えられるのはどれか。
正解 2
- 呼気の延長はない。
- 気管支喘息では、呼気時に周囲からの圧迫をうけて気道が狭窄するため、呼気は延長する。
- 坐位になることを好む。
- 横隔膜を下げて呼吸面積を広げる、起坐位やファウラー位が安楽な姿勢である。
- 日常会話は普通にできる。
- 中発作では、日常会話も困難である。
- 安静時の呼吸困難感はない。
- 中発作では、安静にしていても呼吸困難がみられる。
- 経皮的動脈血酸素飽和度(SpO2)は90%である。
- 中発作での経皮的動脈血酸素飽和度(SpO2)は、92〜95%である。
正解 1
- なぜそう思うのかをAくんに尋ねる。
- 症状は改善しており、本人から話を聞くことができる。看護師の質問には素直に答えているので、なぜそう思うのかを本人に尋ねる。
- Aくんにではなく母親に病状を尋ねる。
- 母親への態度が適切でないとAくんを叱る。
- 親子関係に問題があるのではないかと母親に伝える。
【問題108】 Aくんの帰宅に際しての看護師の対応で最も適切なのはどれか。
正解 3
- 毎日の食事内容を記録するように伝える。
- アレルゲンはハウスダストであり、食事内容を記録する必要性は高くない。
- 治療の経過を学校に報告しておくと伝える。
- 個人情報を病院側から学校に伝えることは不適切である。
- 発作が学校で起こった要因について話し合う。
- ここ数年症状がコントロールできていたにもかかわらず今回発作が起こったことについて、その要因を話し合い、再発防止に努める。
- 薬を飲み忘れないよう母親に管理してもらうことを勧める。
- 小学6年生であり、服薬管理は自分自身で行える。
次の文を読み109〜111の問いに答えよ。
Aさん(36歳、2回経産婦)は正常な妊娠経過で、妊娠37週2日に2,600gの児を正常分娩した。分娩の所要時間は3時間40分、出血量は250ml、会陰裂傷はない。
正解 1
- 経過観察
- 授乳によってオキシトシンが分泌され、子宮の収縮を促進させ、悪露が排出される。経産婦で起こりやすい後陣痛であり、生理的な現象なのでとりあえず経過を観察する。
- 授乳の中止
- 生理的現象であり、授乳は続行する。
- 全粥食への変更
- 食事内容を変更する必要はない。
- 下腹部の冷罨法
- 下腹部の冷罨法は、子宮収縮を促進させる。
正解 2,4
- 低出生体重児である。
- 低出生体重児とは、出生時体重が2,500g未満の新生児である。この場合、出生時体重は2,600gであり、正常範囲である。
- 排泄は正常である。
- 排便回数、便の性状、排尿回数ともに正常である。
- アレルギー反応がみられる。
- 皮膚の乾燥や落屑は、正常新生児でもみられるものであり、アレルギー反応を示すものではない。
- バイタルサインは正常である。
- 体温、呼吸数、心拍数ともに正常である。
- 黄疸は生理的範囲を逸脱している。
- 血清総ビリルビンは10.0mg/dlであり、生理的黄疸の範囲内である。
正解 2
- 「授乳を3時間ごとにしましょう」
- 「このままの授乳で様子をみましょう」
- 授乳回数は適切であり、児の体重も増加しているので、このままの授乳でしばらく様子をみる。
- 「母乳を飲ませた後にミルクを飲ませましょう」
- 「おっぱいがすっきりするまで授乳後に毎回搾りましょう」
次の文を読み112〜114の問いに答えよ。
Aさん(40歳、初産婦)は妊娠経過に異常がなく、妊娠41週に陣痛発来した。分娩中に臍帯圧迫による胎児機能不全を認めたため緊急帝王切開になった。麻酔は、脊椎麻酔に硬膜外麻酔を併用した。出生した児の体重は3,150g、アプガースコアは1分後7点、5分後9点であった。Aさんは、術中の経過に異常はなく、出血量400ml。術直後の検査でHb11.5g/dlであった。
【問題112】 Aさんの術後合併症で最も注意すべきなのはどれか。
正解 4
- 貧血
- 肺水腫
- 術後せん妄
- 深部静脈血栓症(DVT)
- 帝王切開術後の安静によって、深部静脈血栓症(DVT)が起こることがある。
正解 2
- 禁食
- 腸蠕動音が聴取されており、流動食から始められる。
- 授乳の介助
- 母乳育児の成功や子宮復古の促進のためには、早期授乳が望ましい。母体の状態に応じて授乳の介助を行う。
- ベッド上安静
- 術後の血栓症予防のためにも、早期離床が望ましい。
- 子宮底の輪状マッサージ
- 子宮収縮が不良の場合は、子宮底の輪状マッサージによって子宮収縮を促す。
【問題114】 術後2日目に、Aさんは「頑張ったのに、帝王切開になってしまいとても悲しいです」と話す。Aさんへの対応で最も適切なのはどれか。
正解 2
- 「過去のことですから忘れましょう」
- 「お産の経過を振り返ってみましょうか」
- 緊急帝王切開術後は、「自らの力で出産できなかった」「もう少し頑張れなかったのか」という自責の念に駆られてしまう場合がしばしばある。本人の思いや感情を表出させ、受容的に傾聴する援助が必要である。
- 「よくあることなので気にする必要はないですよ」
- 「赤ちゃんが元気だったのでよかったと思ってください」
次の文を読み115〜117の問いに答えよ。
Aさん(47歳、男性)は、統合失調症で20年間精神科病院に入院している。父親はすでに亡くなっており、80歳になる母親は病気がちのため、面会は年に1回程度である。Aさんは看護師の声かけに応じて、月に1回の病棟レクリエーションや週に2回の作業療法に参加している。それ以外の時間はほとんど病室のベッド上で寝て過ごしている。発病以来、薬物治療を続けており、時々飲み忘れることはあるが、ほぼ自己管理できている。病状は安定していることから、退院の話が出るようになった。
【問題115】 Aさんは物を捨てられず、ベッドの周囲には私物やゴミの入った大きなビニール袋が足の踏み場もないほど積み上げられている。Aさんがこのような状況にある原因で、可能性が低いのはどれか。
正解 1
- 作業療法による疲労
- 週に2回の作業療法で、物が捨てられないほど疲労しているとは考えにくい。
- 病状に伴う意欲の低下
- 病状が安定しているとはいえ、20年間入院しており、意欲が低下している可能性はある。
- 長期入院による施設症
- 精神科における施設症(ホスピタリズム)とは、長期の入院によって、生活能力の低下、無気力状態、社会復帰意欲の喪失に陥ることをいう。20年間入院しており、施設症の可能性はある。
- 向精神薬の副作用による倦怠感
- 発病以来、薬物治療を続けており、副作用による倦怠感が生じている可能性はある。
【問題116】 Aさんのベッド周囲の状況について同室者から看護師に苦情の訴えがあった。看護師の対応で最も適切なのはどれか。
正解 1
- Aさんと話し合いながら整理・整頓を行う。
- 退院後も自身で片付けができるように援助することが適切である。
- 同室者にAさんの病状について説明を行う。
- 病状について話すことは適切ではない。
- Aさんの母親に連絡を取り、不要な物を持ち帰ってもらう。
- 母親は80歳で病気がちである。
- 看護師が定期的にAさんのベッド周囲の整理・整頓を行う。
- 本人の自立性が損なわれてしまう。
正解 2,4
- 福祉ホーム
- 福祉ホームとは、住居を求めている障害者に対して、居室その他の設備を提供し、日常生活に必要な便宜を供与する施設である。
- 精神科デイケア
- 精神科デイケアは、日常生活の自立を助けるためのリハビリテーションを行う通所施設である。「日中、息子が出掛ける場所があるとよい」と母親が語っており、適している。
- ショートステイ
- ショートステイとは、一時的に在宅介護が困難な場合に、短期間入所して日常生活全般の養育・介護を受けることができるサービスである。
- ホームヘルプサービス
- ホームヘルプサービスは、ホームヘルパーが家庭を訪問して、身体介護や生活援助を行うサービスである。「息子の世話までできない」と母親が語っているので、家事サービスを受けると良い。
- 公共職業安定所(ハローワーク)
- 公共職業安定所は、職業紹介や職業相談、失業給付などを行う公的機関である。
次の文を読み118〜120の問いに答えよ。
Aさん(25歳、男性)は、未婚で両親と3人で暮らしている。大学卒業後に就職し、仕事も順調であった。4か月前、仕事のミスがあったことをきっかけに気分が落ち込み、食欲のない状態が1か月ほど続いたが、通勤は何とか続けていた。Aさんは、2か月前から不眠を訴えるようになり、先月からは、高額なマンションや車の購入契約をしたり、貯金の全額を宝くじの購入に費やしてしまうなどの行為がみられるようになった。Aさんは、心配した両親に付き添われて精神科病院を受診した。
正解 4
- 応急入院
- 応急入院では、精神保健指定医が診察した結果、精神障害があり、入院治療を行わなければ医療保護を図る上で著しい支障が認められると判断された場合、本人および保護者の同意が得られなくても72時間に限り入院させることができる。
- 任意入院
- 任意入院は、患者本人の同意に基づいて行われる入院である。
- 緊急措置入院
- 緊急措置入院では、精神保健指定医が診察した結果、精神障害があり、入院治療を行わなければ、医療保護を図る上で著しい支障が認められると判断された場合、本人の同意が得られなくても72時間に限り入院させることができる。措置入院の通常の手続きである、2名以上の精神保健指定医の診察、都道府県職員の立ち会い、保護者への通知と立ち会いを省略することができる。
- 医療保護入院
- 医療保護入院では、精神保健指定医が診察した結果、精神障害があり、医療および保護のための入院が必要だと判断された場合、本人の同意が得られなくても保護者の同意で入院させることができる。
正解 2
- 仕事のことはあまり考えないようにと話す。
- 職場のことが気になって焦りを覚えており、考えないようにと話すことは適切ではない。
- 治療の見通しについてAさんと再確認する。
- 今後への強い焦りの訴えが聞かれているので、今後の治療の見通しについて再確認すると良い。
- Aさんのテレホンカードをナースステーションで管理する。
- 通信の自由を侵害することは適切ではない。
- Aさんの上司に病状を説明し、Aさんの行動への理解を求める。
- 守秘義務があり、病状を伝えることは適切ではない。
正解 3
- 「薬は家族が管理してください」
- 家族が服薬管理する必要性があるわけではない。
- 「今後も入院治療が定期的に必要になります」
- 服薬によって症状は改善しており、今後入院治療が定期的に必要になるとは言えない。
- 「症状が悪化する兆候を見逃さないようにしましょう」
- 症状悪化の前兆について説明を行い、家族に兆候を見逃さないようにしてもらう。
- 「服薬をしていれば症状は悪化しないので安心してください」
- 服薬をしていても症状が悪化しないとは限らない。