第101回看護師国家試験一般問題・状況設定問題解説(午前問題91〜105)
次の文を読み91〜93の問いに答えよ。
Aさん(88歳、男性)は、脳梗塞の後遺症で、要介護5の認定を受けている。Aさんは意思を明確に表出できない。63歳の娘が介護を行っている。娘が食事形態を工夫して摂食の援助を行ってきたが、これまでにAさんは2回の誤嚥性肺炎を起こしている。今回、3回目の誤嚥性肺炎で入院し、低栄養状態を改善するための栄養管理方法の1つとして、医師が娘に胃瘻の造設を提案した。
【問題91】 胃瘻について説明を受けた娘は、「父は管を入れてまで生きたくないと日頃から言っていたので、胃瘻にはしたくありません」と言った。看護師の言葉で適切なのはどれか。
正解 4
- 「娘さんの決定に私も賛成します」
- 「お父様に長生きしてほしいと思いませんか」
- 「胃瘻から栄養を摂ればまた元気になりますよ」
- 「お父様の意向に娘さんも同意されるのですね」
- 患者は意思を明確に表出できない状態である。父親の意向を汲んだ娘の意見を尊重する。
正解 2
- 身体活動性
- 経口摂取の状況
- 患者は誤嚥性肺炎を繰り返しており、胃瘻も造設していない。低栄養状態の改善のためには、経口摂取の状況についての情報が最も重要である。
- 娘の調理の技術
- 排泄介助の方法
- 娘の胃瘻に関する知識
正解 1
- 「ジュースにとろみをつけてみましょう」
- 誤嚥性肺炎を予防するために、ジュースにとろみをつけることは適切である。
- 「ジュースなら買ってきた方が簡単ですよ」
- 「ジュースばかりでは再入院の可能性が高くなります」
- 「お粥や野菜も果物と一緒にジュースに混ぜてはいかがでしょう」
次の文を読み94〜96の問いに答えよ。
Aさん(74歳、女性)は、右肺尖部癌と診断され、外科的治療は困難で、外来で抗癌化学療法を実施していた。半年後、胸壁への浸潤が進行したため、抗癌化学療法目的で入院した。Aさんは5年前に夫を亡くしてからは1人暮らしをしており、入院前は、近所に住むAさんの娘が毎日訪問していた。
正解 3
- 「有効な治療方法がないので緩和ケアに切り替えましょう」
- 「痛みが我慢できるなら緩和ケアを受ける必要はないですね」
- 「緩和ケアは病気の段階とは関係なくつらい症状を緩和するものです」
- 緩和ケアは、患者や家族が抱える身体的、精神的苦痛を軽減し、QOLを高める目的があり、病気の段階とは関係ないことを説明する。
- 「痛みを軽減するための麻薬が処方できるのは緩和ケアチームの医師に限られるからです」
正解 4
- 構音障害
- 聴力の低下
- 片麻痺の出現
- 上肢の強い痛み
- 肺尖部胸壁浸潤癌はパンコースト腫瘍と呼ばれる。上肢や肩の疼痛、しびれ、筋萎縮、頚部交感神経麻痺によるホルネル症候群(眼瞼下垂や縮瞳)などが生じる。
正解 3
- 痛みがないときは定期薬の内服を中止する。
- 痛みがなくても定期薬の内服は中止しない。
- 食事が食べられなかったときは、定期薬の内服を中止する。
- 食事の有無に関わらず、定期薬は内服する。
- 臨時追加薬を内服した日付と時刻とを記録する。
- 突発痛が起こった場合は、レスキュードーズとして速放性のオキシコドン塩酸塩水和物を内服する。その際には、日付や時刻など服用状況の記録をとる。
- 痛みが強いときは、臨時追加薬は間隔を空けずに追加内服する。
- 追加投与する場合は、1時間以上の間隔を空ける。
次の文を読み97〜99の問いに答えよ。
Aさん(58歳、女性)は、 3年前に慢性閉塞性肺疾患と診断された。3日前に38.0℃の発熱があった。市販の総合感冒薬を内服して様子をみていたが、昨晩から黄色痰がみられ、息苦しさが増強した。外来を受診したところ肺炎と診断され、入院した。入院時の状態は、体温38.2 ℃、呼吸数28/分、脈拍92/分、血圧138/72mmHg。
正解 1
- 呼吸の断続性副雑音
- 肺炎や肺水腫では、気道内に分泌物が貯留することによって、粗い断続性副雑音が聴取される。
- Biot(ビオー)呼吸
- ビオー呼吸は、無呼吸と頻呼吸が不規則に繰り返される呼吸である。延髄障害、髄膜炎などでみられる。
- 顔面浮腫
- 顔面浮腫は、急性腎炎やうっ血性心不全、ネフローゼ症候群などでみられる。
- 皮下気腫
- 皮下気腫は、皮下組織内に空気が貯留した状態である。肋骨骨折や胸骨骨折、外傷、胸部打撲などによって肺や気管などが損傷することによって生じる。
正解 4
- 「肩呼吸の練習をしてみましょう」
- 「歩いた後に水分補給をしてください」
- 「安静時に酸素の量を増やして回復を待ちましょう」
- 「息切れがあるときに血液の酸素飽和度を測定してみましょう」
- より効果的な酸素療法を行うために、息切れ時の酸素飽和度を測定する。
正解 4
- 脱衣時の座位の時間を延長する。
- 座位で脱衣した後のSpO2は98%で、息苦しさもないため、座位の時間を延長する必要はない。
- 今後の入浴では酸素吸入は必要ない。
- SpO2の低下や息切れが入浴中に多々みられており、今後も酸素吸入は必要である。
- 浴槽の湯に入る時間を 10分間確保する。
- 浴槽の湯に入って3分後で、SpO2が88%に低下し、動悸もあるので、10分間湯に入ることは危険である。
- 身体を洗った後に休憩してから髪を洗う。
- 身体と髪を洗った後は、SpO2が86%に低下し、息切れもある。また、座位で3分間休憩した後は、SpO2は97%で、息切れもない。以上のことから、身体を洗った後に休憩し、それから髪を洗うとよい。
次の文を読み100〜102の問いに答えよ。
Aさん(55歳、男性)、会社員。野球が趣味で、野球チームに所属し毎週日曜日に試合や練習を行っている。 7月のある日曜日、気温32℃、湿度86%。Aさんは野球の試合で守備についていたとき、急激な下肢の痛みが出現し倒れこんだ。その試合を偶然観戦していた看護師がAさんの状態を観察した。ジャパン・コーマ・スケール (JCS)I-1。呼吸数30/分。脈拍120/分、整。身体は熱く、多量の発汗がみられた。
【問題100】 この看護師の対応で優先順位が高いのはどれか。
正解 3
- Aさんに既往歴を尋ねる。
- 意識レベルI-1であり、熱中症の処置が優先される。
- Aさんの下肢のマッサージを行う。
- 熱中症では、筋肉の異常収縮によって、下肢に痛みを伴う痙攣が生じることがある。多汗による電解質(主にナトリウム)不足が原因であり、水分と電解質の補給が優先である。
- Aさんにスポーツドリンクを飲ませる。
- 湿度の高い環境、身体が熱く、多量の発汗がみられることから、熱中症と考えられる。脱水、ナトリウム不足を改善するため、スポーツドリンクを飲ませることが最優先である。
- Aさんと同様の症状がある他の選手を把握する。
- 同様の症状がある者の把握は必要であるが、Aさんの症状への対処が最優先である。
正解 3,4
- 下肢を挙上させる。
- 下肢挙上はショック時における対応である。
- ばち状指の有無を確認する。
- ばち状指とは、指先が太鼓のばちのように丸く肥大した状態であり、慢性肺疾患やチアノーゼ性心疾患などでみられる。
- 静脈路の確保の準備をする。
- 意識レベルが下がっており、静脈路を確保して、いつでも輸液を行えるようにしておく。
- 頸部の両側を氷嚢で冷やす。
- 体温が高いため、頚動脈や腋下動脈、大腿動脈を氷嚢で冷却する。
- 回復傾向にあることをAさんに伝える。
- 呼吸数、脈拍は下がっているが、体温は高く、意識レベルも下がっており、回復傾向とはいえない。
正解 2
- 「下肢の痛みが原因です」
- 下肢の痛みは、熱中症によるものである。
- 「湿度の高さも関係します」
- 熱中症は、高温多湿の状況で生じる。
- 「糖分の不足も関係します」
- 水分と電解質の不足が関係する。
- 「野球はやめた方が良いです」
- 高温多湿の状況で運動する場合の注意点を説明する。
次の文を読み103〜105の問いに答えよ。
Aさん(56歳、男性)は、若いころテニスの選手で、現在も趣味でテニスを続けている。膀胱癌と診断され、膀胱全摘除術・回腸導管造設術の手術目的で入院した。Aさんは「外来で病名を聞いたときは動揺しましたが、家族と話し合い、今は心の準備ができています」と看護師に話した。
【問題103】 手術までの観察項目で緊急の処置を必要とする可能性があるのはどれか。
正解 1
- 尿閉
- 膀胱癌などで膀胱内に出血がある場合は、凝血塊によって尿閉(膀胱タンポナーデ)が生じる可能性がある。膀胱タンポナーデでは、下腹部膨満や下腹部痛が生じ、程度によっては出血性ショックに陥ることもあるため、膀胱内の洗浄や凝血塊の吸引が必要である。
- 頻尿
- 膀胱癌の症状ではあるが、緊急の処置を必要とするものではない。
- 潜血尿
- 膀胱癌の症状ではあるが、緊急の処置を必要とするものではない。
- 排尿時痛
- 膀胱癌の症状ではあるが、緊急の処置を必要とするものではない。
【問題104】 術後5日、順調に回復しているAさんのストーマの色はどれか。
正解 3
- 白色〜淡黄色
- 黄土色〜茶色
- 桃色〜鮮紅色
- 回腸導管造設術とは、小腸(回腸)の一部を用いて造った導管に尿管をつなぎ、回腸の先を右下腹部の皮膚に出してストーマとする尿路変向術である。正常なストーマの色は鮮紅色である。灰色や黒色の場合は壊死している可能性がある。
- 灰色〜黒色
【問題105】 看護師は、Aさんから「退院後はどのように生活が変わりますか」と質問された。看護師の説明で適切なのはどれか。
正解 2
- 「入浴の際、浴槽の湯に入ることはできません」
- ストーマ装具をつけたまま浴槽の湯に入ることもできる。回腸導管の場合、装具を外しての入浴も可能である。
- 「食事の内容を変える必要はありません」
- 食事制限はないため、食事の内容を変える必要はない。
- 「排尿のときは導尿が必要です」
- ストーマから排泄されるため、導尿の必要はない。ストーマパウチを装着することで、排泄した尿を蓄積することができる。
- 「テニスはできなくなります」
- 体調が回復すればスポーツをすることは可能である。ストーマが損傷する恐れのあるスポーツは避けるべきであるが、テニスをすることは問題ない。