第101回看護師国家試験一般問題・状況設定問題解説(午前問題106〜120)
次の文を読み106〜108の問いに答えよ。
Aさん(76歳、女性)は、夫と2人で暮らしている。これまで健康に生活しており、登山会への参加を趣味にしていた。3週前に、散歩中に転び、殿部から腰背部にかけての痛みがあったが様子をみていた。Aさんは痛みのため臥床して過ごすことが多くなり、次第に足に力が入らず立ちあがりも困難になった。食事は夫が購入した弁当を残さず食べていた。 2日前から1日中臥床するようになったため、夫の介助で受診し、腰椎圧迫骨折と診断され入院した。
【問題106】 入院時のアセスメントで最も適切なのはどれか。
正解 2
- 嚥下困難がある。
- 弁当を残さず食べており、嚥下困難は考えにくい。
- 筋力の低下がある。
- 臥床して過ごすことが多くなり、立ちあがりも困難になっている。下肢の筋力低下が考えられる。
- 関節の強直がある。
- 3週間の活動低下によって関節の強直が起こるとは考えにくい。
- 痛みは我慢できる程度である。
- 2日前から1日中臥床するようになっており、痛みが我慢できない状態であると考えられる。
【問題107】 入院後5日が経過し、Aさんは病室内を歩くようになったが、腰痛を訴えている。看護師が検討すべき事項として適切なのはどれか。
正解 1
- 鎮痛薬の内服
- 痛みが強い場合は、鎮痛薬の服用を検討すべきである。
- T字杖の使用
- T字杖は、身体の支持やバランスを補助するためのもので、歩行が困難な場合などに用いる。
- 痛みのある間の臥床保持
- 腰椎圧迫骨折において安静は大事であるが、長期の臥床は筋力の低下を招く。
- 就寝中のコルセット装着
- 就寝中は腰部の負担が少ないため、コルセットを装着する必要はない。
【問題108】 Aさんの経過は順調で歩行機能も回復したため、退院することになった。退院直後の生活指導として適切なのはどれか。
正解 2
- 登山への参加
- 退院直後の登山への参加は負担が大きいため不適切である。
- 散歩の再開と継続
- 無理のない範囲で散歩を行い、徐々に日常生活行動を広げていく。
- 居室内リフトの設置
- 歩行機能は回復しており、居室内リフトは必要ない。
- 体幹の回旋運動の実施
- 体幹回旋運動は腰部に負担がかかるため適切ではない。
次の文を読み109〜111の問いに答えよ。
Aちゃん(生後3か月)は、体重 2,850gで出生した。Aちゃんは、出生直後から心雑音を認め、中等度の心室中隔欠損症と診断された。強心薬と利尿薬との内服で経過観察していた。昨日から喘鳴と哺乳力低下とがみられるようになり、心不全の治療のため入院となった。入院時、Aちゃんは体重5,050g、体温37.6 ℃、呼吸数52/分、発汗が著明である。チアノーゼはみられない。ミルクは約100ml/回を1日6、7回哺乳している。
正解 1
- 肺血流量の増加
- 中等度の心室中隔欠損症では、圧の高い左室から圧の低い右室への短絡(シャント)が発生し、肺血流量の増加と左室の容量負荷が生じる。欠損孔が中等度以上では、肺血流量の増加によって肺高血圧が生じ、アイゼンメンゲル化するとシャントの方向が逆転して右→左シャントとなる。なお、大動脈から肺動脈への短絡は、動脈管開存症でみられる。
- 右心室から左心室への短絡
- 大動脈から肺動脈への短絡
- 大静脈から還流する血液量の増加
正解 2
- 1日2回沐浴する。
- 心臓に負担がかかるため適切ではない。
- 毎朝授乳前に体重測定をする。
- 心不全では、尿量の減少、体液の貯留によって、体重増加や浮腫がみられる。心不全悪化の兆候を見逃さぬよう、毎朝同じ条件のもとで体重を測定する。
- 啼泣時はミルクを追加して与える。
- ミルクは1日に600〜700ml哺乳しており、極端に不足しているわけではない。水分の過剰摂取が心不全の悪化をきたす可能性もあり、適切ではない。
- フォローアップミルクを飲ませる。
- フォローアップミルクは、離乳時期に栄養素を補う目的で用いるものであり、現時点では必要ない。
正解 4
- 精神科の受診を勧める。
- 親がしっかりしなければと励ます。
- 泣き止むまで泣かせて良いと伝える。
- 母親の対応が悪いのではないと伝える。
- ドローターは、先天異常をもつ子どもの誕生に対する親の反応を、ショック・否認・悲しみと怒り・適応・再起、と段階分けしている。責任が自分にあると考え、悲しみを感じている母親に対して、自責の念を軽減させる言葉をかけることが望ましい。
次の文を読み112〜114の問いに答えよ。
Aちゃん(5歳、男児)は、両親と2歳の妹と4人で暮らしている。Aちゃんは、1歳のときにてんかんと診断され、抗てんかん薬を服用していた。数日前から、失禁を伴う意識消失発作がみられるようになったため、検査と治療の目的で入院した。母親によると、抗てんかん薬を飲ませるのを忘れてしまうことがあったという。Aちゃんは、幼稚園に通っており、外で遊んだり絵本を見たりすることが好きである。知的発達の遅れはみられない。
【問題112】 Aちゃんは、入院後、突然意識が消失して動作が止まる10秒程度の発作が1日に数回みられているが、その他は元気に過ごしている。Aちゃんへの看護で正しいのはどれか。
正解 1
- 排泄時には付き添う。
- 意識消失が1日に数回みられており、発作時に対応できるよう排泄時にも付き添うようにする。
- 食事はきざみ食とする。
- きざみ食は咀嚼機能が低下している場合である。このケースでは必要ない。
- ベッド上で安静とする。
- ベッド上安静の必要はない。ただし、発作を引き起こす恐れがあるため激しい運動は避ける。
- 日中は病室を薄暗くしておく。
- 睡眠不足や精神的ストレスなどが発作の誘因となる。発作が起こった場合に、光による刺激を防ぐために部屋を薄暗くすることはあるが、このケースでは必要ない。規則正しい生活が送れるような環境作りが必要である。
正解 4
- 再度眠らせ、朝食時に起床を促す。
- 再度眠らせ、自然に覚醒するまで寝かせておく。
- そのまま覚醒させ、眠くなったら寝て良いと伝える。
- そのまま覚醒させ、午前中は眠らないよう働きかける。
- 脳波検査は、頭部に装着した電極から脳神経細胞の電気活動を記録するもので、てんかんの診断と治療経過の判断に有用である。午後1時からの検査なので、検査までそのまま覚醒させておくのが適切である。
正解 2
- 服薬を忘れたときは、次の服薬時に倍量を飲ませるよう指導する。
- 一日の薬の量を一定に保つことが基本であり、服薬を忘れた場合は気づいた時点で内服する。
- 母親の育児・家事の負担を減らす方法について話し合う。
- 薬の飲み忘れは発作の誘因となる。継続的にきちんと服薬できるよう、母親の育児・家事の負担を減らす方法について話し合う。
- 服薬管理はAちゃん自身に任せるよう指導する。
- 5歳児であり、服薬の自己管理は困難である。
- 入院期間の延長を提案する。
- 入院期間を延長する必要はない。
次の文を読み115〜117の問いに答えよ。
Aさん(28歳、初産婦)は、妊娠30週である。今朝から性器出血が少量認められたため外来を受診した。受診時、子宮収縮は1時間に4、5回認められ、Aさんは時々、軽い痛みを訴えた。今までの妊娠経過では、異常は認められていない。身長160cm、体重60kg(非妊時54kg)である。
【問題115】 診察の結果、切迫早産と診断された。その他の異常は指摘されていない。注意すべき検査項目はどれか。
正解 1
- CRP
- 切迫早産の主な原因は、絨毛羊膜炎など生殖器の細菌感染による炎症である。炎症によるサイトカインの発現によって早期の子宮収縮が起こるとされており、CRP値に注意すべきである。
- 尿蛋白
- AST(GOT)
- ヘモグロビン
- プロトロンビン時間
正解 2
- 食事は流動食とする。
- 食事は普通食でよい。
- 清潔ケアは清拭とする。
- 安静が必要であり、清潔ケアは清拭とする。
- 排尿は毎回導尿とする。
- 導尿の必要はない。
- 血圧を継続モニタリングする。
- 子宮収縮抑制薬によって血圧が低下する可能性があるが、現時点で異常所見はなく、継続モニタリングの必要はない。
【問題117】 Aさんは、妊娠32週に破水した。羊水混濁はない。胎児は頭位である。破水直後の対応として最も適切なのはどれか。
正解 3
- 外陰部洗浄を行う。
- セミファーラー位とする。
- 胎児心拍モニターを装着する。
- 破水後は子宮内感染に注意し、臍帯脱出予防のため体位は骨盤高位とし、胎児心拍を継続的にモニタリングする。
- 帝王切開の術前準備を開始する。
次の文を読み118〜120の問いに答えよ。
Aさん(16歳、女子)は、両親と弟と4人で暮らしている。中学生の頃からモデルにあこがれてダイエットを始めた。高校に入ってからは、太ることへの恐怖から食べた後に吐いたり、緩下薬を服用することも多くなった。次第にやせが顕著になり、無月経となった。Aさんの状態を心配した母親に伴われ、心療内科を受診し、医師から入院治療を勧められ、Aさんは入院した。
【問題118】 入院時、Aさんの身長は162cm、体重は36kg。体温35.0 ℃。血圧90/60mmHg。脈拍56/分、不整。血液検査で最も注意すべきデータはどれか。
正解 2
- 尿酸
- 尿酸値は、高尿酸血症や痛風の指標である。
- 血清カリウム
- 神経性食欲不振症(拒食症)であると考えられる。食物からのカリウム摂取不足、緩下薬使用による消化管からのカリウム損失によって低カリウム血症が起こりやすくなる。不整脈が出現する可能性もあり、注意が必要である。
- 中性脂肪
- 中性脂肪は、脂質異常症の指標である。
- HbA1c
- HbA1cは、糖尿病の指標である。
正解 4
- あまり気にしないよう伝える。
- 本人に目標体重を再度確認する。
- 吐いた分を間食で補うよう提案する。
- 自分から嘔吐について話したことを肯定的に評価する。
- 患者が感情を言語化して表出したことを肯定的に評価することが適切である。
正解 3
- 過活動を見かけたら注意する。
- 医師に行動範囲の再検討を依頼する。
- Aさんと1日の過ごし方について話し合う。
- 患者の行動を否定するのではなく、患者の気持ちを受容する姿勢が大切である。患者に誤った認識があれば、徐々に改善していけるよう援助を行う必要があり、1日の過ごし方について話し合うことは適切である。
- Aさんを看護師が観察しやすい病室に移動させる。