第101回看護師国家試験一般問題・状況設定問題解説(午後問題91〜105)
次の文を読み91〜93の問いに答えよ。
Aさん(52歳、女性)は、未婚で1人暮らしである。近くに親戚はいない。物が握りにくい、細かい作業ができないという症状があり、精密検査のため入院したところ、筋萎縮性側索硬化症(ALS)と診断された。
正解 2
- 入浴の介助
- 疾病受容の支援
- 「これからどのようになっていくのか分からない」と不安を訴えており、疾病を受容できるよう支援することが優先される。
- 呼吸機能の評価
- 上肢のリハビリテーション
正解 3
- 車椅子の貸与
- 車椅子の貸与は、要介護2以上で利用できる介護サービスである。ただし、日常的に歩行が困難な場合等は軽度者(要支援1・2及び要介護1)であっても例外的に利用可能である。Aさんは歩行が自立しており、対象外である。
- 療養通所介護
- 療養通所介護の対象者は、常時看護師による観察を必要とする、難病等を有する重度要介護者や癌末期の者である。
- ホームヘルパー
- 訪問介護(ホームヘルプサービス)の身体介護と生活援助を受けることができる。
- レスパイトケア
- レスパイトケアは、介護にあたる家族を支援するサービスである。一時的にケアから解放することによって、介護者の心身の疲労を癒すことを目的としている。
- 意思伝達装置の給付
- 意思伝達装置の給付対象者は、重度の両上下肢及び音声・言語機能障害者であって、重度障害者用意思伝達装置によらなければ意思の伝達が困難な者である。
正解 2
- 入院中の治療の経過
- 胃瘻管理の指導内容
- 自宅療養を希望しており、胃瘻管理ができるよう指導を行う。
- 利用可能な在宅サービス
- リハビリテーションの状況
次の文を読み94〜96の問いに答えよ。
Aさん(52歳、男性)は、2か月で体重が7kg減少した。2か月前から食事のつかえ感があるため受診した。検査の結果、胸部食道癌と診断され、手術目的で入院した。
正解 3
- 出血傾向
- プロトロンビン時間は正常であり、出血傾向は考えにくい。
- 腎機能障害
- 尿素窒素、クレアチニンは正常であり、腎機能障害は考えにくい。
- 低栄養状態
- ヘモグロビン、アルブミンが低値であり、低栄養状態が考えられる。低栄養状態では、術後合併症を起こす可能性が高くなる。
- 肝機能障害
- AST、ALTは正常であり、肝機能障害は考えにくい。
正解 1,4
- 離床を促す。
- 無気肺の改善には、痰の排出が必要である。早期離床によって痰の喀出を促すことができる。
- 胸式呼吸を勧める。
- 腹式呼吸を勧める。
- 左側臥位を勧める。
- 側臥位にする場合は、痰が排出されやすくなるよう、無気肺側を上にする。
- 鎮痛薬の使用を勧める。
- 痛みの軽減が早期離床、痰の喀出につながる。痰の喀出を促すためにも鎮痛薬の使用を勧める。
- 胸腔ドレーンをクランプする。
- 胸腔ドレーンはクランプしない。
【問題96】 その後、順調に回復し、術後3週目に退院する予定となった。退院後の食事の指導で適切なのはどれか。
正解 3
- 「蛋白質を控えた食事にしてください」
- 高蛋白、低糖質の食事内容にする。
- 「食事は1日3回にしてください」
- 1回の食事量を減らし、1日の食事回数を5〜6回にする。
- 「食事は時間をかけて食べてください」
- ダンピング症候群を防ぐために、食事は少量ずつ時間をかけてゆっくり食べる。
- 「食事の前にコップ1杯の水分を摂るようにしてください」
- 食事中の水分摂取は少量にする。
- 「食後は横になって過ごしてください」
- 噴門が手術で切除されているため、胃の内容物の逆流が起こりやすい。胃からの逆流を防ぐために、食後は座位やファウラー位で過ごす。
次の文を読み97〜99の問いに答えよ。
Aさん(59歳、女性)は、午前2時ころにバットで殴られたような激しい頭痛を自覚し、嘔吐した。午前4時、Aさんは、頭痛を我慢できなくなったために、家族に付き添われて救急搬送され、緊急入院した。入院時、ジャパン・コーマ・スケール(JCS)I-1、四肢の麻痺を認めない。
【問題97】 Aさんはくも膜下出血と診断された。再出血を防ぐためのケアで適切なのはどれか。
正解 3
- 深呼吸を促す。
- 起坐位とする。
- 病室を薄暗くする。
- くも膜下出血では、発症後24時間以内に再出血が起こる危険性が極めて高いため、外からの刺激を避けて、絶対安静とする。病室を薄暗くして外部からの感覚を遮断し、鎮静剤を投与して、血圧の上昇を防ぐ。
- 頭部を氷枕で冷やす。
【問題98】 Aさんは、入院後に緊急開頭術を受けることになった。手術を受けるまでの看護で適切なのはどれか。
正解 4
- 浣腸を行う。
- 血圧や脳圧が上昇し、再出血の危険性があるため、急性期での浣腸は禁忌である。
- 排痰法の練習を勧める。
- 体位排痰法(体位ドレナージ)は、痰が貯留している部位が高くなるように体位をとり、痰を重力により気管支末梢から中枢方向へ排出させる方法である。体位変換により脳圧へ影響する可能性がある場合は禁忌である。
- テタニー徴候を観察する。
- テタニーは、血液中のカルシウム濃度低下によってに起こる筋肉の痙攣状態をいい、副甲状腺機能低下症などでみられる。くも膜下出血では、項部硬直、ケルニッヒ徴候、ブルジンスキー徴候などの髄膜刺激症状がみられる。
- 不整脈の出現に注意する。
- くも膜下出血では、不整脈が出現することが多い。カテコールアミンの過剰放出によるものとされている。
正解 3
- 両腋窩を冷やす。
- 体温は37.5℃であり、両腋窩のクーリングが必要なほどではない。
- 酸素吸入を中止する。
- 開頭術後の酸素欠乏は、脳浮腫や頭蓋内圧亢進の原因となるため、酸素吸入は継続して行う。
- 起き上がらないように説明する。
- 脳室ドレナージは、外耳孔を基準点として圧設定を行う。位置がずれないよう、起き上がらないように説明する。
- 痛み刺激を与えて意識レベルを確認する。
- 意識レベルはJCSI-2であり、痛み刺激を与える必要はない。
次の文を読み100〜102の問いに答えよ。
Aさん(82歳、男性)は、4年前にAlzheimer(アルツハイマー)型認知症の診断を受けた。要介護4で、1年前からグループホームで生活している。高血圧症に対して持続性カルシウム拮抗薬を内服している。他に治療を必要とする疾患は認められない。 1週前から夜はほとんど眠らず、居間のソファに腰かけたり、歩き回ったりする状態が続いている。昼間もベッドに横になることはない。食欲が低下してきたが、先月よりも体重は2kg増加している。
正解 1
- 心不全
- 頻脈、呼吸困難、四肢の冷感、浮腫などから心不全の可能性が高い。
- 上気道感染
- 体温は平熱で、風邪症状もみられないため、可能性は低い。
- 狭心症発作
- 狭心症発作の症状である胸痛の訴えがないため、可能性は低い。
- 閉塞性呼吸障害
- 閉塞性呼吸障害は、肺気腫、気管支喘息、慢性気管支炎などで起こる。アルツハイマー型認知症、高血圧症以外に治療を必要とする疾患は認められないことから、可能性は低い。
正解 3
- 鎮静薬の使用を検討する。
- 膀胱留置カテーテルを再度挿入する。
- 排尿記録をつけ排尿パターンを把握する。
- 排尿時刻や排尿量、尿失禁の有無などを記録し、排尿パターンを把握する。
- グループホームの職員に付き添いを依頼する。
【問題102】 Aさんは症状が改善し、退院することになった。病棟看護師がグループホームの職員と家族とに指導すべき内容として最も適切なのはどれか。
正解 2
- 「深呼吸を練習させてください」
- 深呼吸の練習は特に必要ない。
- 「足のむくみを観察してください」
- 心不全では、血液うっ滞によって浮腫がみられる。下肢の浮腫が再発する可能性があるので、継続して観察する必要がある。
- 「蛋白質の少ない食事にしてください」
- 心不全では、アルプミン合成機能低下、血清アルプミンの漏出、食事摂取量の低下などによって、低蛋白、低アルプミン血症が起こりやすい。良質な蛋白質を十分に摂取する必要がある。
- 「水分を1日1,500ml以上摂らせてください」
- 心不全では、心機能低下によって血液循環が悪化し、体内に水分が貯留するため、水分の制限が必要である。
次の文を読み103〜105の問いに答えよ。
Aさん(99歳、女性)は、特別養護老人ホームに入所している。脳卒中の後遺症で左片麻痺がある。肺炎をきっかけに寝たきりになり、食事摂取量が低下した。Aさんは「私はここで最期を迎えたい。痛い思いはしたくない。死ぬときは苦しまないようにしてもらいたい」と何度も話すようになった。娘夫婦と孫とが頻繁に面会に来ている。医師が家族に回復の見込みが低いことを伝え、家族は特別養護老人ホームでの看取りに同意した。
【問題103】 Aさんは「1人で死ぬのは寂しい」と看護師に話した。看護師の対応で最も適切なのはどれか。
正解 3
- 「死ぬときは苦しくないようですよ」
- 「Aさんは十分頑張ってきましたね」
- 「できるだけAさんのそばにいますよ」
- 「1人で死ぬのは寂しい」と話す患者への言葉かけとして適切である。
- 「そんなことを言うとご家族が心配しますよ」
【問題104】 Aさんはほとんど食事を摂らなくなり、尿量も減少してきた。自発的な動きが減少し、傾眠状態となった。Aさんの家族への看護師の対応で最も適切なのはどれか。
正解 4
- 「状態が不安定なのでケアは職員で行いますね」
- 「これからはご家族が目を離さないでくださいね」
- 「刺激せず、なるべくそっとしておいてくださいね」
- 「これからの経過について説明しますね」
- 食事を摂らなくなり、尿量や自発的な動きが減少し、傾眠状態となっていることから終末期であると考えられる。患者の状態や今後の経過について説明し、家族が患者の死を受容できるよう援助する。
正解 1
- 見守る。
- 下顎呼吸が出現しており、死期が迫っている。これ以上の処置はせず、静かに見守ることが最も適切である。
- 下肢を挙上する。
- 酸素吸入をする。
- 気管内吸引をする。