第97回看護師国家試験一般問題・状況設定問題解説(午後問題40〜66)

次の文を読み40〜42の問いに答えよ。
 55歳の男性。会社員。自家用車で通勤し、仕事ではパーソナルコンピュータを常時使用している。突然、左眼の視野欠損を生じ、眼科を受診した。診察の結果、左眼裂孔原性網膜剥離のため手術が必要であり、3日後に入院するよう説明された。

【問題40】 入院までの生活指導で適切なのはどれか。

正解 2

  1. 車の運転は問題ない。
  2. 転倒しないよう階段はゆっくり昇降する。
  3. 仕事は通常どおり行ってよい。
  4. 右側は見えにくいので注意する。

【問題41】 予定どおり入院し、翌日に手術が行われた。手術後は患部の安静のため、うつむき体位がとられた。患者は「頸部に痛みがあり、どうしたらよいか」と苦痛を訴えた。対応で最も適切なのはどれか。

正解 4

  1. 鎮痛薬を使用する。
  2. 2時間ごとに体位を変換する。
  3. 頸部をネックカラーで固定する。
  4. 安楽枕で腰部と頸部の負担を軽減する。

【問題42】 手術後10日に軽快退院することなった。退院前の説明で適切なのはどれか。

正解 4

  1. 「再発の危険はありません」
  2. 「夜はうつぶせで休みましょう」
  3. 「日中はサングラスが必要です」
  4. 「眼帯を装着する必要はありません」

次の文を読み43〜45の問いに答えよ。
 45歳の女性。2か月前から咳嗽と喀痰とが出現した。最近、倦怠感も強くなったため受診した。胸部エックス線写真で左肺上葉に異常陰影を認め、精査と治療とを目的に入院した。

【問題43】 経気管支肺生検(TBLB)が予定された。肺生検前の説明で適切なのはどれか。

正解 3

  1. 「検査前日の夜9時以降は飲水できません」
  2. 「気管支鏡を入れるときには息を止めてください」
  3. 「苦しいときは手を挙げて合図してください」
  4. 「検査後には積極的に咳をして痰を出してください」

【問題44】 検査の結果、左肺上葉の腺癌と診断され、開胸左肺上葉切除術が予定された。術前肺機能検査結果は%肺活量70%、1秒率85%であった。手術前の呼吸練習で適切なのはどれか。

正解 4

  1. 短速呼吸
  2. 胸式呼吸
  3. 口すぼめ呼吸
  4. 間欠的陽圧呼吸(IPPB)

【問題45】 左肺上葉切除術後2日目、右肺下葉で呼吸音が聴取されない。体温37.4℃。呼吸は浅表性で25/分、血圧164/96mmHg。鼻カニューレで3l/分の酸素吸入を行い、経皮的動脈血酸素飽和度86%。胸腔ドレーンは−10cmH2Oで低圧持続吸引している。痰がからんでいるため喀出を促したが「痛くてそれどころではない」と顔をしかめた。対応で最も適切なのはどれか。

正解 3

  1. 酸素投与量を増やす。
  2. 去痰薬の吸入を行う。
  3. 気管支鏡による気管内吸引の準備をする。
  4. 胸腔ドレーン吸引圧を上げる。

次の文を読み46〜48の問いに答えよ。
 63歳の男性。妻と2人暮らし。肝機能異常を指摘されていたが、自覚症状がなく積極的な治療を受けていなかった。最近、倦怠感があり受診したところ肝機能データが悪化しており、腹腔鏡検査と肝生検のため入院することになった。慢性心房細動のためにβ遮断薬、血栓予防のために低用量アスピリンを内服している。

【問題46】 腹腔鏡検査についての説明で正しいのはどれか。

正解 1

  1. アスピリンの内服を中止する。
  2. 検査当日の朝は流動食を摂取する。
  3. 気管挿菅し全身麻酔下で行う。
  4. 穿刺針から生理食塩水を注入して腹部を膨らませる。

【問題47】 精査の結果、肝硬変と食道静脈瘤が認められ、内視鏡的硬化塞栓療法が必要となった。医師から説明を受けた患者は「病気が悪くなっているようだ。これから必要な治療についてたくさん話されてもついていけない。何のためにこの治療が必要なのかもう一度教えてください」と看護師に尋ねた。 内視鏡的硬化塞栓療法の目的で正しいのはどれか。

正解 3

  1. 腹水貯留の予防
  2. 食道狭窄部の拡張
  3. 食道静脈瘤の出血予防
  4. 肝硬変部への薬剤の注入

【問題48】 内視鏡的硬化塞栓療法が実施され帰室した。悪心と前胸部痛はなくバイタルサインは安定している。 帰室後24時間の対応で適切なのはどれか。

正解 1

  1. 終了直後から粘膜保護薬を内服する。
  2. 安静度の制限はない。
  3. 経鼻胃管から処置部に抗菌薬を注入する。
  4. 翌朝から常食を開始する。

次の文を読み49〜51の問いに答えよ。
 34歳の男性。運送会社で配達を担当している。6か月前の職場の健康診断で、血圧142/90mmHg、尿蛋白(2+)、尿潜血(2+)を指摘されたが放置していた。1週前、風邪症状の後に紅茶色の尿がみられたため内科を受診した。血清IgAが高値のため精査が必要となり入院した。

【問題49】 経皮的腎生検を行うことになった。説明で適切なのはどれか。

正解 4

  1. 「左右交互に横向きになって両方の腎臓に針を刺します」
  2. 「針を刺すときは深呼吸を繰り返してください」
  3. 「検査2時間後に止血が確認できたら歩いてかまいません」
  4. 「検査後2週間は重い物を運ぶ仕事は控えてください」

【問題50】 検査の結果、IgA腎症と診断され昼間だけの勤務に変更した。塩分1日7g以下の食事制限と3か月ごとの定期受診が指示された。塩辛いものが好物で外食の多い患者は「塩気がなくて食べた気がしない」と減塩食に物足りなさを感じている。対応で適切なのはどれか。

正解 1

  1. 「酸味や香味を利用するとよいでしょう」
  2. 「各食事で均等に食塩を摂取しましょう」
  3. 「市販のレトルト食品は塩分が少ないので活用するとよいです」
  4. 「料理は人肌程度の温度にすると塩味をよく感じることができます」

【問題51】 仕事が忙しくなり、退院後は一度も受診をせずに2年が経過した。2か月前から疲れやすくなったが、仕事のせいだと思い放置していた。1週前から息切れ、食欲不振および浮腫が出現し、昨日から眠気と嘔気および嘔吐とがあり外来を受診した。体温36.5℃。脈拍数98/分。血圧238/112mmHg。血液検査で尿素窒素100mg/dl、クレアチニン12.0mg/dl、Hb7.1g/dl。胸部エックス線写真で心拡大と肺うっ血とが認められ入院した。直ちに行われるのはどれか。

正解 2

  1. 輸血
  2. 血液透析
  3. 利尿薬の内服
  4. 胸腔ドレナージ

次の文を読み52〜54の問いに答えよ。
 58歳の男性。会社役員。妻と子どもとの3人暮らし。出勤途中の電車内で意識消失し、けいれん発作を起こして搬送された。検査の結果、脳腫瘍の疑いで入院した。

【問題52】 入院後、頭痛と嘔吐があり、頭蓋内圧亢進症状が認められた。起こりやすいのはどれか。

正解 1

  1. 徐脈
  2. 体温低下
  3. 血圧低下
  4. 呼吸数増加

【問題53】 精査の結果、神経膠腫と診断された。腫瘍摘出術後、放射線療法が開始された。照射部位周辺の発赤がみられ「頭が痛痒い」と訴えている。頭部の皮膚のケアで適切なのはどれか。

正解 2

  1. 冷湿布剤を貼用する。
  2. ぬるま湯で洗い流す。
  3. アルコール清拭をする。
  4. ガーゼで保護してテープ固定する。

【問題54】 半年後、残存腫瘍の増大により意識レベルが低下し、うとうとしていることが多くなった。医師から妻に、余命2、3週と説明された。妻は毎日面会に来ている。看護師に「話しかけても答えないし、何もしてあげられないのがつらい」と涙ぐんで話した。看護師の対応で最も適切なのはどれか。

正解 2

  1. 「面会は毎日でなくてもいいですよ」
  2. 「そばにいてあげるだけでもいいんですよ」
  3. 「お世話はすべて看護師がさせていただきますよ」
  4. 「今の状態ではあまり声をかけないほうがいいですね」

次の文を読み55〜57の問いに答えよ。
 76歳の男性。1人暮らし。妻とは死別し1人娘は結婚して遠方に住んでいる。高血圧症と糖尿病の既往がある。3週前から全身倦怠感と咳嗽とが出現し、受診の結果、肺炎と診断されて2週前に入院した。抗菌薬の投与によって症状は改善したが、血糖値が安定しないため退院が延期となった。そのころから看護師に繰り返し何度も同じことを言ったり、会話中に突然怒り出したりする言動がみられた。

【問題55】 最近は、入院していることがわからず院内をうろうろしたり、毎日カレンダーを見ているが月日や曜日がわからない。この状況から最も考えられるのはどれか。

正解 4

  1. 難聴
  2. 躁状態
  3. 構音障害
  4. 見当識障害

【問題56】 入院後、初めて入浴することになり、看護師がその旨を伝えると「やっと風呂に入れる。うれしい」と話していた。しかし、実際入る時になると「そんなのは聞いていない。自分にも都合があるので入らない」と拒否する。この時の対応で適切なのはどれか。

正解 4

  1. 入浴を中止する。
  2. 入浴準備を始める。
  3. 手を引いて浴室に誘導する。
  4. 時間をおいて再度声をかける。

【問題57】 空腹時血糖は130mg/dl前後で推移したため退院が可能となった。本人は自宅に帰りたいと話している。病棟での生活は看護師の見守りや促しによって1人で行えているが、食事制限が守れず売店で購入したお菓子を食べている。看護師が声をかけると「間食はしていない。誰か別な人と間違えている」と怒ってしまう。退院に向けた初期の対応で最も優先されるのはどれか。

正解 3

  1. 娘に連絡し同居を勧める。
  2. 本人への食事指導を計画する。
  3. 娘が行える支援の内容を確認する。
  4. ソーシャルワーカーに入所施設の紹介を依頼する。

次の文を読み58〜60の問いに答えよ。
 80歳の男性。78歳の妻と2人暮らし。共働きの長男夫婦が隣町に在住している。妻は軽度の認知症であるが日常生活は自立している。男性は1日30分程度の妻との散歩を日課にしている。商店街で買い物の途中、急いで帰宅しようとして急に胸が締めつけられるような痛みと冷汗とが出現し失神した。病院に搬送され急性心筋梗塞と診断された。

【問題58】 搬送時の意識は清明。緊急に経皮的冠状動脈形成術(PTCA)を受けることになり、駆けつけた長男とともに医師から治療の説明を受けた。緊急手術に向けた援助で適切なのはどれか。

正解 3

  1. 水分摂取を促す。
  2. トイレに誘導する。
  3. 手術への理解を確認する。
  4. シャワー浴を介助する。

【問題59】 手術後CCUに入室した。穿刺部の固定部位や点滴静脈内注射の輸液チューブを見ながら触っている。「ここはうるさいから家に帰る」と興奮し起きあがろうとしている。長男が面会に来ても誰なのか理解できない様子である。対応で最も適切なのはどれか。

正解 3

  1. 家族の面会を制限する。
  2. 医療機器のアラームを切る。
  3. 手を握りながらそばに寄り添う。
  4. カーテンを閉めて部屋を暗くする。

【問題60】 手術翌日、一般病棟へ転棟した。高血圧を指摘されたが経過は良好なため、手術後2週で退院が決定した。「病気の母さんが待っているから早く元気になりたい」と病室内を歩いている。退院指導で適切なのはどれか。

正解 2

  1. 「水分を控えましょう」
  2. 「散歩する時はゆっくり歩きましょう」
  3. 「階段の上り下りの訓練をしましょう」
  4. 「血圧の薬は体調によって調整しましょう」

次の文を読み61〜63の問いに答えよ。
 Aさん、68歳の女性。71歳の夫と長男夫婦、95歳の寝たきりの義母の5人暮らし。3か月前に脳出血を発症し、入院治療を経て自宅に退院した。嚥下障害のため胃瘻を造設し、頻回に口腔内吸引が必要である。排泄はおむつを使用している。Aさんの介護認定は申請中で、介護は主に夫が行う予定である。要介護5の義母の介護は長男の妻が行い、週1回の訪問看護と入浴サービスを利用している。

【問題61】 義母への訪問の際、夫から「介護する家族が増えてしまったのでどうしたらよいのだろうか」と看護師に相談があった。家族の介護力を評価するための情報で最も重要なのはどれか。

正解 4

  1. 夫婦の関係性
  2. 義母の健康状態
  3. 長男の介護意欲
  4. 夫と長男の妻の健康状態

【問題62】 几帳面な夫は介護状況を細かく記録し、疑問点を長男の妻に繰り返し尋ねている。看護師が訪問すると長男の妻は「お義父さんが張り切りすぎて心配」と話し、夫は「嫁は大雑把な性格で取り合ってくれない」と言う。夫に対する対応で最も適切なのはどれか。

正解 2

  1. 「息子さんに注意してもらいましょう」
  2. 「介護を頑張りすぎていないか心配です」
  3. 「お嫁さんは忙しいのでいろいろ聞くのはやめましょう」
  4. 「介護記録は大変でしょうから書かなくてよいですよ」

【問題63】 その後、夫は介護に慣れてきたが、疲労を感じ始めている。長男の妻も家事と義母の介護で疲労が目立つようになった。訪問看護師は夫から「妻の介護で自分も疲れてきたが、嫁も体調が良くないようで心配だ。うちは二人も介護しているので大変だ。他に利用できるサービスはないか」と相談を受けた。利用を勧めるサービスで優先度が高いのはどれか。

正解 3

  1. 住宅改修
  2. 配食サービス
  3. 義母のショートステイ利用
  4. Aさんへの電動車椅子の貸与

次の文を読み64〜66の問いに答えよ。
 1歳の男児。4日前から鼻汁、咳および発熱が続いている。本日、コプリック斑が認められ発疹も出現したため麻疹と診断された。児は細気管支炎を併発しており、付き添い入院した。1歳6か月のいとこが近所に住んでおり1週前に児と遊んだが、現在は無症状である。

【問題64】 入院時、母親への説明で適切なのはどれか。

正解 4

  1. 面会は解熱するまで制限する。
  2. 発疹が消失するまで清拭は控える。
  3. 含嗽して口腔粘膜を保清する。
  4. 個室に入室する。

【問題65】 児の母親は「私が早く病院に連れてこなかったから、子どもの病気を悪くしてしまったんです」と泣きながら看護師に話した。対応で最も適切なのはどれか。

正解 4

  1. 「自宅で体を休めてください」
  2. 「お父さんと話してください」
  3. 「どうして受診が遅れたのですか」
  4. 「お母さんのせいではありませんよ」

【問題66】 「うちの子と遊んだいとこは、麻疹の予防接種をしていないのですが、大丈夫でしょうか」と児の母親から相談を受けた。いとこの状況についてのアセスメントで最も適切なのはどれか。

正解 1

  1. 潜伏期にあたるので経過観察が必要である。
  2. 直ちに麻疹ワクチンの接種が必要である。
  3. ガンマグロブリンの筋肉注射が必要である。
  4. 現在発症していないので感染していないと考えられる。

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