第99回看護師国家試験一般問題・状況設定問題解説(午前問題106〜120)
次の文を読み106〜108の問いに答えよ。
85歳の女性。数年前に白内障と診断された。視力障害が強くなり転倒や衝突が多くなったため、片眼(右眼)の手術予定で入院した。軽度認知症で短期記憶障害がある。
正解 2,3
- 眼痛
- 結膜炎や角膜潰瘍、葡萄膜炎などで起こる。
- 霧視
- 霧視は、霧がかかったように見える症状であり、白内障で出現しやすい。
- 羞明
- 羞明は、水晶体の混濁により光が異常にまぶしく感じる症状で、白内障で出現しやすい。
- 飛蚊症
- 網膜剥離や硝子体出血、硝子体混濁などで起こる。
- 周辺視野欠損
- 網膜剥離や緑内障などで起こる。
【問題107】 超音波乳化吸引術・眼内レンズ挿入術の術後1日。仰臥位で右目に抗菌薬の点眼をしようとすると、その度に「何をするのよ、怖い」と叫び、払いのける。点眼時の対応で最も適切なのはどれか。
正解 1
- 「何が怖いか教えてください」
- 何が怖いのか、患者の心理を理解することが大切である。
- 「目薬が嫌でしたらやめましょう」
- 感染を予防するためにも抗菌薬の点眼は必要であり、やめるわけにはいかない。
- 「部屋を暗くして休んでから目薬をしますね」
- 患者は軽度認知症であり、見当識障害を起こさないためにも昼夜の生活リズムは一定にする必要がある。部屋を暗くして休ませるのは適切でない。
- 「体の向きを横にして目薬を入れましょうか」
- 点眼は仰臥位もしくは坐位で行う。
【問題108】 順調に経過し、術後3日で退院することとなった。退院時の家族への説明で適切なのはどれか。
正解 1
- 便秘予防に努める。
- 排便時の力みで眼圧が上昇することがあるので、便秘の予防が必要である。
- なるべく自分で点眼する。
- 患者は短期記憶障害があるので、指示通りに点眼できるとは限らない。家族の協力が必要である。
- 退院翌日からシャワーで洗髪できる。
- 眼に水が入ると感染する可能性があるので、シャワー・入浴に関しての指導は必要である。シャワーが許可される時期は施設によって異なる。(手術翌日から許可される場合もある)
- 視力が改善したので転倒の危険性は少ない。
- 患者は高齢である。視力が改善しても転倒の危険性はある。
次の文を読み109〜111の問いに答えよ。
4歳の男児。5日前から咳嗽と鼻汁とが出現し、食事摂取量が減っていた。本日、起床時から機嫌が悪く38.9℃の発熱がみられた。水分を与えようとしたところ突然全身がガクガクするけいれんを起こしたため、救急搬入された。
【問題109】 髄膜炎が疑われた。男児にみられる可能性が高いのはどれか。2つ選べ。
正解 2,4
- 大泉門の膨隆
- 乳児期の髄膜炎では大泉門の膨隆が認められるが、大泉門は1歳半頃までに閉じる。
- 項部硬直
- 髄膜刺激症状の一つである。頭頸部を他動的に前屈させると、髄膜や神経根部が緊張し疼痛が誘発され、後頭部および項部の筋肉が反射的に緊張して抵抗が生じる。
- 眼瞼下垂
- 眼瞼下垂の原因には先天的理由と後天的理由がある。先天性のものでは眼瞼挙筋の形成不全、後天性のものには加齢、重症筋無力症、コンタクトレンズの着用などがある。
- 嘔吐
- 髄膜炎では、発熱、頭痛、嘔吐、けいれん、意識障害、項部硬直、ケルニッヒ徴候、ブルジンスキー徴候などが出現する。
- 黄疸
- 黄疸は、血液中のビリルビンが増加し、皮膚、粘膜、その他の組織が黄染された状態である。血清ビリルビン値が2〜3mg/dl以上にならないと顕性黄疸にはならない。
【問題110】 髄膜炎の確定診断のため腰椎穿刺を行うこととなった。検査の介助を行う際の対応で適切なのはどれか。
正解 3
- 男児に腹臥位になってもらう。
- 腰椎穿刺では、患者を側臥位にして膝を曲げ、頭を前屈させる。
- 「痛くないから大丈夫」と説明する。
- 「痛くない」と嘘をつくのは適切でない。
- 穿刺する前に「チクっとするよ」と声をかける。
- 嘘をつかず、痛みが伴うことをきちんと伝える。
- 穿刺時の抑制を家族に任せる。
- 家族が付き添う場合は、抑制してもらうのではなく、子どもから見える位置にいてもらう。
【問題111】 母親は来院時から動揺しており、診察室の中で「もっと早く病院に来れば良かった。ごめんね、ごめんね」と言って泣いている。母親への対応で最も適切なのはどれか。
正解 2
- けいれんを止める方法について説明する。
- 母親は動揺しており、説明を聞き入れ、理解できる状態ではない。
- 今回の受診は決して遅くはないと伝える。
- 受診が遅くはないことを伝え、母親の不安やショックを和らげるようにする。
- 子どもの前で母親が泣いてはいけないと伝える。
- 「泣いてはいけない」と言ってはいけない。子どものいない場所で母親が感情を表にできるような環境を作るようにする。
- 気持ちが落ち着くまで子どものケアへの参加は勧めない。
- 母親の心理状態や体調に配慮しつつ、子どもの側にいられるようにする。
次の文を読み112〜114の問いに答えよ。
在胎30週2日、1,580gで出生した児。出生後、NICUに搬入された。搬入時の体温36.6℃。呼吸48/分。心拍数118/分。先天的な異常は認められず、シングルウォールの保育器に収容されることとなった。
【問題112】 NICUにおけるこの児の受け入れ準備で適切なのはどれか。
正解 2
- 酸素テントを用意する。
- シングルウォールの保育器では、保育器内に酸素を投与することができるので、酸素テントは必要ない。
- 児専用の聴診器を用意する。
- 感染予防のため、児に使用する器具は個人専用とする。
- 保育器内の湿度は30%程度とする。
- 皮膚による水分調節機能が低いので、保育器内の湿度は高めに保つ。湿度は児の体重、日齢、状態によって異なる。この場合、30%は低すぎる。
- 保育器内の温度はあらかじめ30℃前後に温めておく。
- 保育器内の温度も児の体重、日齢、状態によって異なる。この場合、30℃はやや低い。
正解 1
- 「搾乳し冷凍した母乳を届けてください」
- 母乳には、免疫グロブリンなどの感染防御因子が含まれており、母乳栄養は必要である。母乳は冷凍保存することができる。
- 「お母さんが退院したら授乳しに来てください」
- 母親が親の役割を感じるためにも、早期からの母乳栄養が必要である。
- 「赤ちゃんが直接母乳を飲めるようになるまで待ってください」
- 直接飲むことが難しくても、搾乳した母乳を経管栄養で与えることはできる。
- 「低出生体重児用のミルクをあげるので母乳はあげられません」
- 特別な理由がない限り、ミルクよりも母乳を与えたほうがよい。
【問題114】 NICUではディベロップメンタルケアを中心とした看護を行うこととなった。適切なのはどれか。
正解 1
- モニター音を下げる。
- 音刺激による外的ストレスをできる限り減らす必要があり、モニター音は下げる。
- 照明を明るくしておく。
- 光刺激を減らすことも必要であり、室内の照度は落とす。
- 母親の接触は最小限にする。
- 母子の接触は重要であり、過剰な刺激を与えなければ、接触を制限する必要はない。
- 決まった時間に清潔ケアを行う。
- ルーチンではなく、児の反応に合わせたケアの提供が必要である。
次の文を読み115〜117の問いに答えよ。
生後1日の女児。在胎39週5日、正常分娩で出生した。出生時体重3,300g。今朝の観察では体重3,150g。体温37.0℃。呼吸数50/分。心拍数140/分。顔面に少量の点状出血、少量の性器出血と暗緑色の便が多量に見られる。
【問題115】 経過のアセスメントで正しいのはどれか。2つ選べ。
正解 3,5
- 出血傾向がみられる。
- 少量の点状出血だけでは、出血傾向とはいえない。
- 便はタール便である。
- 生後1、2日に排泄される暗緑色の便は、胎便である。タール便は黒色便である。
- 体温は正常範囲である。
- 新生児の正常体温は約36.5〜37.5℃であり、37.0℃は正常範囲である。
- 呼吸に異常がみられる。
- 新生児の正常な呼吸数は、約40〜50/分であり、異常はみられない。
- 体重減少は生理的範囲内である。
- 新生児の生理的体重減少は、出生後2〜4日間に出生時体重の5〜10%が減少する。
正解 1
- 「正常な範囲の黄疸ですよ」
- 生後3日で、血清総ビリルビン9mg/dlは正常範囲であり、生理的黄疸である。
- 「新生児室で経過をみましょう」
- 母子が一緒に過ごすことが大切であり、分離させる必要はない。
- 「母乳による黄疸かもしれませんね」
- 2〜3週間経過しても黄疸が消失しない場合は、母乳性黄疸の可能性がある。
- 「母乳の量が足りないかもしれませんね」
- 排泄の状況から、母乳の量は足りていると考えられる。
正解 4
- 光線療法
- 生理的黄疸なので、光線療法の必要はない。
- 身長測定
- 身長測定は退院時健診で行う。
- 抗菌薬の点眼
- 新生児では、白色の眼脂を少量認めることは稀ではない。眼瞼結膜の充血はないので、抗菌薬の点眼は必要ない。
- ビタミンKの投与
- 頭蓋内出血などを予防するため、ビタミンKを投与する。日本小児科学会では、生後3か月まで週1回の投与を推奨している。尚、旧指針では、生後1か月までに3回の投与(生後24時間以内、生後6日目、生後1か月)である。
次の文を読み118〜120の問いに答えよ。
37歳の女性。夫との2人暮らし。3年前の結婚を機に勤めていた会社を退職した。結婚当初から、夫の帰りが遅いことに寂しさを強く感じていた。寝つきが悪くなり、当初は350mlのビールを飲むことでよく眠れていたが、2年前からは1日平均720ml以上の焼酎を飲むようになった。半年前からは昼間でも飲酒をするようになり、飲みすぎて記憶がなくなることもしばしばあった。10日前から食欲不振と全身倦怠感とが著しくなり、3日前から食事やアルコールの摂取ができなくなった。
正解 1
- せん妄
- 「家の中に虫が群がっていくのが見える」ことから、アルコール精神病の一つである、せん妄の症状である。
- 躁うつ病
- 躁うつ病では、「躁状態」と「うつ状態」を繰り返す。
- 強迫性障害
- 強迫性障害は、特定の考えが頭に何度も浮かぶため。その不安を振り払う目的として何度も同じ動作を繰り返ししてしまう症状である。
- コルサコフ症候群
- コルサコフ症候群の症状には、記銘力の低下、見当識障害、健忘、作話などがある。アルコール依存症や頭部外傷、ヘルペス脳炎などでみられる。
正解 3
- 「体に問題はないから大丈夫ですよ」
- 患者の訴えを聞き入れていなく、適切でない。
- 「寝る前に温かいものを飲めば眠れますよ」
- 「かなり前からあまり眠れていない」ことから睡眠障害の可能性がある。寝る前の飲み物で改善するとは考えられず、適切でない。
- 「主治医に、お薬の相談をしてみましょう」
- 睡眠障害は、アルコール離脱症候群の一つである。患者の詳しい状態を把握した上で、主治医に処方の相談をする。
- 「朝早く起きるようにしなければいけませんね」
- 朝早く起きることで改善するとは考えられず、適切でない。
【問題120】 同日、この患者から「どうしてこのようなことになってしまったのかわかりません。これからどうすればよいのでしょう」と相談があった。対応で最も適切なのはどれか。
正解 4
- 肝機能は改善していると話す。
- 「これからどうすればよいのでしょう」という相談に対する答えになっていないので、適切でない。
- 何も心配することはないと話す。
- 1と同じく相談に対する答えになっていない。
- 適度な飲酒を心がけるように話す。
- アルコール依存症の患者に飲酒を勧めるのは不適切である。
- アルコール専門治療について説明する。
- 治療プログラムや自助グループなど、アルコール専門治療について説明することは適切である。