第99回看護師国家試験一般問題・状況設定問題解説(午後問題26〜48)
【問題26】 心拍出量が増加しているにもかかわらず心不全に至るのはどれか。
正解 4
- 高血圧
- 血圧は、心拍出量と末梢血管抵抗との積で規定されており、高血圧の初期では、心拍出量の増加によるものがある。ただし、長期的には心拍出量が正常化または低下しても高血圧が持続するような病態がある。
- 心筋梗塞
- 心筋梗塞では、心機能、心拍出量が低下し、心不全に陥る。
- 拡張型心筋症
- 拡張型心筋症では、心室の収縮不全によって心拍出量が低下し、心不全に陥る。
- 甲状腺機能亢進症
- 甲状腺機能亢進症では頻脈、心筋収縮能の亢進、循環血液量の増加、末梢血管抵抗の低下により心拍出量は増加する。心房細動などの合併により心不全に陥る。
正解 2
- 炭水化物 ――――― リパーゼ
- リパーゼは、胃液や膵液、腸液に含まれる消化酵素で、脂肪を加水分解し、脂肪酸とグリセリンを生成する。
- 蛋白質 ―――――― トリプシン
- トリプシンは、膵液に含まれる、蛋白質分解酵素の一種である。
- 脂肪 ――――――― マルターゼ
- マルターゼは、炭水化物分解酵素の一種で、マルトース(麦芽糖)を加水分解してグルコース(ブドウ糖)にする。唾液や膵液、腸液に含まれる。
- ビタミン ――――― アミノペプチダーゼ
- アミノペプチダーゼは、腸液に含まれる蛋白質分解酵素で、アミノ末端のペプチド結合を切断する。
正解 2
- 我が国では扁平上皮癌が最も多い。
- 最も発生頻度が高いのは腺癌で、女性に発生することが多い。
- 小細胞癌は抗癌薬の感受性が高い。
- 小細胞癌は、進行が極めて早く、転移しやすい悪性度の高い癌であり、発見時に既に全身に広がっていることが多い。他の肺癌と比べて、抗癌薬や放射線療法が効きやすい。
- 喫煙との関連が最も強いのは腺癌である。
- 喫煙との関連が最も強いのは、扁平上皮癌で、男性に発生することが多い。
- 喫煙指数が300以下では発生の危険性が高い。
- 喫煙指数(ブリンクマン指数)は、1日当たりの平均喫煙量(本数)と喫煙年数を掛け合わせて算出される。喫煙指数400以上で肺癌が発生しやすい状況になり、600以上は肺癌の高度危険群といわれる。また、1200以上では喉頭癌の危険性が極めて高くなるといわれる。
正解 1
- 膠原病の中で最も高い頻度の疾患である。
- 関節リウマチは、膠原病の中で最も頻度が高い。
- 夕方の関節の痛みとこわばりが特徴的である。
- 朝の関節の痛みとこわばりが特徴である。
- 関節炎が3か所以上に多発することはまれである。
- 関節炎は3か所以上に多発し、左右対称にみられる。
- 関節リウマチに癌を合併したものが悪性関節リウマチである。
- 悪性関節リウマチは、血管炎症状の強い関節リウマチであり、癌を合併したものではない。
正解 4
中心性肥満とは、顔面や体幹部に 脂肪がたまり太っているが、四肢は逆に細くなっている状態である。
- 褐色細胞腫
- 褐色細胞腫は、副腎髄質からカテコールアミンが過剰に分泌され、高血圧、頭痛、動悸、発汗、体重減少などがみられる。
- 1型糖尿病
- 1型糖尿病の主な症状は、のどの渇き、多尿、体重減少である。
- 甲状腺機能亢進症
- 甲状腺機能亢進症の症状には、甲状腺腫、眼球突出、動悸、多汗、体重減少などがある。
- クッシング症候群
- クッシング症候群は、コルチゾールの分泌過剰によって起こる。症状には、中心性肥満、満月様顔貌、高血圧、月経異常、皮膚萎縮、皮膚線条、多毛、骨粗鬆症、糖尿病、易感染性などがある。
【問題31】 法律と交付される手帳の組合せで正しいのはどれか。
正解 4
- 障害者自立支援法 ――――――――――――― 療育手帳
- 療育手帳は、知的障害者福祉法で定める知的障害者に対し各都道府県もしくは政令指定都市が発行を行う。ただし、知的障害者福祉法に療育手帳の規定はなく、様式や判定は各自治体で異なる。
- 母子及び寡婦福祉法 ―――――――――――― 母子健康手帳
- 母子健康手帳については、母子保健法に規定されている。母子健康手帳は、妊娠の届け出をした市町村から交付され、健康診査、保健指導、予防接種等に関しての記録が記載される。
- 生活保護法 ―――――――――――――――― 身体障害者手帳
- 身体障害者手帳については、身体障害者福祉法に規定されている。身体障害者に対し都道府県知事より交付される。
- 精神保健及び精神障害者福祉に関する法律 ―― 精神障害者保健福祉手帳
- 精神障害者保健福祉手帳については、精神保健及び精神障害者福祉に関する法律に規定されている。精神障害者に対し都道府県知事より交付される。
【問題32】 新障害者基本計画で新たに強調されているのはどれか。
正解 2
- 地域基盤
- 共生社会
- 新障害者基本計画では、これまでのリハビリテーション及びノーマライゼーションという理念に加えて、共生社会の実現を目指している。
- 国際協力
- リハビリテーション
正解 3
- 小学1年生ではツベルクリン反応検査が行われる。
- 結核予防法の改正に伴い、平成17年4月よりツベルクリン反応検査は廃止された。
- インフルエンザに使用されるのは生ワクチンである。
- 生きた細菌や毒性を弱めたウイルスを使用したものを生ワクチン、細菌やウイルスを殺し毒性をなくして作ったものを不活化ワクチンという。生ワクチンには、経口生ポリオワクチン、BCG、麻疹・風疹混合ワクチンなどがあり、不活化ワクチンには、ジフテリア・百日せき・破傷風混合ワクチン、インフルエンザワクチン、日本脳炎ワクチン、A型肝炎ワクチン、B型肝炎ワクチンなどがある。
- 麻疹および風疹の予防接種には混合ワクチンが含まれる。
- 麻疹・風疹混合ワクチンは、予防接種法により第1期(満1歳〜2歳未満)、第2期(就学前の1年間)の2回の定期接種とされている。
- ポリオ(急性灰白髄炎)の予防接種は皮下注射で行われる。
- 2012年9月1日よりポリオの予防接種は、従来の生ポリオワクチン経口投与から、不活化ポリオワクチン(皮下注射)に切り替わっている。
正解 4
- 在宅当番医制 ―――― 二次救急
- 在宅当番医制は、地域の病院や診療所の医師が当番を決めて夜間や休日の患者に対応する、初期救急体制である。
- 病院群輪番制度 ―――― 三次救急
- 病院群輪番制は、夜間・休日の救急患者受け入れを、地域の医療機関によって当番制で実施する、二次救急体制である。
- 救命救急センター ―――― 二次救急
- 救命救急センターは、二次救急で対応できない重篤な救急患者に高度な医療を提供する、三次救急医療機関である。
- 休日夜間急患センター ―――― 初期救急
- 休日夜間急患センターとは、区市町村が設置主体となり、休日や夜間の患者に対応する、初期救急医療機関である。
正解 4
- 地域や文化の影響を受けない。
- 健康は地域や文化の影響を受ける。
- 時代を超えて普遍的なものである。
- 健康は時代とともに移り変わっていく。
- 健康と疾病との関係は不連続である。
- 健康と疾病は連続体と考えられている。
- 障害を持っていてもその人なりの健康がある。
- WHO の健康の定義は、「完全な肉体的、精神的及び社会的福祉の状態であり、単に疾病又は病弱の存在しないことではない」である。障害の有無は、健康かどうかを判断する指標にはならない。
【問題36】 クリティカルシンキングで適切でないのはどれか。
正解 2
クリティカルシンキングとは、与えられた情報を鵜呑みにせず、複数の視点から注意深く、論理的かつ構造的に考えることである。
- 看護過程のどの段階においても有効である。
- クリティカルシンキングは、看護過程のどの段階においても有効である。
- 物事を否定的にみる思考過程である。
- クリティカルシンキングは批判的思考とも呼ばれるが、ここでの「批判的」とは、情報を分析したり、見分けるという意味である。
- 問題解決的アプローチを可能にする。
- 情報を集め客観的に分析することで、物事の本質を理解でき、問題解決につなげることができる。
- 看護研究に応用できる。
- 看護研究においては、当て推量の思考や未熟な経験則のみで物事を見るのではなく、科学的根拠を持った判断、意図的かつ系統的、問題志向的な思考が必要であり、クリティカルシンキングは重要である。
【問題37】 身体の計測値とその評価目的の組合せで正しいのはどれか。
正解 2
- 身長 ―――― 脳の発育
- 身長は、体重とともに栄養状態を評価する指標となる。
- 体重 ―――― 栄養の状態
- 体重は栄養状態を評価する指標となる。
- 腹囲 ―――― 内臓の発達
- 腹囲は内臓脂肪型肥満の評価として用いられる。
- 座高 ―――― 筋肉の機能
- 以前は内臓の発達の評価として用いられていたが、現在では、机や椅子の高さを調節するために測っている。
正解 4
- 患者の安全の確保
- 事故発生時には、患者の安全確保が最優先である。
- 事故に関わる物品の保全
- 事故の原因を検証するためにも、事故に関わった物品の保全は必要である。また、物的証拠にもなり得る。
- 発生状況の記録
- 事故の状況を振り返るためにも、発生状況の記録は必要である。また、物的証拠にもなり得る。
- 発生部署内での解決
- 発生部署内、院内で情報を共有し対策を検討すること、医療安全管理委員会や保健所等行政機関への報告が必要となる。
正解 2
脂質異常症の診断基準は、LDLコレステロール140mg/dl以上、HDLコレステロール40mg/dl未満、中性脂肪150mg/dl以上である。
- 飲酒の禁止
- 過剰なアルコール摂取は、LDLコレステロール増加につながるが、ビール350ml/日は過剰摂取とはいえないので、禁止する必要はない。
- 食物繊維摂取の推奨
- 果物や野菜、豆類に含まれるペクチンやこんにゃくに含まれるグルコマンナン、海藻類に含まれるアルギン酸などの水溶性食物繊維には、コレステロールの排泄を促し、脂肪の吸収を抑制する働きがある。
- 動物性脂肪摂取の推奨
- 動物性脂肪の過剰摂取は、LDLコレステロールや中性脂肪の増加につながる。摂取の制限が必要である。
- 植物性蛋白質摂取の制限
- 植物性蛋白質はコレステロールを減少させる。摂取の推奨が必要である。
正解 1
- 尿比重が1.025である。
- 尿比重の正常値は 1.010〜1.030であり、1.025は正常である。
- 排尿直後は無色である。
- 正常な尿の色は淡黄色である。
- 1日尿量は400mlである。
- 成人の1日の尿量は1,500ml程度(1,000〜2,000ml)である。1日尿量が400mL以下の場合は乏尿である。
- 排尿直後にアンモニア臭がある。
- アンモニア臭は、尿素が空気に触れてアンモニアに分解することによって発生する。排尿直後は、アンモニア臭はない。
【問題41】 開胸手術後の胸腔ドレナージの管理で正しいのはどれか。
正解 1
- 水封室には滅菌精製水を入れる。
- 水封室は患者の胸腔内と直接繋がっているので、滅菌精製水を入れる。
- 吸引圧は20cmH2O以上とする。
- 吸引圧は-10〜-15cmH2Oに設定する。
- 水封室水面が動かないことを確認する。
- 水封室の呼吸性移動を確認する必要がある。
- 排液ボトル内の水面はチューブ挿入部と同じ高さに保つ。
- 排液ボトルは、チューブ挿入部より低い位置とする。
【問題42】 一定レベルの血中濃度が最も長時間持続するのはどれか。
正解 4
- 坐薬
- 舌下錠
- 吸入薬
- 全身用経皮吸収剤
- 薬剤によって持続時間は異なるが、一般的に、選択肢の中では全身用経皮吸収剤の持続効果が最も高い。皮膚からの吸収により、長時間にわたり安定した血中濃度を維持できる。
【問題43】 前脛骨動脈の外出血に対する用手間接圧迫法の止血点で適切なのはどれか。
正解 4
- 足背動脈
- 外踝動脈
- 後頸骨動脈
- 大腿動脈
- 間接圧迫法の止血点は、出血部位より中枢側で行う。大腿動脈は、出血点の前脛骨動脈より心臓に近い部位の動脈である。
【問題44】 測定中に波形が変わった心電図を示す。考えられるのはどれか。
正解 2
- 心臓ペースメーカーの作動不全
- ペースメーカーの作動不全には、ペーシングパルスは出ているもののQRS波形が続かないもの(ペーシング不全)や、ペーシングパルスそのものが発生しないもの(センシング不全)などがある。
- 交流波の混入
- 交流波の混入は、アーチファクトともいう。アーチファクトとは、心電図に混入する心電図以外の現象をいい、筋電図や、皮膚と電極綿の接触抵抗の変化によって生まれる基線の動揺などがある。
- 体位変換
- 体位変換をすると、心臓の位置が変化するので電極からみている位置が変わり、波形も変化する。仰臥位から左側臥位に変換させると、R波、T波ともに高くなる傾向がある。
- 心房細動
- 心房細動では、P波はみられず、R-R間隔は不規則となる。
【問題45】 自力で動けない人の他動運動の目的で適切なのはどれか。
正解 3
- 心筋酸素消費量の抑制
- 他動運動により心筋酸素消費量は増える。
- 消化管運動の抑制
- 他動運動により組織への血液循環が促進され、一時的に消化管運動は抑制されるが、それを目的とはしていない。
- 関節の拘縮予防
- 他動運動の目的は、関節の拘縮予防である。
- 肥満の予防
- 他動運動によって肥満を予防することは困難である。
【問題46】 胃癌で在宅中心静脈栄養法〈HPN〉が必要な70歳の男性。ADLは自立している。妻との2人暮らし。患者の退院調整を始めることを計画している。HPN開始に際し優先度の高い情報はどれか。
正解 4
- 自宅環境
- 自宅環境については、HPN開始に際して優先度の高い情報ではない。
- 在宅での必要物品
- 在宅での必要物品は、HPN開始に際して優先度の高い情報ではない。
- 退院後の緊急連絡先
- 退院後の緊急連絡先は、必要な情報ではあるが、HPN開始に際して優先度の高い情報ではない。
- 患者・家族の実施能力
- HPNは、感染予防が大事であり、患者や家族の実施能力が重要である。
【問題47】 脳梗塞の後遺症で左片麻痺と嚥下障害のある患者。家族への食事介助の指導で適切なのはどれか。
正解 1
- 嚥下食に寒天は用いない。
- 嚥下食には、舌でつぶすことができ、のどの通りもよいゼラチンが適している。寒天は咽頭の通過が困難なため、嚥下食には用いない。
- 食塊は左側の口腔内へ入れる。
- 食塊は健側の口腔内へ入れる。
- 嚥下の際にむせがなければ誤嚥はない。
- むせがなくても咽頭反射が低下しているので、誤嚥は起こる。
- ベッドの頭側挙上の角度は20度とする。
- 90度座位での食事が奨められるが、脳梗塞嚥下障害患者では難しい。嚥下訓練開始時の体位としては、30度仰臥位・頸部前屈が奨められる。
【問題48】 成人女性の普通歩行(分速60〜70m程度)20分程度と同等の身体活動量はどれか。
正解 4
厚生労働省は、「健康づくりのための運動指針2006」において、身体活動の強度を表す単位としてメッツ(METs)、身体活動の量を表す単位としてエクササイズ(Ex)を用いている。エクササイズはメッツ×時間で表される。普通歩行は3.0メッツなので、普通歩行20分は、3.0メッツ×1/3時間で1エクササイズである。
- ストレッチングを10分
- ストレッチングは2.5メッツである。ストレッチング10分は、2.5メッツ×1/6時間で、約0.42エクササイズである。
- アイロンがけを15分
- アイロンがけは2.3メッツである。アイロンがけ15分は、2.3メッツ×1/4時間で、0.575エクササイズである。
- ジョギングを15分
- 軽いジョギングは6.0メッツである。ジョギング15分は、6.0メッツ×1/4時間で、1.5エクササイズである。
- 屋内の掃除を20分
- 屋内の掃除は3.0メッツである。屋内の掃除20分は、3.0メッツ×1/3時間で、1エクササイズである。