第99回看護師国家試験一般問題・状況設定問題解説(午後問題91〜105)
次の文を読み91〜93の問いに答えよ。
39歳の女性。専業主婦。会社員である夫と16歳の長男との3人暮らし。子宮頸癌(ステージIV)で化学療法を繰り返してきたが、効果がなく疼痛コントロール目的で入院となった。本人は治療しないなら家に帰ることを強く希望している。臥床している時間が多いが、排泄はベッドサイドのポータブルトイレを自力で利用可能である。
正解 1
- 家族の介護力
- 自宅での療養では、家族の介護力が重要となる。会社員の夫と16歳の長男という家庭環境で、どのような援助を行おうとし、またそれが可能であるかを確認する必要がある。
- 化学療法の内容
- 化学療法は効果がなく、すでに適応外である。
- 介護保険申請の有無
- 患者は39歳で、介護保険の対象外である。
- かかりつけ医の有無
- かかりつけ医の有無の確認は重要であるが、最優先ではない。
正解 1
- 患者の主観的な訴えを尊重する。
- 患者の訴えを尊重することが最も重要である。
- フェンタニル貼付剤の交換は訪問看護師が行う。
- 夫に交換方法を指導し、適切に行えているか確認する必要がある。
- 痛みの評価は直接主治医に伝えるよう説明する。
- 痛みの評価は訪問看護師が行い、訪問看護師から主治医に伝える。
- 臨時追加薬はなるべく使わず我慢するよう説明する。
- 疼痛を緩和することが大切であり、必要であれば臨時追加薬を使用する。
【問題93】 終末期が近づき医師から家族に病状が説明された。夫から「家で看取ってあげたいが、今後どうしたらいいかわからない」と相談があった。夫への対応で適切なのはどれか。2つ選べ。
正解 3,5
- 臨死期は救急車を呼ぶよう説明する。
- 臨死期の対応は家族で決定する。夫は家で看取りたいと言っており、救急車を呼ぶよう説明することは適切でない。
- 長男への病状の説明は説明は控えるよう話す。
- 家族で協力するためにも、また、予期的悲嘆を体験するためにも、病状は伝えるべきである。
- 家族にできるケアを行っていくことを勧める。
- 家族にしかできないケアがある。たとえ何もできなくても、ただそばに寄り添うだけでも良いと伝える。
- 妻と死について話すのは控えるように伝える。
- お互いが今の感情を話せる場を設け、最後の時間を悔いなく過ごせるように支援する。
- 死に至るまでの予想される妻の様子を夫に伝えておく。
- 今後予想される事柄を丁寧に伝えることで、心の準備ができる。
次の文を読み94〜96の問いに答えよ。
42歳の男性。会社員。2年前から単身赴任で働いている。朝食は食べず、昼食は社員食堂、夕食は惣菜や弁当を購入し自宅で食べている。週に1度は同僚と外食する。自宅での夕食時には焼酎をロックで2、3杯、就寝前にはウィスキーをロックで2杯程度飲む習慣がある。
正解 3
- カルシウム
- 遊離脂肪酸がつくられ、血中のカルシウムイオンと結合する結果、低カルシウム血症を起こすことがある。
- アルブミン
- 血管の透過性が亢進し、循環血漿量が減少するため、アルブミンは低値を示す。
- アミラーゼ
- 急性膵炎では、血清アミラーゼ、尿アミラーゼの増加がみられる。
- α‐フェトプロテイン
- α‐フェトプロテインは、妊娠早期の胎児にみられる血清蛋白の一種である。また、腫瘍マーカーとして用いられており、原発性肝細胞癌や肝炎、肝硬変で測定値が上昇する。
正解 2,3
- 温罨法の実施
- 炎症の場合、温罨法は禁忌である。疼痛緩和は、冷罨法が有効である。
- 水分出納の把握
- 急性膵炎では、絶飲食となる。また、炎症により血中から水分が抜け血液循環が悪化する。水分出納の把握が必要である。
- 腸蠕動音の聴診
- 後腹膜から波及した炎症により、麻痺性イレウスを呈することが多い。早期発見のためにも腸蠕動音の聴診が必要である。
- 仰臥位安静の保持
- 疼痛のため仰臥位の保持は困難である。前屈姿勢、側臥位など、患者が疼痛を和らげられる体位をとる。
- モルヒネによる鎮痛効果の観察
- モルヒネは、オッディ括約筋を収縮させ、膵管内圧を上昇させる恐れがある。除痛には塩酸ブプレノルフィンが用いられる。
【問題96】 入院後10日、順調に回復し、薬物療法として蛋白分解酵素阻害薬が内服処方され退院することとなった。退院後の生活指導で適切なのはどれか。
正解 1
- 低脂肪食とする。
- 脂肪は膵液の分泌を促進するので、低脂肪食とする。
- 低蛋白食とする。
- 蛋白質の補給は必要である。良質の蛋白質を摂取するようにする。
- 体調によって服薬調整をする。
- 服薬調整は、自己判断で行わない。
- 週に1度は飲酒をしない日を設ける。
- 再発や慢性膵炎への移行を避けるためにも、アルコールは禁忌である。
次の文を読み97〜99の問いに答えよ。
36歳の男性。妻と2歳の娘との3人暮らし。急性骨髄性白血病の診断で、中心静脈カテーテルが挿入され、寛解導入療法が開始された。妻は入院時に「娘が自分のそばを離れたがらず、夫の付き添いができない」と話した。
正解 2
- 妻、子どもと一緒に病院のレストランでの食事
- 白血球が著しく減少しており、感染に十分注意する必要がある。病室からの外出は控える。
- 栄養補助飲料を凍らせたシャーベット
- 高カロリー輸液が行われているので、無理に食べる必要はないが、患者が食事摂取に意欲を示している。選択肢の中では、栄養補助飲料を凍らせたシャーベットが最も適切である。
- 冷やしたイチゴ
- 感染予防のため、生ものは避ける。
- 経管栄養
- 悪心があり嘔吐の恐れがあるため、経管栄養は行わない。
【問題98】 3歳年上の兄とヒト白血球抗原(HLA)が適合したため、血縁者間骨髄移植が検討された。ドナーとなる兄への説明で適切なのはどれか。
正解 2
- 兄が免疫抑制薬を内服する。
- 移植片対宿主病を予防するため、患者が免疫抑制薬を内服する。
- 全身麻酔下で骨髄液を採取する。
- 骨髄液採取は全身麻酔で行われる。
- 骨髄液採取部位は翌日までドレーンを挿入する。
- 骨髄液採取部位へのドレーン挿入はない。
- 兄の退院の目安は患者に生着が確認されるころである。
- ドナーの入院期間は、骨髄液採取後3日程度である。
正解 4
- 被害妄想
- 被害妄想とは、他者から危害を加えられていると思い込む妄想である。
- 情動失禁
- 情動失禁とは、わずかな刺激で喜怒哀楽の感情が表れることである。
- 拘禁症状
- 拘禁症状とは、刑務所や拘置所などでの継続的な拘束によって起こる精神障害である。
- 兄への申し訳なさ
- 兄への申し訳なさが想定される。
次の文を読み100〜102の問いに答えよ。
80歳の女性。自宅で長男との2人暮らし。明け方にトイレに行こうとして廊下でつまずき転倒し、左大腿骨頸部骨折と診断され内固定術を受けた。術後は順調に経過し、杖を使った歩行が安全にできるようになり1週後の自宅退院が決定した。下肢の筋力および認知機能の低下はない。
【問題100】 再転倒予防のために確認すべき自宅の情報で優先度が高いのはどれか。
正解 3
- 延べ床面積
- 調理台の高さ
- 廊下の床の状態
- 滑りやすくないか、足をとられやすくないかなど、床の状態を確認する。
- 玄関の間口の広さ
正解 2
- 「絶対に転倒してはいけませんよ」
- 絶対にしてはいけない、という表現は適切でない。
- 「転びにくいような歩き方ができていますよ」
- 不安を軽減させ、自信をつけさせる言葉かけである。
- 「骨折は治ったのだからもう安心して大丈夫ですよ」
- 本人は再度転倒するかもしれないことに不安を感じており、言葉かけのポイントがずれている。
- 「もうお年ですからなんでも息子さんに手伝って貰いましょう」
- 息子に迷惑をかけたと感じており、適切でない。
【問題102】 同居している息子は「もう一度転倒してしまったら大変なので、母が動くのは心配だ」と話す。息子への対応で適切なのはどれか。
正解 3
- 必要なものをすべて母親の周りに置く。
- 必要なものがすべて周りにあると、動かなくなってしまい、ADLの低下につながる。
- 介護に慣れている息子がいつも歩行に付き添う。
- 息子が介護に慣れているという情報はない。また、常に付き添うことは息子の介護負担を高める。
- 安全に歩行できていることを息子に見てもらう。
- 杖歩行が上達していることを理解してもらい、息子の不安を取り除く。
- 夜間はおむつを使用して転倒誘発の機会を低減する。
- おむつの使用は本人の自尊心を傷つける。安易に使用するものではない。
次の文を読み103〜105の問いに答えよ。
88歳の男性。慢性閉塞性肺疾患(COPD)を長年患っている。他に慢性疾患の既往はなく日常生活動作はほぼ自立している。1週前から息苦しさが増強し、昨日から38.0℃の発熱があって受診した。経皮的動脈血酸素飽和度(SpO2)82%。動脈血ガス分析(room air):PaO250Torr。胸部エックス線撮影の結果、右肺上葉に陰影を認め肺炎と診断された。
【問題103】 このときの所見でみられる可能性が高いのはどれか。
正解 1
- 胸部の打診での過共鳴音
- 肺の過膨張のため、胸部の打診で過共鳴音がきかれる。
- 吸気と呼気との長さの比がほぼ2:1
- 肺の過膨張のため、呼気は長くなり、吸気量は少なく、吸気は短くなる。
- 右胸の下肺野付近の皮膚に皮下気腫
- 下肺野付近の皮下気腫はみられない。
- 胸郭の前後径と左右径との比がほぼ1:2
- ビア樽状の胸郭といわれる胸郭前後径の増大がみられる。
【問題104】 入院し、抗菌薬の点滴静脈内注射と酸素投与とが開始された。今後の発生に最も注意が必要なのはどれか。
正解 4
- 腹水
- 腹水の発生は考えにくい。
- 脱水症状
- 点滴が開始されたので、発生の可能性は低い。
- 高血糖症状
- 高血糖症状の発生は考えにくい。
- CO2ナルコーシス
- 呼吸不全での酸素投与では、CO2ナルコーシスが起こりやすい。
正解 4,5
- 嚥下訓練
- 嚥下障害の情報はない。
- 水分制限
- 脱水症の原因となるので、水分の制限はしない。
- 毎日の散歩
- 住居が4階でエレベーターがない。毎日の散歩は負担が大きく、症状が悪化する可能性がある。
- 外出後の手洗い
- 感染防止のため、外出後の手洗いは重要である。
- 配食サービスの紹介
- 「食事は不規則でインスタント食品ばかり」であり、栄養管理が必要である。