第102回看護師国家試験一般問題・状況設定問題解説(午前問題91〜105)
次の文を読み91〜93の問いに答えよ。
Aさん(58歳、男性)、建築作業員。趣味はジョギングで毎日5kmを走っている。55歳のときに肺気腫を指摘されている。1か月前から咳嗽が続いて止まらないため、自宅近くの病院を受診した。胸部エックス線撮影で異常陰影が認められ、精密検査の結果、右下葉に肺癌が見つかり、標準開胸右下葉切除術が予定された。20歳から喫煙歴があり、肺気腫を指摘されるまで1日40本程度吸っていた。
正解 4
- 水平仰臥位にする。
- 肩関節の運動を促す。
- ドレーンをクランプする。
- 皮下気腫の出現に注意する。
- 皮下気腫は、胸腔内の空気が皮下に漏れた状態である。エアリークが認められているので、皮下気腫の出現に注意する。
【問題92】 術後2日。硬膜外持続鎮痛法が行われているが、Aさんは咳嗽時や体動時に苦痛表情をしている。
看護師の対応として適切なのはどれか。
正解 3
- 体動を少なくするように指導する。
- 創部のガーゼの上から温罨法を行う。
- 鎮痛薬の追加使用について医師と検討する。
- 痛みを除去するため、鎮痛薬の追加使用について検討する。
- 胸腔ドレーンの吸引圧について医師と検討する。
【問題93】 エアリークは自然に消失し、経過は良好であるため退院予定となった。体動時の痛みは持続しているが、ADLに支障はない。
Aさんへの退院時の生活指導として適切なのはどれか。
正解 3
- 「傷の痛みはすぐによくなりますので心配ありません」
- 「リハビリテーションはジョギングから始めましょう」
- 「外出時はマスクを使用してください」
- 感染予防のため、マスクを使用するよう指導する。
- 「退院後2、3日から入院前と同じ仕事をしても大丈夫です」
次の文を読み94〜96の問いに答えよ。
Aさん(40歳、男性)。入院時体重65kg。既往歴に特記すべきことはなく、全身状態は良好である。胃癌のため胃全摘出術を受けた。術中の出血量は450mlで輸血はされなかった。術後1日、体温37.5℃、呼吸数24/分、脈拍120/分、血圧162/90mmHg。Hb14.8g/dl。経皮的動脈血酸素飽和度(SpO2)92%(酸素吸入3l/分)。尿量50ml/時。創部のドレーンからは少量の淡血性排液がある。硬膜外持続鎮痛法が行われているが、創痛が強いため呼吸が浅く、離床はできていない。
【問題94】 術後1日のAさんのアセスメントで適切なのはどれか。2つ選べ。
正解 4,5
- 体温の上昇は感染による。
- 脈拍の増加は貧血による。
- 血圧の上昇は麻酔の影響による。
- 酸素飽和度の低下は創痛による。
- 強い創痛によって呼吸が浅いため、酸素飽和度が低下している。
- 尿量の減少は循環血液量の減少による。
- 術中の出血によって循環血液量が減少しているため、尿量が減少している。
【問題95】 術後1週から食事が開始されたが、毎食後に下腹部痛を伴う下痢があり、Aさんは「食事をするのが怖い」と訴えた。看護師が確認する必要があるのはどれか。
正解 4
- 食後の体位
- 1日の歩行量
- 術前の食事の嗜好
- 食事摂取の所要時間
- 胃切除後はダンピング症候群が起こりやすい。食事は少量ずつ時間をかけてゆっくり食べることが勧められるため、食事摂取の所要時間を確認する。
【問題96】 下痢の回数は減り、摂食も良好で、術後3週で退院が決定した。Aさんへの退院指導で正しいのはどれか。2つ選べ。
正解 3,5
- 炭水化物を中心にした食事を勧める。
- 炭水化物の摂取は控える。
- 下痢は1か月程度でおさまると説明する。
- 1か月でおさまるとは言えない。
- 食事は分割して少量ずつ摂取するよう勧める。
- 1回の食事量を減らし、1日の食事回数を5〜6回に増やして、少量ずつゆっくり食べるようにする。
- 食後に冷汗が出たら水分を摂るよう説明する。
- 冷汗は後期ダンピング症候群の低血糖症状である。飴や氷砂糖などを摂取する。
- ビタミンB12が吸収されにくくなると説明する。
- 胃切除後は、胃壁細胞から分泌される内因子が減少するため、ビタミンB12が吸収されにくくなる。
次の文を読み97〜99の問いに答えよ。
Aさん(52歳、男性)、自営業。既往歴に特記すべきことはない。屋根を補修するためにはしごを登っていたところ、足を滑らせて転落し、頭部を打撲した。救急車で病院に搬送され、頭部CTで、右前頭葉と側頭葉の脳挫傷と右側頭葉の脳内血腫を認めた。
正解 3
- II-20
- 「大きな声または体をゆさぶることにより開眼する」である。
- II-30
- 「痛み刺激を加えつつ呼びかけを繰り返すと、かろうじて開眼する」である。
- III-100
- 「痛み刺激に対し、払いのけるような動作をする」である。
- III-200
- 「痛み刺激で少し手足を動かしたり、顔をしかめる」である。
- III-300
- 「痛み刺激に反応しない」である。
正解 4
- 術後感染
- 脳血管攣縮
- 低酸素血症
- 術後頭蓋内出血
- 開頭術後の合併症として、術後出血、脳浮腫、痙攣などが挙げられる。術後出血は術後24時間以内に生じることが多い。
正解 2
- 後頭部を氷枕で冷やす。
- 上半身を30度程度挙上する。
- 頭蓋内圧が亢進しているので、頭蓋内の静脈還流を促進して脳循環を改善させるため、上体を30度程度挙上する。
- 左上下肢の関節屈曲運動を行う。
- 右上肢を抑制して硬膜外ドレーン抜去を予防する。
次の文を読み100〜102の問いに答えよ。
Aさん(50歳、男性)は、双極性障害で、これまでにうつ状態と躁状態で入院歴がある。会社員の兄と2人で暮らしている。3か月前から服薬を中断するようになり、気分が沈みはじめ、1週前から朝起きられなくなった。2日前から1日中ベッドの中にいるようになったため、兄に付き添われて入院した。入院時は亜昏迷状態で、発語はほとんどなく、自力での歩行が困難なほど脱力が強かった。入院後、三環系抗うつ薬が開始された。
【問題100】 入院当日の看護として適切なのはどれか。2つ選べ。
正解 3,4
- 発語を促す。
- 入浴を促す。
- 食物形態を工夫する。
- 亜昏迷状態では食事摂取が困難になるので、摂取しやすいよう食物形態を工夫する。
- 個室への入室を勧める。
- 静かな環境が必要であるため、個室への入室を勧める。
- レクリエーションへの参加を勧める。
【問題101】 Aさんの排泄に関する看護として適切なのはどれか。2つ選べ。
正解 1,3
- 便秘を予防する。
- 三環系抗うつ薬の副作用で便秘が起こる可能性があり、便秘の予防は適切である。
- 水分摂取を制限する。
- 便秘予防のためにも水分の摂取は必要である。
- 排尿の有無を観察する。
- 三環系抗うつ薬の副作用で排尿困難が起こる可能性があり、排尿の有無を観察する。
- 排泄回数を記載するよう説明する。
- 自分で排泄回数を記載することは困難である。
- 自分でポータブルトイレを使用するよう説明する。
- 自分でポータブルトイレを使用することは困難である。
【問題102】 Aさんの精神状態の経過観察において最も注意すべき症状はどれか。
正解 4
- 錯乱
- 強迫行為
- 失見当識
- 気分高揚
- 双極性障害では、躁病相とうつ病相を交互に繰り返す。現在はうつ状態であり、今後躁状態が出現する可能性がある。
次の文を読み103〜105の問いに答えよ。
Aさん(40歳、女性)は統合失調症で入院歴があり、退院後は共同生活援助(グループホーム)を利用していた。1週前から同じグループホームに住む女性と口論したり、夜中にグループホームから飛び出したりするようになったため、職員に付き添われて精神科病院を受診した。診察時は、Aさんは意味不明の言葉を発し、時々興奮したように大声で叫んだ。また、診察室から飛び出したり、衣服を脱いだりする行為も観察された。
【問題103】 入院を開始するために必要な情報で優先度が高いのはどれか。
正解 1
- 保護者の有無
- 診察時の状態から任意入院は困難であるため、その他の入院形態となる。保護者の同意がとれるかどうか、保護者の有無を確認する必要がある。
- 前回の入院形態
- 自立支援給付の受給状況
- 精神障害者保健福祉手帳の取得状況
【問題104】 診察の結果、Aさんは入院することになり、外来看護師に付き添われて閉鎖病棟に来た。病棟の入り口でドアを開けた看護師が優先的に行うのはどれか。
正解 3
- 持参した薬を確認する。
- 病棟のホールに誘導する。
- 他の病棟スタッフに協力を要請する。
- 興奮状態であるので、安全を確保するために他のスタッフに協力を要請する。
- 入院のオリエンテーションを実施する。
【問題105】 入院後2週、症状が安定して、意思の疎通も良好となり、興奮もみられなくなった。入院後1か月にはADLもほぼ自立していた。入院後1か月のAさんへの看護で適切なのはどれか。2つ選べ。
正解 3,5
- 長期間の入院が必要であると説明する。
- 退院して家族と同居することを検討する。
- 入居していたグループホームと連絡を取る。
- 入院前に入居していたグループホームへの連絡が必要である。
- 警察にAさんの退院予定日を知らせておく。
- 服薬の自己管理を開始するためのアセスメントを行う。
- 再発防止のためにも、退院後の服薬管理が重要である。