第102回看護師国家試験一般問題・状況設定問題解説(午前問題106〜120)
次の文を読み106〜108の問いに答えよ。
Aさん(48歳、女性)は、重症筋無力症を5年前に発症し、初期から副腎皮質ステロイドの内服治療を受けて自宅で生活している。現在は、眼瞼下垂、複視および上下肢の筋力低下がある。日中は、時間をかければ身の回りのことはできている。月1回の外来受診は強い疲労を伴う。夫とは離婚し、高校生の長女と2人で暮らしている。また、訪問サービスは訪問看護のみを利用している。
正解 4
- う蝕
- 歯周病
- 口腔乾燥症
- 鵞口瘡(口腔カンジダ症)
- 鵞口瘡(口腔カンジダ症)は、口腔内に常在するカンジダ菌によって、口腔内に白い斑点状の苔状物が生じる疾患である。新生児や乳幼児に多く、成人では副腎皮質ステロイドや免疫抑制剤などの使用で誘発される。
【問題107】 Aさんがセルフケア能力を維持して、口腔内の清潔を保つための訪問看護師の対応で適切なのはどれか。2つ選べ。
正解 1,3
- 歯磨きの自助具を紹介する。
- 歯磨きしやすいよう自助具を用いる。
- 含嗽はしないよう指導する。
- 口腔内を清潔に保つためにも含嗽は必要である。
- 筋力低下の日内差について尋ねる。
- 筋力の低下は口腔内の自浄作用の低下を招く。重症筋無力症では症状の日内変動が特徴であるため、筋力低下の日内差について確認する。
- 長女が口腔ケアを行うよう助言する。
- 長女がケアを行ったのでは、セルフケア能力を維持することにはならない。
- 歯磨きは食事の前後に行うよう指導する。
- 筋力低下がみられており、食事の前にも歯磨きを行うのは困難である。
【問題108】 Aさんは「娘との生活を続けるために私も頑張らなくてはいけないと思っている」と言う。
訪問看護師のAさんへの対応で適切なのはどれか。
正解 4
- 「Aさんの頑張り次第です」
- 「将来は娘さんに介護してもらいましょう」
- 「将来は施設に入所することを考えましょう」
- 「ホームヘルパーの支援を受けることも考えましょう」
- 「娘との生活を続けるために頑張りたい」というAさんに対する前向きな言葉かけが必要である。ホームヘルパーの利用について検討することは適切である。
次の文を読み109〜111の問いに答えよ。
Aさん(87歳、女性)は、6年前にAlzheimer(アルツハイマー)型認知症を発症した。在宅で療養していたが、夫が介護に疲れたために施設に入所した。現在、長谷川式簡易知的機能評価スケール(HDS-R)10点、障害高齢者の日常生活自立度判定基準B-1である。下肢筋力や立位バランスの低下がある。自宅では自分で車椅子に移乗してトイレに行き排泄していた。尿失禁はなかった。入所直後、Aさんは表情が険しく落ち着きがなく、看護師が声をかけても応じない。自発的にトイレに行きたいという発言はなく、着衣を尿で汚染することが多いためトイレ誘導を行うことにした。
正解 4
- 大きな声で尿意を尋ねる。
- 就寝中も起こしてトイレに誘導する。
- 施設で決められた時刻にトイレに誘導する。
- 声をかけても応じない場合は様子を見て再度トイレに誘導する。
- 様子を見てサインを見逃さないようにし、再度トイレに誘導する。
正解 4
- 排泄動作を全介助する。
- 夜間は下着をオムツに変更する。
- 尿失禁の不快感について質問する。
- 廊下を移動中、トイレに行きたいのかを確認する。
- トイレの場所が分からずに尿失禁している可能性があるので、廊下を移動中はその都度トイレに行きたいのかを確認する。
【問題111】 入所後3週。排尿行動の自立を目標とする看護計画を立案した。
看護計画として最も適切なのはどれか。
正解 2
- 昼夜ともにオムツは使用しない。
- トイレの標示を目立つよう工夫する。
- 目印をつけるなど、トイレの標示を目立つようにし、トイレの場所を分かりやすくする。
- 尿で汚染した着衣を自分で片づけるよう指導する。
- 尿意を感じた際にはナースコールで呼ぶよう説明する。
次の文を読み112〜114の問いに答えよ。
Aさん(24歳、初産婦)、事務職。妊娠8週である。現在、両親と妹との4人で暮らしている。パートナーは24歳の大学院2年生で就職が内定しており、Aさんと結婚する予定である。
【問題112】 Aさんは「気持ちが悪いのであまり食べられません。ご飯が炊き上がるにおいだけで吐き気がします」と話している。妊娠経過は順調である。Aさんへの食事指導で最も適切なのはどれか。
正解 3
- 水分は糖分を含んだ飲料にする。
- 糖分を過剰に摂取すると、糖代謝のためにビタミンB1が欠乏する。
- 栄養のバランスを崩さずに摂取する。
- 栄養のバランスも大切であるが、摂取することを優先する。
- 1回量を少なくして食べる回数を増やす。
- つわりがある場合は、1回量を少なくして食事の回数を増やし、こまめに摂取する。
- 積極的にカロリーの高い食物を摂取する。
- 妊娠初期のエネルギー付加量は+50kcal/日である。
正解 2,4
- 痔
- 妊娠初期における妊婦健康診査は4週に1回なので、次の妊婦健康診査は妊娠12週である。痔は、妊娠中期〜後期に生じやすい。
- 便秘
- プロゲステロン増加による腸管の運動量低下によって便秘が生じやすい。妊娠中期〜後期では、子宮増大による腸管の圧迫も原因となる。
- 静脈瘤
- 子宮増大による骨盤内の静脈圧迫によって、妊娠中期〜後期に静脈瘤が生じやすい。
- 帯下の増加
- エストロゲンの作用によって、帯下が増加する。
- 皮膚の掻痒感
- 妊娠性掻痒症は、妊娠中期〜後期に生じやすい。
正解 4
- 保育所の選択
- 育児用品の準備
- バースプランの立案
- 出産準備教室への参加
- 「母親になる実感がまだない」と言っているので、心の準備のために出産準備教室へ参加するとよい。
次の文を読み115〜117の問いに答えよ。
A君(8歳、男児)。公園から自転車で帰宅途中に転倒し、利き腕である右肘を強打した。疼痛と腫脹とがあり受診した。単純エックス線撮影の結果、右上腕骨顆上骨折と診断され、治療のために入院した。
【問題115】 A君の上腕から手関節までシーネ固定を行った。患肢の観察項目で最も優先度が高いのはどれか。
正解 1
- 知覚
- シーネ固定を行っており、末梢の循環障害や神経障害が起きていないか観察する必要があり、最も優先度が高い。
- かゆみ
- 出血量
- 関節拘縮
正解 3
- 側臥位で摂取する。
- 流動食を摂取する。
- 左手を使って摂取する。
- 術後の全身状態は安定しており、普通に食事摂取を行えるが、患肢の反対側である左手を使って摂取する。
- 右手を使って摂取する。
【問題117】 術後8日、上腕から手関節までギプス固定を行った。術後10日に退院し、5週後に外来で抜釘術を行う予定である。退院指導で適切なのはどれか。
正解 3
- 外での遊びに制限はない。
- 患肢の状態悪化につながるような遊びは控えなければならない。
- ギプスがとれるまで入浴しない。
- ギプスを保護しての入浴は可能である。
- 患肢に痛みがあるときは受診する。
- ギプス固定による循環障害や圧迫創の可能性があり、痛みがある場合は直ちに受診する。
- 患側の指先に冷感があるときは温める。
- 指先に冷感がある場合は、末梢の循環障害が生じている可能性があり、直ちに受診する。
次の文を読み118〜120の問いに答えよ。
Aちゃん(2歳0
か月、女児)。昨日から下痢と嘔吐とを繰り返し、食事が摂れなくなったため、母親に抱かれて小児科外来を受診した。診察の結果、ウイルス性胃腸炎と診断され入院した。入院時、体温38.2℃、呼吸数36/分、心拍数136/分であった。1週前の保育所の身体計測では身長89cm、体重12.0kgであった。個室隔離とし、点滴静脈内注射による持続輸液が開始された。
正解 2
- 脱水症状はない。
- 軽度脱水である。
- 減少した体重は400gであり、元の体重の3.33%である。3〜5%の体重減少、つまむとすぐもどる皮膚の弾力は、軽度脱水に該当する。
- 中等度脱水である。
- 重度脱水である。
正解 4
- 食事摂取を促す。
- 日中も部屋を暗くする。
- 1人で過ごすようにする。
- Aちゃんが好きな絵本を読み聞かせる。
- 絵本の読み聞かせなど、活気をもたらすような対応が適切である。
【問題120】 Aちゃんは、排泄が自立していないため紙オムツを使用している。看護師が殿部を観察すると発赤とびらんとがみられた。
Aちゃんへの看護で適切なのはどれか。
正解 2
- 布オムツを使用する。
- 38〜39℃の湯で殿部浴を行う。
- 胃腸炎などで下痢が続くと、おむつ皮膚炎(かぶれ)を起こしやすくなる。ゆるま湯での殿部浴は、かぶれの防止に効果的である。
- オムツを外し、殿部を開放しておく。
- アルコール入りのおしり拭きで殿部の清拭を行う。