第102回看護師国家試験一般問題・状況設定問題解説(午後問題91〜105)
次の文を読み91〜93の問いに答えよ。
Aさん(64歳、男性)は、人工心肺装置を使用した冠動脈バイパス術(CABG)を受け、ICUに入室した。手術時間10時間、手術中の輸液量6,200ml、出血量480ml、尿量980mlであった。
正解 3
- 四肢に抑制帯を使用する。
- 抑制する必要はない。
- 背部の清拭を禁忌とする。
- 清拭してよい。ただし、電極が外れないよう注意する。
- 両足背動脈の拍動を確認する。
- 血栓形成や血流阻害によって下肢虚血が起こる可能性があるため、両足背動脈の拍動確認を怠らないようにする。
- Trendelenburg(トレンデレンブルグ)体位にする。
- 体位は仰臥位とする。
正解 2
- 無気肺
- 肺水腫
- 断続性副雑音の聴取、泡沫状の分泌物、肺野全体の透過性の低下から肺水腫が考えられる。
- 肺血栓塞栓症
- 人工呼吸器関連肺炎
正解 4
- 家族の面会を制限する。
- 天井の虫は幻覚であると説明する。
- モーニングケア後に睡眠薬を与薬する。
- 点滴チューブを病衣の袖に通して見えないようにする。
- ICU症候群が起こると、不眠、幻覚、せん妄、不安などが出現する。チューブを抜去しないよう見えないようにするのは適切である。家族との面会が制限されることもICU症候群の原因となるため、面会は制限しない。
次の文を読み94〜96の問いに答えよ。
Aさん(54歳、女性)は、10年前に2型糖尿病と診断され、外来受診を続けていた。今回血糖コントロールが不良となり、精密検査とインスリン治療を検討するために入院した。身長154cm、体重45kg、HbA1c9.0%。早朝空腹時血糖値178mg/dl、食事摂取の指示エネルギー量は1,400kcal/日である。
【問題94】 入院初日。Aさんは看護師に「10年間頑張っていたつもりだったけど、やっぱり食べ過ぎていたのね」と話す。看護師の対応で最も適切なのはどれか。
正解 3
- 「もう少し頑張れるとよかったですね」
- 「食品交換表の使い方を勉強しましょう」
- 「食べ過ぎていたかどうか一緒に確かめてみませんか」
- 摂取エネルギー量の把握や今後の動機付けのためにも、一緒に確認する。
- 「退院後はインスリンを使わなくてすむよう頑張りましょう」
【問題95】 入院後5日。超速効型インスリンの自己注射が開始された。開始7日、Aさんがインスリン注射を忘れて、昼食を食べ始めていたところを看護師が発見した。看護師の対応で最も適切なのはどれか。
正解 2
- 食事を中断して血糖値を測定する。
- 食事を中断してインスリン注射をする。
- 超速効型インスリンは効果の発現が速いので、食前に注射を打ち忘れた場合は、食事中に直ちにインスリン注射をする。
- インスリン注射の必要性を再度詳しく説明する。
- 今後は看護師が食前に注射をするよう声をかけると説明する。
正解 3
- 朝食前に飴をなめる。
- 掃除を2日に1回とする。
- 午前11時ころに補食を摂る。
- 運動後や労働後は低血糖になりやすい。昼食前の血糖値が低下しているので、洗濯・掃除と昼食の間の午前11時ころに補食を摂る。
- 夕食前の買い物は自転車で行く。
次の文を読み97〜99の問いに答えよ。
Aさん(23歳、女性)は、大学受験に失敗して以来、自宅に引きこもりがちになった。母親は、Aさんについて「中学時代までは成績優秀で、手のかからない、おとなしい子どもだった」と言っている。両親と妹との4人で暮らしている。1年前から手洗いを繰り返すようになり、最近では夜中も起き出して手を洗い、手の皮がむけてもやめなくなった。心配した母親が付き添って受診したところ、強迫性障害と診断された。Aさんには極度に疲労している様子がみられたことから、本人の同意を得て、その日のうちに任意入院となった。
正解 3
- 決めた手洗い回数を増やす。
- 回数制限を守れない理由を問う。
- 洗面所から離れるように誘導する。
- 強迫性障害では、自分でも不合理だと思いながらも、自分をコントロールできずに同じ行動を繰り返してしまう。回数制限を守れない理由を聞いたり、清潔であることを説明しても無意味である。また、決めた手洗い回数を増やすことは、強迫行為を助長するため不適切である。別のものに関心を持たせるなど、洗面所から離れるようさりげなく誘導する。
- 病棟は清潔であることを説明する。
正解 4
- 毎日の面会を勧める。
- Aさんの苦悩を代弁する。
- Aさんからの自宅への電話を制限することを約束する。
- 看護師が同席してAさんと母親とが話し合うことを提案する。
- 母親は心身ともに疲れており、毎日の面会は困難である。Aさんと母親が話し合う場を設け、看護師は中立的な立場で援助する。
正解 4,5
- 回想法
- 回想法は認知症に効果的である。
- 森田療法
- 森田療法は、恐怖症性不安障害やパニック障害、強迫性障害などに適応されるが、強迫行為はほとんどみられなくなっている。
- 就労移行支援
- 就労移行支援は、一般就労等への移行に向けて、事業所内や企業における作業や実習、適性に合った職場探し、就労後の職場定着のための支援である。通所によるサービスが原則であり、時期尚早である。
- 家族心理教育
- 家族が障害に関する正しい知識や情報を理解し、もたらされる諸問題に対する対処法を習得することは適切である。
- 生活技能訓練(SST)
- 生活技能訓練は、対人関係や日常生活における技能の習得を助ける訓練であり、適切である。
次の文を読み100〜102の問いに答えよ。
Aさん(55歳、女性)は、昨年10月に腹痛と腹部膨満のため受診し、膵癌、腹膜播種と診断された。手術の適応はなく、化学療法を受けていた。今回、腹水貯留があり経口摂取量も減少したため入院した。排泄は自立しているが、臥床していることが多い。事務職員をしていたが、現在は休職中である。夫とは離婚し25歳の長女と2人で暮らしている。23歳の長男は結婚し、遠方で暮らしている。今回の入院時から積極的治療が困難であることは、Aさんと長女へ医師から説明され、Aさんは自宅での療養を希望している。長女は就労しているため、あまり来院していない。
正解 4
- 自宅環境
- 治療経過
- 食事の摂取状況
- 長女の在宅療養への意向
- 患者は長女と2人で暮らしており、長男は遠方で暮らしている。在宅療養のためには長女の援助が必要である。長女は就労していてあまり来院していないので、まずは長女の在宅療養への意向を確認すべきである。
正解 2
- 処方内容
- 腹部膨満へのケアの必要性
- 患者から「おなかが張ってあまり食べられない」という発言がある。訪問看護師としての立場から、腹部膨満へのケアの必要性を述べる。
- ヘルパーによる支援方法の提案
- 予後を踏まえた療養期間の予測
正解 1
- 「Aさんの意思を弟さん(長男)と一緒に聞いてみましょう」
- 患者は自宅での療養を希望している。家族が納得した上で、患者の希望が優先されることが望ましい。長男と一緒に改めて本人の意思を確認する。
- 「医師に決めてもらう方が弟さん(長男)も納得するでしょう」
- 「Aさんが1人のときに亡くなることもあるので入院も考えましょう」
- 「Aさんは最期まで家にいたいと希望していたから、このままでいいです」
次の文を読み103〜105の問いに答えよ。
Aさん(68歳、女性)は、70歳の夫と2人で暮らしている。
6年前にParkinson(パーキンソン)病と診断された。現在、レボドパ(L-dopa)を1日3回内服している。ヤールの重症度分類ステージIIIで、要介護1である。夫が付き添い、神経難病専門クリニックに杖を使って通院している。特定疾患医療受給者証を持っているが、在宅におけるサービスは利用していない。
正解 2
- 「難聴になることがあります」
- 「体が勝手に動くことがあります」
- レボドパの副作用には、悪心や嘔吐、便秘、起立性低血圧、幻覚、妄想などの他、不随意運動が起こることがある。
- 「低血糖を起こすことがあります」
- 「呼吸が苦しくなることがあります」
正解 2
- 浴室の室温
- ADLの日内変動
- ADLの日内変動をアセスメントし、状態が良い時間帯に入浴するようにする。
- 夫の入浴介助の様子
- 居室から浴室までの距離
【問題105】 Aさんは「家事は夫がしてくれて感謝しています。介護支援専門員とも相談しながら、自宅で暮らしていきたいと思っています」と訪問看護師に話した。Aさんへの提案で最も適切なのはどれか。
正解 4
- 訪問介護の利用
- 訪問介護では、身体介護や生活援助を受けることができる。日常生活を営むことが困難な場合や本人や家族が家事を行うことが困難な場合は利用の優先度が高いが、Aさんはヤールの重症度分類ステージIIIで、日常生活は自立しており、家事も夫がしてくれている。
- 短期入所の利用
- 自宅での生活を望んでおり、現時点では短期入所の利用を提案することは適切ではない。
- 車椅子での室内移動
- 杖を使って通院できており、現時点では車椅子利用の優先度は高くない。
- 訪問リハビリテーションの利用
- 訪問リハビリテーションは、主に通所や日常生活が困難な場合に活用されるが、日常生活動作の向上や介護の重度化予防のためにリハビリテーションを行うことは適切である。