第102回看護師国家試験一般問題・状況設定問題解説(午後問題106〜120)
次の文を読み106〜108の問いに答えよ。
Aさん(85歳、男性)は、妻と2人で暮らしていたが、自宅で意識を消失して緊急入院した。検査の結果、右中大脳動脈領域の脳梗塞と診断された。意識は回復したが左片麻痺があり、発症後3日からベッド上での関節可動域訓練(ROM訓練)が開始された。
【問題106】 発症後8日。Aさんは「ご飯が食べたい」と話した。左口角から流涎があるが、唾液は飲み込めている。日中、うとうとしていることもある。
Aさんへの嚥下機能の間接訓練で適切なのはどれか。
正解 3
- 義歯を外して行う。
- ROM訓練の後に行う。
- 疲労状態を確認しながら行う。
- 間接訓練は食物を使わずに行う基礎的な訓練である。口唇や舌、顎の運動訓練や可動域訓練、空嚥下、嚥下パターン訓練、アイスマッサージなどがある。並行して関節可動域訓練が行われているため、疲労状態を確認しながら毎日行うことが適切である。
- 覚醒が悪い日は訓練を中止する。
正解 4
- 水分摂取には吸い飲みを使う。
- 水分にとろみをつけると誤嚥しにくい。
- 五分粥を摂取するときは大きいスプーンを使う。
- 一口量は多すぎないようにする。
- 嚥下するときは顔を右側に向ける。
- 横向き嚥下を行う場合は、患側(麻痺側)に顔を向ける。
- 食後は30分程度Fowler(ファウラー)位にする。
- 嚥下困難や誤嚥がみられている。胃内容物の逆流を防ぐため、食後は30分〜1時間程度はファウラー位にする。
【問題108】 発症後4週。Aさんは順調に回復し、退院に向けての準備が進められた。妻から「この状態で家に帰ってきて大丈夫かしら」と看護師に相談があった。
妻への看護師の対応で優先するのはどれか。
正解 1
- 介護に対する不安について詳しく聴く。
- まずは何に対して不安を感じているのか詳しく聴く。
- 特別養護老人ホームへの入所を勧める。
- 要介護認定の申請手続きについて説明する。
- 退院後に予測される問題について説明する。
次の文を読み109〜111の問いに答えよ。
Aさん(85歳、男性)は、5年前に発症した右脳梗塞の後遺症のため、左半身麻痺がある。現在、療養病床に入院中である。右膝関節の軽度拘縮のため、ベッド上で過ごすことが多く、自力で体位変換をすることができない。全身の発汗が多く、便失禁と尿失禁とがあり、1日5回以上のオムツ交換を行っている。仙骨部に褥瘡を認め、創底の直径は5cm、創面は黄色、皮下脂肪組織までの欠損がある。毎日1回の褥瘡処置を行っている。現在のAさんは身長162cm、体重48kgである。
正解 3
- ステージI
- ステージIは、「圧迫を除いても消退しない発赤、紅斑」の状態である。
- ステージII
- ステージIIは、「真皮にとどまる皮膚障害、水疱やびらんなどの浅い潰瘍」の状態である。
- ステージIII
- ステージIIIは、「傷害が真皮を越え、皮下脂肪層にまで及ぶ潰瘍」の状態である。
- ステージIV
- ステージIVは、「傷害が筋肉や腱、関節包、骨にまで及ぶ」状態である。
【問題110】 2週後、Aさんの褥瘡は創面に肉芽組織と軟らかい壊死組織があり、周囲に新しい直径5mmの水疱ができていた。このときのケア方法として適切なのはどれか。
正解 3
- 水疱はつぶす。
- 創部の保護や感染の防御のためにも水疱はつぶさない。
- 壊死組織は取り除かない。
- 細菌感染の温床になるので、壊死組織は除去する。
- 微温湯で創面を洗浄する。
- 洗浄によって、創部に残った薬剤、壊死組織、滲出液、細菌を洗い流し、清潔や湿潤状態を保つ。
- 洗浄後は創面を乾燥させる。
- 乾燥は壊死や感染の原因となるので、湿潤状態を保つ。
【問題111】 肛門周囲の皮膚は湿潤しており暗赤色であった。看護師の対応で適切なのはどれか。
正解 2
- 殿部をアルカリ性石鹸で洗浄する。
- 洗浄する場合は、弱酸性石鹸を使用する。
- 肛門周囲の皮膚に保護オイルを塗布する。
- 自力で体位変換をすることができない上に、発汗が多く、肛門周囲の通気性はよくない。さらに便失禁と尿失禁による刺激があるため、肛門周囲の皮膚が湿潤して炎症を起こしている。皮膚の暗赤色は炎症初期の状態である。炎症を悪化させないため、肛門周囲の皮膚に保護オイルを塗布する。
- 肛門周囲の皮膚をマッサージする。
- マッサージによって皮膚に刺激を与えてしまうので、適切ではない。
- ベッドにウレタンマットレスを敷く。
- ウレタンマットレスの使用は、体圧分散によって褥瘡の予防・改善になるが、皮膚炎症の改善にはならない。
次の文を読み112〜114の問いに答えよ。
Aさん(38歳、初産婦)は、妊娠38週3日に2,900gの女児を正常分娩した。出産前は、Aさんは夫と2人で暮らしていた。引っ越して3か月であり、周囲に親しい知り合いや友人はまだいない。
正解 4
- 産褥熱
- 高血圧症
- 産後うつ病
- マタニティブルーズ
- マタニティブルーズとは、ホルモンバランスや生活環境の変化によって、抑うつ気分や涙もろさなどの一過性の症状が出現することをいう。
正解 2
- 元気づける。
- 休息を促す。
- 産褥期は充分な休息をとることが大切である。
- 精神科の受診を勧める。
- 母親として自覚するよう話す。
【問題114】 産褥5日。Aさんは「少しずつ育児ができるようになってよかったですが、自宅での育児は不安です」と話している。看護師の対応で最も適切なのはどれか。
正解 3
- 児童相談所に連絡する。
- 保育所の利用を勧める。
- 新生児訪問の時期を早めるよう市町村保健師に依頼する。
- 新生児訪問では、母子の健康状態の確認や育児指導、育児相談などが行われる。育児に対して不安を感じているので、新生児訪問の時期を早める。
- 子育てをしている親の会に退院直後から参加することを勧める。
次の文を読み115〜117の問いに答えよ。
Aさん(37歳、初産婦)、会社員。妊娠41週1日の午後11時に3,200gの女児を分娩した。妊娠や分娩の経過は順調であり、会陰切開術を受けた。分娩後2時間の子宮底の高さは臍下2横指、縫合部に異常はみられなかった。
正解 4
- 「水分を摂らないようにしてください」
- 「腹部を温めてみましょう」
- 「授乳をしてみましょう」
- 「尿を管で取りましょう」
- 分娩後は、膀胱や尿道の麻痺などによって、排尿障害が起こりやすい。膀胱の充満は子宮復古遅延の原因となるため、導尿することが最も優先される。子宮収縮を促進する方法には、子宮底輪状マッサージ、冷罨法、産褥体操、早期授乳などがある。
【問題116】 産褥3日。Aさんは「退院後は避妊する予定です。母乳は1年以上続けたいと思います」と話している。看護師の説明で適切なのはどれか。
正解 3
- 授乳期間中の避妊は必要ない。
- 授乳期間中でも排卵は認められるため、避妊は必要である。
- 産後1か月から経口避妊薬を使用する。
- 母乳に影響を与えるため、母乳を続けていくのであれば、授乳期間中における経口避妊薬の使用は避けるべきである。
- 性生活を再開するときからコンドームを使用する。
- 性生活を再開するときからコンドームを使用することが望ましい。
- 産後2週にIUD(子宮内避妊具)を挿入してもらうよう勧める。
- IUD(子宮内避妊具)は産後6週ごろから使用できる。産後2週では早すぎる。
正解 4
- 「退院直後から、お子さんを保育所に預けることができます」
- 保育所の入所には申請が必要であり、退院直後から利用するのは困難である。
- 「お子さんが満2歳になるまで育児休業をとれます」
- 育児休業の取得は、子が満1歳に達するまでである。一定の理由があって延長される場合でも、満1歳6か月までである。
- 「職場でお乳を搾る時間を1日4回とれます」
- 育児時間は1日当たり2回まで取得できる。
- 「夫が育児休業をとることもできます」
- 育児休業は、子を養育する労働者が取得できる休業であり、夫も取得できる。
次の文を読み118〜120の問いに答えよ。
Aちゃん(1歳2か月、女児)は、在胎38週2日、2,300g、新生児仮死状態で出生し、NICUで全身管理が行われた。人工呼吸器は3週後に離脱できたが、咳嗽反射が弱く嚥下障害がみられた。追視がなく、痙直性の四肢麻痺がみられるようになり、生後8か月で脳性麻痺と診断された。1歳の時点で小児病棟へ転棟し、退院に向けた準備を行っている。現在、身長と体重は年齢相当で、鼻腔から経管栄養を行っており、日常的に口腔内吸引が必要である。Aちゃんは第1子で、父親は会社員、母親は専業主婦である。
正解 3
- 胃管挿入の長さは、鼻尖から胸骨剣状突起までの直線距離とする。
- 経鼻胃管挿入の長さは、乳児では眉間から剣状突起までの距離である。
- 胃管挿入後は、注射器で空気を1ml注入して気泡音を確認する。
- 胃管挿入後は、注射器で空気を注入して気泡音を確認し、管の先端が胃の中にあることを確認する。新生児では、1〜2ml注入するが、現在1歳2か月であり、1mlでは少ない。
- 栄養剤を注入する前には毎回、胃内容物が吸引できるか確認する。
- 栄養剤を注入する前には、胃内容物を吸引してカテーテルが確実に挿入されているか確認する。
- 栄養剤を注入する際の姿勢は、仰臥位とする。
- 栄養剤を注入する際の姿勢は、嘔吐による誤嚥防止のためファウラー位とする。胃内容物を十二指腸に流れやすくするため、右側臥位とする場合もある。
正解 4
- 父親への沐浴指導は母親に任せる。
- 面会を増やせば母親が楽になると父親に伝える。
- 将来のことは考えても仕方がないと母親に話す。
- Aちゃんのケアについて母親ができていることを認める。
- 自責の念を軽減するような言葉かけが望ましい。
正解 2
- 保育所への入所
- 訪問看護の依頼
- 「具合が悪いときにはどうしたら良いのでしょう」と話しており、在宅療養を支援する看護サービスを必要としている。訪問看護の利用が最も優先度が高い。
- 家事支援のヘルパーの依頼
- 地域の子育てグループへの参加