第103回看護師国家試験一般問題・状況設定問題解説(午前問題91〜105)
次の文を読み91〜93の問いに答えよ。
Aさん(25歳、男性、飲食店店員)は、2日前から感冒様症状があり、夜眠ろうとして横になるが息苦しくて眠れず、歩行や会話も困難となり、夜間にAさんの家族に伴われて救急外来を受診した。Aさんは地元の野球チームに所属し、休日には練習に参加しており、最近は残業が多く疲れていた。診察の結果、Aさんは気管支喘息発作と診断され、気管支拡張薬、副腎皮質ステロイドによる治療と、フェイスマスクによる酸素投与が行われたが、改善がみられず入院した。
【問題91】 入院後Aさんは呼吸困難が増悪し、発汗が著明であった。入院時の看護として最も適切なのはどれか。
正解 4
- 全身清拭を行う。
- セミファウラー位とする。
- 鎮静薬の処方を医師に相談する。
- 口をすぼめてゆっくりと息を吐くように指導する。
- 口すぼめ呼吸を行うことで、気道内圧が高まり、気道閉塞が軽減される。慢性閉塞性肺疾患や気管支喘息で有効な呼吸法である。また、呼吸困難時は、横隔膜を下げて呼吸面積を広げるために、起坐位やファウラー位に保つとよい。
【問題92】 入院後も呼吸困難や頻呼吸、呼吸性アシドーシスの改善が認められないため、鼻と口を覆うタイプのマスクを用いた非侵襲的陽圧換気を行うことになった。Aさんへの説明で最も適切なのはどれか。
正解 4
- 「話すことができなくなります」
- 非侵襲的陽圧換気では、気管挿管や気管切開を行わずに補助換気ができ、会話や食事は可能である。
- 「機械に合わせて呼吸してください」
- 吸気圧と呼気圧を設定し、患者の呼吸に合わせて吸気圧と呼気圧の差分だけ換気を機械的に補助する。
- 「自分でマスクの位置を調整しても問題ありません」
- 顔面とマスクが密着していることが必要であり、自分ではマスクの位置を調整しない。
- 「空気の圧力がかかるので息が吐きにくくなります」
- マスクを用いて陽圧をかけるため、圧迫感があり息が吐きにくくなる可能性がある。
正解 4
- 「食事の制限はありません」
- 食品添加物や刺激物は発作を誘発する可能性があるので控える。
- 「お酒は飲んでも大丈夫です」
- アルコールは発作を誘発する可能性があるので控える。
- 「野球はやめた方がよいでしょう」
- 運動が発作を誘発することはあるが、禁止する必要はない。冷気や乾燥した空気が急速に気道に入ることで発作が起こることがあるので、運動前には十分なウォーミングアップを行う。
- 「ストレスをためないようにしてください」
- ストレスや疲労は喘息発作の誘因となる。
次の文を読み94〜96の問いに答えよ。
Aさん(56歳、女性、主婦)は、胆石症と診断され、腹腔鏡下胆嚢摘出術予定で入院した。Aさんは身長152cm、体重70kgである。Aさんは、数年前に脂質異常症を指摘されたが、治療は受けていない。Aさんにその他の特記すべき既往歴はない。
正解 2
- 肺炎
- 術後肺炎が起こる可能性はある。ただし、「食事はしばらく食べられず3週間以上管が抜けなかった」という言葉には当てはまらない。
- 胆汁瘻
- 腹腔鏡下胆嚢摘出術の合併症には、出血、胆道損傷、胆汁瘻、創感染、ヘルニアなどがある。胆汁瘻とは、胆嚢管の断端から胆汁が腹腔内に漏れ出ることをいう。胆汁瘻が起こった場合は、漏れ出た胆汁を対外へ排出するためのドレナージチューブ留置やしばらくの絶食が必要となることがある。
- 皮下気腫
- 腹腔鏡下手術では、気腹によって炭酸ガス(二酸化炭素)が皮下に入りこみ皮下気腫が起こる可能性がある。ただし、「食事はしばらく食べられず3週間以上管が抜けなかった」という言葉には当てはまらない。
- 深部静脈血栓症
- 長期臥床などによって深部静脈血栓症、肺塞栓症が起こる可能性がある。ただし、「食事はしばらく食べられず3週間以上管が抜けなかった」という言葉には当てはまらない。
【問題95】 Aさんは、全身麻酔下で気腹法による腹腔鏡下胆嚢摘出術を受けた。手術中にAさんに最も生じやすいのはどれか。
正解 3
- 褥瘡
- 長時間の手術ではないので、褥瘡が生じる可能性は高くない。
- 高体温
- 炭酸ガス気腹により低体温になりやすい。
- 無気肺
- 気腹法では送気による横隔膜挙上や静脈圧迫などによって無気肺が生じやすくなる。
- 脳梗塞
- 下肢静脈血のうっ滞、血栓形成、炭酸ガスの血管内流入による塞栓症(特に肺塞栓症)には注意が必要である。
【問題96】 Aさんの術後の経過は良好で、退院の許可が出た。退院後の日常生活に関する説明で正しいのはどれか。
正解 3
- 「低蛋白食を摂取してください」
- 低脂肪食を摂取する。
- 「退院後1週間、シャワー浴はできません」
- 通常、術後3日程度でシャワー浴は可能である。
- 「脂肪分の多い食事で下痢をするかもしれません」
- 胆嚢摘出により脂肪の消化吸収機能が低下するため、脂肪分の多い食事で下痢を起こしやすい。脂肪の多い食品や暴飲暴食は避ける。
- 「傷口が赤く腫れてきたら、消毒をしてください」
- 創感染の兆候がみられたら、直ちに受診する。
次の文を読み97〜99の問いに答えよ。
Aさん(72歳、女性)は、1人で暮らしている。Aさんは1年前に夫を亡くした後、近所付き合いが少なくなっていた。遠方に住むAさんの息子が時々電話で様子を確認していた。最近は元気がなく、Aさんの息子が心配して様子を見に来たところ、食事を食べた様子がなく、ごみは捨てられていなかった。Aさんは発熱してぐったりしており、息子に連れられて病院を受診した。Aさんは脱水状態の治療と抑うつ状態の疑いのため検査が必要であると判断されて入院した。Aさんの既往歴に特記すべきことはない。
【問題97】 Aさんは入院直後、Mini-Mental State Examination(MMSE)30点であった。さらに情報収集のために用いるアセスメント方法で適切なのはどれか。
正解 3
- DBDスケール(Dementia Behavior Disturbance Scale)
- DBDスケールは、認知症に認められる問題行動を評価する指標である。Aさんは、MMSE30点であり、認知症の可能性は低い。
- Hoehn-Yahr(ホーエン・ヤール)の重症度分類
- ホーエン・ヤールの重症度分類は、パーキンソン病の重症度を分類する指標である。
- GDS(Geriatric Depression Scale)15
- GDS(老年期うつ病評価尺度)は、高齢者を対象としたうつ症状のスクリーニング検査である。Aさんは抑うつ状態の疑いがあり、この検査は適切である。
- Borg(ボルグ)スケール
- ボルグスケールは、主観的運動強度の評価指標である。
正解 2
- オムツの着用を勧める。
- 自力排尿できるのでオムツは必要ない。
- トイレに近い病室に変更する。
- 着脱動作が緩慢なため間に合わずに尿失禁している。トイレに近い病室に変更するのが適切である。
- 膀胱留置カテーテルの挿入を検討する。
- 自力排尿できるので膀胱留置カテーテルの挿入は必要ない。
- ポータブルトイレをベッドの横に設置する。
- Aさんは手すりを使用してトイレまで歩行できている。ADLの低下を招く恐れがあるため、ポータブルトイレの設置は適切ではない。
正解 3
- 「薬の量を増やしてもらえるように主治医に相談してみましょう」
- 「1人でできることが多くなったからもう大丈夫ですね」
- 「心配なことについてゆっくりお聞きしますよ」
- Aさんは自宅での一人暮らしに不安を感じている。心配事について聞き、不安を解消できるよう支援することが適切である。
- 「お疲れのようなのでベッドで休みましょう」
次の文を読み100〜102の問いに答えよ。
Aさん(85歳、男性)は、5年前に脳梗塞を発症し右片麻痺があり、要介護3の認定を受けた。Aさんの子どもは遠方に住んでおり、腰痛のあるAさんの妻(80歳)が1人で介護している。Aさんは、週2日通所介護を利用している。
【問題100】 Aさんの妻は「夜中にオムツを替えるために毎日起こされ、腹が立ちます」と通所介護の送り迎えを担当している看護師に訴えた。 最初にAさんの妻へ話しかける言葉で適切なのはどれか。
正解 3
- 「主治医に相談しましょう」
- 「これまで通り頑張りましょう」
- 「夜眠れないと本当に大変ですね」
- 1人で介護している妻の介護負担について共感する姿勢が大切である。
- 「Aさんはもっとつらいと思いますよ」
正解 2
- 訪問入浴介護
- 夜間対応型訪問介護
- 夜間対応型訪問介護とは、できる限り自宅で自立した日常生活を営むことができるよう、夜間における定期的な訪問介護員等の巡回または通報による訪問により、利用者の排せつの介護、日常生活上の緊急時の対応などの援助を行うものである。妻は夜間のオムツ交換に負担を感じており、夜間対応型訪問介護が最も優先される。
- 特定施設入居者生活介護
- 認知症対応型共同生活介護(認知症高齢者グループホーム)
正解 3
- 「あなたがしっかりしましょう」
- 「自宅で看取るようにしましょう」
- 「長い間、十分介護をしてきましたよ」
- 妻は腰痛が悪化しており、自宅で看取ることは困難である。ここでは自責の念を軽減するような言葉かけが望ましい。
- 「私たちが看取りますので大丈夫ですよ」
次の文を読み103〜105の問いに答えよ。
Aちゃん(1歳0か月、女児)は、つかまり立ちをしようとしてテーブルの上に手をかけたところ、熱い味噌汁の入ったお椀をひっくり返して前胸部と右前腕に熱傷を負ったため母親とともに救急外来を受診した。来院時、Aちゃんは、体温36.8℃、呼吸数36/分、心拍数120/分、血圧90/60mmHgであり、機嫌が悪く泣いている。
【問題103】 Aちゃんの前胸部と右前腕には発赤と一部に水疱がみられ、看護師が創部に軽く触れると激しく泣いた。Aちゃんの熱傷の受傷深度として考えられるのはどれか。
正解 2
- I度
- I度熱傷は、表皮のみの熱傷である。発赤や紅斑がみられ、水疱はみられない。数日で治癒し、瘢痕は残らない。
- 浅達性II度
- 浅達性II度熱傷は、真皮浅層までの熱傷である。水疱が形成され、水疱底は赤みを帯びており、強い痛みを伴う。1〜2週間で治癒し、瘢痕は残りにくい。Aちゃんは、発赤と水疱がみられ、激しい痛みがあることから、浅達性II度が考えられる。
- 深達性II度
- 深達性II度熱傷は、真皮深層までの熱傷である。水疱が形成され、水疱底は白色で、知覚鈍麻がみられやすくなる。治癒に2週間以上かかり、肥厚性瘢痕や色素沈着が残りやすくなる。
- III度
- III度熱傷は、真皮全層、皮下組織に及ぶ熱傷である。表面は白色または黒色で、壊死、乾燥がみられ、知覚がなく無痛性である。瘢痕が残り、植皮が必要となる場合がある。
正解 4
- 「Aちゃんがかわいそうですよ」
- 「Aちゃんはもっとつらいですよ」
- 「Aちゃんが頑張る姿を見届けるべきですよ」
- 「Aちゃんにとってお母さんが支えになりますよ」
- 母親が支えになることを伝え、母親の自責の念や無力感を軽減するよう支援する。
正解 3
- 調理の工夫
- 重症事故事例の提示
- 1歳児の行動の特徴
- 行動の特徴を把握することで、行動の予測ができ、事故の予防につなげることができる。
- Aちゃんへの説明の方法