第104回看護師国家試験一般問題・状況設定問題解説(午前問題91〜105)
次の文を読み91〜93の問いに答えよ。
Aさん(54歳、男性)は、10年前に心筋梗塞を発症し、2年前に慢性心不全と診断され外来受診を続けてきた。1週前からトイレ歩行時に息苦しさがあり、4日前から夜に咳と痰とがみられ眠れなくなっていた。本日、Aさんは定期受診のため来院し、心不全の増悪と診断され入院した。入院時、体温36.3℃、呼吸数24/分、脈拍96/分、整で、血圧124/72mmHgであった。心エコー検査で左室の駆出率28%であった。体重は1週間で4kg増加し下肢の浮腫がみられる。
【問題91】 このときのAさんのアセスメントで適切なのはどれか。
正解 4
- ショック状態の可能性が高い。
- 脈拍、血圧ともに正常であり、ショック状態の可能性は低い。
- 左心不全の症状はみられない。
- 左室駆出率は55〜80%が正常範囲と考えられている。左室駆出率28%は左室不全であり、呼吸困難、咳、痰は左室不全の症状である。
- NYHA心機能分類のⅠ度に該当する。
- 1週前からトイレ歩行時に息苦しさがあり、NYHA心機能分類のⅡ度またはⅢ度に該当する。
- 浮腫は右心不全の症状によると考えられる。
- 下肢の浮腫、体重増加は右心不全の症状である。
【問題92】 Aさんの咳嗽を軽減する方法で最も適切なのはどれか。
正解 1
- 起坐位を保つ。
- 起坐位を保つことにより静脈環流量が減少し、肺うっ血が緩和されて呼吸が楽になる。
- 腹式呼吸を促す。
- 部屋の湿度を30%に保つ。
- 超音波ネブライザーを使用する。
【問題93】 入院治療によりAさんの症状は改善し、2日後に退院予定である。退院後の受診についての説明で最も適切なのはどれか。
正解 3
- 「夜間の咳で受診する必要はありません」
- 「体温が38.0℃以下なら受診の必要はありません」
- 「今回のように体重が増加したときは受診してください」
- 体重増加は右心不全の症状・徴候であり、受診する必要がある。
- 「仕事から帰って足に浮腫がみられたら受診してください」
次の文を読み94〜96の問いに答えよ。
Aさん(52歳、男性)は、5年前に健康診断で高血圧を指摘されていたが、そのままにしていた。5年ぶりに健康診断を受けたところ尿蛋白+で、内科を受診し腎機能障害を指摘された。Aさんは、身長160cm、体重56kgであり、体温36.1℃、呼吸数18/分、脈拍64/分、整で、血圧166/96mmHgであった。血液検査データは、Hb9.3g/dL、アルブミン3.6g/dL、クレアチニン2.3mg/dL、HbA1c5.6%、K3.9mEq/L、推算糸球体濾過量(eGFR)25mL/分/1.73m2であり、特に自覚症状はなく、浮腫はみられない。
【問題94】 腎機能の悪化によるものと考えられるデータはどれか。
正解 3
- 体重
- 身長160cm、体重56kgから、BMIは21.875となり、正常である。
- 血清カリウム値
- 血清カリウムの基準値は3.5〜5.0mEq/Lであり、正常値である。
- ヘモグロビン値
- Hb9.3g/dLであり、腎機能低下による貧血であると考えられる。
- 血清アルブミン値
- 低蛋白状態の指標は、血清アルブミン値3.5g/dl以下である。
正解 2
- 「高血圧で尿が少なくなり腎臓を悪くします」
- 高血圧だけでは尿量減少は起こらない。
- 「高血圧が続くと腎臓の濾過機能が低下します」
- 高血圧が続くと、糸球体の血管が動脈硬化を起こし、濾過機能が低下する。
- 「高血圧では腎臓病の症状が現れにくくなります」
- 高血圧によって腎機能が低下し、症状が現れやすくなる。
- 「腎臓の機能がさらに低下すると血圧は低くなります」
- 腎機能がさらに低下すると、循環血液量が増加して血圧は上昇する。
【問題96】 現時点でAさんに起こる危険性が高いのはどれか。
正解 3
- 低リン血症
- 腎機能低下によってリンの排泄機能が低下し、高リン血症をきたす。
- 血糖値の上昇
- HbA1c5.6%は正常範囲内である。血糖値の上昇が起こる危険性は高くない。
- 虚血性心疾患
- 高血圧は虚血性心疾患の危険因子である。
- 甲状腺機能亢進症
- 副甲状腺機能亢進症が起こる危険性がある。腎機能低下によってビタミンDの活性化が阻害され、カルシウムの吸収が不足し、血中カルシウム濃度が低下する。これを補うために副甲状腺機能が亢進する。また、高リン血症も副甲状腺機能亢進の要因となる。
次の文を読み97〜99の問いに答えよ。
Aさん(72歳、男性)は、アパートの1階に1人で暮らしている。家族や親戚はいない。15年前から心不全のために利尿薬を毎朝内服している。半年前に要支援2の認定を受け、介護予防通所介護を週に2回利用している。早朝、Aさんは玄関の外で座り込んでいるところを近所の人に発見され救急搬送された。来院時、体温37.4 ℃、呼吸数20/分、脈拍98/分、血圧100/70mmHgであった。血液検査と尿検査の結果、脱水症と診断された。
正解 1
- 昨日の経口摂取量
- 嘔吐がみられており、経口摂取量についての情報を収集する。
- 排尿の自立状況
- 生活活動強度
- 睡眠の状況
正解 2
- 夜間の病室内の照明を消す。
- 日中に車椅子での散歩を介助する。
- 落ち着きがない様子や夜間の独り言から、せん妄が考えられる。せん妄の改善には、生活リズムを整えることが重要である。夜間にきちんと睡眠がとれるよう、日中に車椅子で散歩をすることは適切である。
- Aさんに点滴を抜かないように説明する。
- 夜間は睡眠導入薬の処方を医師に依頼する。
正解 3
- 生活リズム
- 食事の摂取量
- 服薬管理の状況
- 利尿薬の飲み忘れがあるが、本人にはその自覚がない。服薬管理の状況は伝える情報として優先度が高い。
- 脱水症の治療内容
次の文を読み100〜102の問いに答えよ。
Aさん(90歳、女性)は、Alzheimer(アルツハイマー)病で、重度の認知機能の低下がある。要介護4で、短期入所(ショートステイ)や通所介護を利用している。長年、長男夫婦が自宅で介護している。
【問題100】 現在のAさんのAlzheimer(アルツハイマー)病の状態で最も適切なのはどれか。
正解 1
- 視線を動かすことができる。
- 重度の認知機能の低下があっても、視線を動かすことはできる。
- 車椅子を操作することができる。
- 要介護4であり、車椅子を操作することはできない。
- 季節に合わせて服を選ぶことができる。
- 重度の認知機能の低下があり、季節に合わせて服を選ぶことはできない。
- Mini-Mental State Examination(MMSE)20点である。
- 重度の認知機能の低下があり、MMSE20点を下回ると考えられる。
正解 4
- 「あなたがAさんの立場ならどうしますか」
- 「介護支援専門員の考えを聞いてみましょう」
- 「私の経験から胃瘻を造らないことを勧めます」
- 「Aさんはこのような状況になったとき、どうしたいと言っていましたか」
- 重要なのはAさんの意向である。Aさんがどのような意思を示していたかを、長年介護している家族に確認する。
正解 2
- 軽費老人ホーム
- 軽費老人ホームは、基本的には身の回りのことが自分でできる者が対象であるため、Aさんには当てはまらない。
- 介護老人福祉施設
- 介護老人福祉施設は、常時介護を必要とし、在宅介護が困難な要介護者を対象に、日常生活上の世話や機能訓練などを行う施設であり、Aさんに適している。
- 回復期リハビリテーション病棟
- 回復期リハビリテーション病棟とは、寝たきり防止と社会や家庭への復帰を目的として、回復期に集中的なリハビリテーションを行なう病棟であり、Aさんには当てはまらない。
- 認知症対応型共同生活介護(認知症高齢者グループホーム)
- 認知症対応型共同生活介護は、できる限り自立した生活が送れるようになることを目的として、認知症の要介護者が共同生活をしながら、日常生活の援助を受ける施設である。Aさんには当てはまらない。
次の文を読み103〜105の問いに答えよ。
Aちゃん(3歳、男児)は、斜視の手術のために母親とともに歩いて入院した。入院期間は3日の予定である。3週前に外来で医師と看護師がAちゃんに手術と入院とについて説明した。入院時、Aちゃんはやや緊張した表情をしているが「眼の手術をしに来たの。病院に2つ泊まるんだよ」と看護師に話した。
【問題103】 Aちゃんの眼の状態を図に示す。Aちゃんの斜視はどれか。
正解 3
- 右内斜視
- 右外斜視
- 左内斜視
- 左目が内側に向いており、左内斜視である。
- 左外斜視
正解 3
- 水を飲ませる。
- 手術直前であり、水を飲ませるのは適切でない。
- 前投薬の追加を医師に相談する。
- 前投薬をこれ以上追加する必要はない。
- ベッド上で絵本を読み聞かせる。
- 落ち着かせるためにベッド上で絵本を読み聞かせるのは適切である。
- 両親と一緒にプレイルームで遊ばせる。
- 催眠鎮静剤を服用しており、プレイルームで遊ばせるのは適切でない。
正解 1,4
- 「家でも点眼を続けてください」
- 感染防止のため、退院後も抗菌薬の点眼を継続する。
- 「家に帰ったら洗顔してもよいです」
- 術後1週間は洗顔できない。
- 「眼脂が続いたら受診してください」
- 術後1か月程度は眼脂が続く。
- 「物が二重に見えることがあります」
- 術後1か月程度は複視がみられる。
- 「家に帰ったら肘関節の固定は必要ありません」
- 患者は3歳児であり、眼を触ってしまう恐れがあるので、退院後も肘関節の固定を継続する。