第104回看護師国家試験一般問題・状況設定問題解説(午後問題106〜120)
次の文を読み106〜108の問いに答えよ。
Aさん(30歳、経産婦)は、妊娠40週1日で、妊娠経過は順調であった。本日、午後5時に体重3,900gの女児を正常分娩した。会陰縫合術を受け、分娩時出血量は400mLであった。分娩後2時間のバイタルサインは、体温37.1℃、脈拍64/分、血圧124/70mmHgであった。排尿後の子宮底の位置は臍下1横指、収縮良好で帰室した。Aさんは午後8時に夕食を全量摂取し、寝るまでに水を500mL飲んだ。
【問題106】 翌朝、Aさんは体温36.8℃、血圧116/66mmHgであった。就寝後から朝まで排尿はなく、子宮底の位置は臍高であった。Aさんの状態で経過観察してよいのはどれか。
正解 4
- 尿意なし
- 分娩時の児頭による膀胱神経や排尿括約筋の圧迫のため、一時的に膀胱麻痺が起きる可能性がある。尿意がない場合は、尿の充満による膀胱の過伸展を防ぐため、定期的に排尿を試みるようにする。
- 脈拍110/分
- 脈拍110/分は頻脈である。産褥期は一過性の徐脈がみられることはあるが、頻脈では出血や感染の可能性があるため注意が必要である。
- 軟らかく触れる子宮底
- 子宮底が軟らかく触れる場合は、子宮底の輪状マッサージを行い、子宮収縮を促す。
- 会陰切開縫合部の痛み
- 産褥1日での会陰切開縫合部の痛みは、正常であり、経過観察してよい。
正解 3
- 産褥熱
- 産褥熱は、分娩24時間後から産褥10日までに2日以上にわたって38℃以上の発熱が生じた状態をいう。
- 乳腺炎
- 乳房の発赤、硬結、熱感はないので、乳腺炎ではない。
- 子宮復古不全
- 子宮底の位置は臍高で軟らかいことから、子宮復古不全が最も疑われる。
- 妊娠高血圧症候群
- 血圧は正常であり、妊娠高血圧症候群ではない。
正解 3
- 「浴槽に入って清潔にしてください」
- 産後1か月くらいはシャワー浴とする。
- 「蛋白質の少ない食事にしてください」
- 日本人の食事摂取基準(2015年版)によると、授乳婦の蛋白質の推奨付加量は20g/日であり、十分に摂取する必要がある。
- 「悪露が増えたときは受診してください」
- 悪露は正常では、血性から褐色、黄色、白色と変化していき、量も減少していく。入院中に子宮復古不全がみられており、悪露が増えたときは受診する。
- 「授乳ごとに赤ちゃんへ追加のミルクを飲ませてください」
- 出生時の体重を上回っており、母乳だけで足りている。ミルクを追加する必要はない。
次の文を読み109〜111の問いに答えよ。
Aさん(52歳、女性、専業主婦)は、夫と2人の息子との4人で暮らしている。Aさんは内向的な性格であり、順番にまわってきた町内会の役員を引き受けたことで悩むことが多くなった。2か月前から食欲不振と不眠が続いている。1か月前から家事ができなくなり、死んでしまいたいと言い始めたため、夫が付き添って精神科を受診したところ、うつ病と診断された。
正解 2
- 清潔状態
- 水分摂取量
- 2か月前から食欲不振が続いており、体重も減少している。水分摂取量も減少している可能性があり、優先度が高い。
- 意識レベル
- 他者との交流状況
正解 4
- 内向的な性格
- 低下した意欲
- Aさんと息子との親子関係
- 自分は役に立たない人間だという考え方
- 認知とは、ものの受け取り方や考え方であり、認知療法は認知の誤りや偏り、歪みを修正するものである。自分は役に立たない人間だという考え方は誤った認知であるので、認知療法で修正する。
正解 1
- 希死念慮の確認
- うつ病の回復期では、気分よりも先に体力や行動力が回復していくため、希死念慮を行動に移しやすく自殺の危険性が高まる。Aさんは、うつ病の回復期であり、希死念慮の確認が最も優先される。
- 外出時の食事内容
- 外出時の服薬状況
- Aさんの家庭の経済状況
次の文を読み112〜114の問いに答えよ。
A君(8歳、男児)は、携帯型電子ゲームやサッカーが好きである。A君は宿題をしているときに、突然意識を失い、10数秒持続する四肢の屈曲を伴うけいれんを起こした。その後、全身の筋肉の収縮と弛緩を繰り返すけいれんが10秒程度続き、A君の呼吸は停止しチアノーゼが認められた。けいれんが終了し呼吸は回復したが、意識障害が持続していたため病院に救急搬送された。
【問題112】 A君の意識は徐々に回復したが、健忘が認められる。頭部CT検査で頭部外傷は認められなかった。A君は、てんかんの疑いで入院した。A君に対する検査で優先度が高いのはどれか。
正解 1
- 脳波検査
- 脳波検査は、頭部に装着した電極から脳神経細胞の電気活動を記録するもので、てんかんの診断と治療経過の判断に有用である。
- 知能検査
- 人格検査
- 脳脊髄液検査
正解 4
- 1人で入浴する。
- 入浴中に発作が起こる可能性があり、1人での入浴は避ける。
- 病棟の外を散歩する。
- いつ発作が起こるかわからないので、看護師の目の届かない病棟外を散歩することは避ける。
- 好きな携帯型電子ゲームで遊ぶ。
- 光刺激が発作を誘発する可能性があるので、電子ゲームで遊ぶのは望ましくない。
- 病棟レクリエーションへ参加する。
- 精神的ストレスは発作の誘因となる。ベッド上で過ごすことが多くなっているので、病棟レクリエーションへ参加して気分転換を図ることは適切である。
【問題114】 入院後1か月。A君の退院が決定した。A君の家族に対する説明として適切なのはどれか。2つ選べ。
正解 2,3
- 「今後サッカーは禁止です」
- サッカーをすることは可能である。
- 「十分な睡眠をとらせてください」
- 睡眠不足は発作の誘因となる。睡眠を十分にとり、規則正しい生活を送るようにする。
- 「規則正しい服薬が発作を予防します」
- 抗てんかん薬の血中濃度が不安定であると発作コントロールが不良となるので、規則正しい服薬が重要である。
- 「発作時はタオルを口にかませてください」
- 発作時は下顎を上方に押し上げて気道を確保し、吐物が気管に入らないよう顔を横に向ける。
- 「学校には病名を知らせる必要はないでしょう」
- 学校内で発作が起こった場合に備えて、学校には病名を知らせておいた方がよい。
次の文を読み115〜117の問いに答えよ。
Aさん(35歳、男性、建設業)は、両親と3人で暮らしている。3年前の仕事中に屋根から転落して、第12胸髄を損傷した。1か月前から車で作業所に通い、作業中はほとんど車椅子に座っている。週1回の訪問看護を利用している。
【問題115】 訪問時、仙骨部に軽度の発赤を認めた。褥瘡悪化予防のためにAさんに勧める内容で最も適切なのはどれか。
正解 3
- 仙骨部のマッサージを行う。
- 褥瘡を悪化させるため、褥瘡部位のマッサージは行わない。
- リクライニング式の車椅子を利用する。
- リクライニング式の車椅子にしても、仙骨部が圧迫されることには変わりない。
- 作業中にプッシュアップ動作を取り入れる。
- 仙骨部にかかる圧力を減らして血流の改善を図るため、プッシュアップ動作(臀部を浮かせる動作)を取り入れる。
- 座るときは膝関節と股関節を60度に曲げる。
- 座るときは、圧力を大腿後面の広い支持面で受けて体重を分散させるため、股関節、膝関節、足関節の角度を90度にする。
【問題116】 Aさんは繰り返し使用できるカテーテルによる間欠的自己導尿を行っている。排尿のセルフケアの指導として最も適切なのはどれか。
正解 3
- 24時間の蓄尿を勧める。
- 24時間の蓄尿は必要ない。
- カテーテルの挿入は無菌操作で行う。
- 在宅では無菌操作で行うことは困難である。導尿実施前に手洗いをして消毒綿などで陰部を清潔にしてからカテーテルを挿入すること、定期的な導尿で膀胱内に尿を溜めないようにすることが感染予防になる。
- 急に発熱した場合は医師に連絡する。
- 急に発熱した場合は感染症の可能性があるので、医師に連絡する。
- カテーテルを保管するケースの消毒薬は週1回交換する。
- カテーテルを保管するケースの消毒薬は毎日(少なくとも2日に1回)交換する。
正解 1
- 水分の摂取を促す。
- 猛暑が続く8月で、尿量も減少している。脱水を予防するため、水分の摂取を促すことが適切である。
- 浣腸の回数を増やす。
- ポータブルトイレの利用を勧める。
- 医師に別の緩下薬の処方を依頼する。
次の文を読み118〜120の問いに答えよ。
Aさん(37歳、女性)は、アジアの出身で1か月前に日本人の夫(40歳)と娘(12歳)とともに日本に移住した。母国語以外に簡単な言葉であれば日本語と英語は理解できる。Aさんは、胸のしこりに気付き1週前に受診し、検査の結果、乳癌と診断された。今後の治療について説明を受けるため外来を受診する予定である。夫から「仕事が忙しく説明に立ち会えない。妻は日本語が上手く話せないがどうしたらいいですか」と電話があった。
【問題118】 このときの夫への対応で最も適切なのはどれか。
正解 3
- 電話で治療について説明をする。
- 治療についての説明を電話で行うことは適切ではない。
- 英語での説明を医師に依頼すると伝える。
- 英語は簡単な言葉しか理解できず、英語での説明は適切ではない。
- 母国語の医療通訳者について情報提供する。
- 医療従事者と患者双方の言葉を正確に伝達する必要があり、医療通訳者についての情報提供を行うことは適切である。
- 日本語を話せる娘に通訳を依頼するよう伝える。
- 娘は12歳であり、医学的な説明を理解して正確に伝えられるとは考えにくく、適切ではない。
【問題119】 術前に、術後のAさんの苦痛の程度を確認する方法について説明をすることになった。苦痛の程度を確認する方法として最も適切なのはどれか。
正解 2
- 日本語を覚えてもらう。
- 短時間で日本語を覚えるのは困難である。
- 母国語と日本語の対応表を準備する。
- 母国語と日本語の対応表によって苦痛の程度を確認するのは適切である。
- ナースコールの利用方法を説明する。
- ナースコールでは苦痛の程度を確認できない。
- まばたきをしてもらうことを説明する。
- 会話は可能であり、まばたきでのコミュニケーションは必要ない。
正解 3
- 個室の利用を勧める。
- 同室の患者を説得する。
- 禁止されている理由を説明する。
- 病棟では香水の使用を禁止しており、禁止されている理由をAさんに説明するのが適切である。
- 医師の許可があればよいと説明する。