第105回看護師国家試験一般問題・状況設定問題解説(午前問題106〜120)
次の文を読み106〜108の問いに答えよ。
Aさん(20歳、女性、大学生)は、最近、同じ大学に所属するパートナー(21歳、男性)との性交後に白色帯下が増えた。外陰部に腫瘤はみられず掻痒感や痛みはないが、時々、下腹部に痛みがあった。Aさんは性感染症(STD)を疑い、1人で産婦人科クリニックを受診した。診察時の体温36.8℃、脈拍62/分であった。
【問題106】 Aさんの状態に最もあてはまる性感染症(STD)はどれか。
正解 4
- 性器ヘルペス
- 性器ヘルペスでは、外陰部に水疱や潰瘍を生じ、強い痛みや発熱を伴うことが多い。
- 尖圭コンジローマ
- 尖圭コンジローマでは、性器や肛門周辺に腫瘤(イボ)ができ、帯下が増加する。
- 腟トリコモナス症
- 腟トリコモナス症では、泡状で悪臭を伴う帯下の増加や外陰部の強い掻痒感がみられる。
- 性器クラミジア感染症
- 性器クラミジア感染症は、自覚症状がないことが多いが、下腹部痛や帯下の増加、不正性器出血などの症状がみられることがある。
正解 4
- パートナーには話さなくてもよいと伝える。
- パートナーに来院を促す電話をすると伝える。
- Aさんが通う大学の保健センターの看護師に相談するよう勧める。
- 性感染症(STD)に罹患したことをAさんからパートナーに伝えるよう勧める。
- パートナーも治療の対象であり、性感染症(STD)に罹患したことをAさんからパートナーに伝えるよう勧める。
正解 4
- 処方された内服薬をAさんが飲み終えた後
- Aさんの性感染症(STD)の症状がなくなった後
- パートナーが性感染症(STD)の検査を受けた後
- Aさんとパートナーの性感染症(STD)の治癒が確認された後
- ピンポン感染を防止するためにも、Aさんとパートナー両方の性感染症(STD)の治癒が確認されるまでは、性交渉を禁止とする。
次の文を読み109〜111の問いに答えよ。
Aさん(36歳、経産婦)は、夫と長男(3歳)との3人で暮らしている。妊娠40週0日、午前9時にAさんは陣痛開始のため入院した。このときは未破水であった。午後1時、体温36.8℃、脈拍64/分、血圧126/70mmHgであった。Aさんに分娩監視装置を装着したところ、陣痛間欠4分、胎児心拍数基線は140bpmで、一過性徐脈はみられなかった。午後2時、破水感があり医師が診察したところ、子宮口は7cm開大であり、羊水の流出がみられた。
【問題109】 この時点でのAさんのアセスメントで適切なのはどれか。
正解 3
- 胎児頻脈
- 胎児心拍数基線は140bpmであり、正常である。
- 前期破水
- 前期破水は、分娩開始以前の破水である。分娩開始後で子宮口全開大前に起こる破水は早期破水である。
- 分娩第1期
- 規則的陣痛開始から子宮口全開大までは分娩第1期である。
- 妊娠高血圧症候群
- 血圧126/70mmHgであり、妊娠高血圧症候群ではない。
正解 3
- 鉄分の多い食事を勧める。
- 子宮底に冷罨法を行う。
- 乳頭のケアを行う。
- 乳頭の伸びが少なく児が吸啜するまでに時間がかかっているので、乳頭のケアを行うのが最も適切である。
- 授乳を中止する。
正解 3
- 「長男と2人きりになる時間をつくるようにしましょう」
- 「長男と一緒に赤ちゃんのおむつを交換しましょう」
- 「長男にしっかりするように話しましょう」
- 注意や叱責をしたりせず、スキンシップやコミュニケーションを多く取ることが大切である。
- 「長男をほめて安心させましょう」
次の文を読み112〜114の問いに答えよ。
Aさん(42歳、男性)は、全身倦怠感を訴え病院を受診したところ、肝機能障害が認められ内科に入院した。Aさんは大量飲酒を長期間続けており、アルコール依存症が疑われた。内科医からの依頼で精神科医が診察をしたときは、Aさんは意識清明で見当識障害はなかった。妻とは不仲であり、半年前に仕事で大きなトラブルがあったため、朝から飲酒するようになり飲酒量はさらに増えていた。
正解 4
- 病的酩酊
- 病的酩酊は、飲酒によって突然に意識障害や興奮状態が出現するものである。
- 妻との共依存
- 妻とは不仲であり、妻との共依存は認められない。
- コルサコフ症候群
- アルコール依存症でみられることがあるコルサコフ症候群では、健忘、記銘力障害、見当識障害、作話を伴う。
- アルコールに対する耐性
- アルコールに対する耐性ができると、同じ酩酊感を得るためにより多くのアルコールが必要となり、飲酒量が増える。
【問題113】 入院後2日、夜間にAさんは「壁や布団に虫がたくさんいる」と訴え、興奮して眠らなかった。考えられるのはどれか。
正解 1
- 振戦せん妄
- アルコール離脱症状の一つである振戦せん妄では、発汗や振戦、幻覚、意識障害などを伴う。「壁や布団に虫がたくさんいる」という訴えから、幻視がみられている。
- アルコール幻覚症
- レム睡眠行動障害
- 急性アルコール中毒
【問題114】 その後、薬物治療によって興奮は改善した。肝機能も改善し、夜間もよく眠れるようになったため、退院が決定した。Aさんに対する退院時の説明で適切なのはどれか。2つ選べ。
正解 2,3
- 「仕事は辞めましょう」
- 「断酒会に参加しましょう」
- アルコール依存症の治療には断酒が必要であり、断酒会への参加は適切である。
- 「集団精神療法を受けましょう」
- 集団精神療法では、同じような問題を抱える人と話すことによって、自分自身のことをよく知ることができ、問題を乗り越える知識や方法を身につけることができる。アルコール依存症や薬物依存症などに効果的である。
- 「飲酒しない日を週1日設けましょう」
- 「生活行動を家族に記録してもらいましょう」
次の文を読み115〜117の問いに答えよ。
Aさん(42歳、女性)は、2年前に筋萎縮性側索硬化症(ALS)の確定診断を受けた。夫(50歳)と長女(16歳)と自宅で過ごしている。Aさんは「なるべく口から食べるようにしたい」と話し、食事と併せて胃瘻から栄養剤の注入を行っている。要介護2の認定を受け、訪問看護および訪問介護を利用している。食事の介助を行う夫から、訪問看護師に「介助の方法が良くないのか、妻はうまく飲み込めていません」と相談の電話があった。
【問題115】 夫に対する訪問看護師の対応として最も適切なのはどれか。
正解 5
- 「食事の介助に時間をかけましょう」
- 「胃瘻からの栄養量を増やしましょう」
- 「介助方法に問題があるかもしれません」
- 「嚥下食の宅配サービスを頼んでみましょう」
- 「飲み込みの状態に応じた食事を一緒に考えましょう」
- 「うまく飲み込めていない」という相談に対する答えとして最も適切である。
【問題116】 6か月後、Aさんは呼吸障害と嚥下障害とが進行し、気管切開による人工呼吸療法を開始するために入院した。退院に向けて病棟看護師が行う家族への気管内吸引の説明として最も適切なのはどれか。
正解 2
- 夜間に定期的な吸引を行う。
- 夜間の定期的な吸引は、家族の負担が大きく適切ではない。
- 就寝前に体位ドレナージを行う。
- 就寝前に体位ドレナージによって排痰を行っておくことで、夜間の吸引頻度を少なくすることができる。
- 気道内圧が低下したら吸引する。
- 気道内圧が上昇したら吸引を行う。
- 吸引時は気管カニューレのカフ圧を上げる。
- 気管カニューレのカフ圧は適正な圧を維持する。
正解 3
- 夫の介護負担
- 座位の保持能力
- 緊急時の対応方法
- 気管切開部から水が入ってしまうなどの事故も起こりえるので、緊急時の対応方法を検討することは重要である。
- 入浴後の人工呼吸器の回路交換の方法
- 入浴時の関節可動域(ROM)訓練の実施
次の文を読み118〜120の問いに答えよ。
Aさん(50歳、女性)は、子宮頸癌の終末期で入院し緩和ケア治療を行っている。倦怠感は強いが食事は摂れている。麻薬を使用し疼痛のコントロールはできており、ふらつきはあるがトイレ歩行はできる。医師からは余命2か月と告知されており、退院して自宅で最期を迎えたいと希望している。主な介護者となる夫は58歳で、5年前の脳梗塞の後遺症で不全麻痺がある。経済的には安定している。子どもはいない。
正解 2
- 生活保護の手続きをするよう促す。
- 経済的には安定しており、適切ではない。
- 要介護認定の申請手続きをするよう促す。
- 介護保険サービスを受けるために、要介護認定の申請手続きをすることは適切である。
- 家事をしてくれる人を雇用するよう促す。
- 夫の不安は介護に対してであり、家事に対してではない。
- 訪問リハビリテーションの利用を勧める。
- Aさんは終末期であり、訪問リハビリテーションの利用は適切ではない。
【問題119】 看護師が退院に向けて最も連携すべき職種はどれか。
正解 3
- 理学療法士
- 管理栄養士
- 介護支援専門員
- 退院後円滑に在宅療養に移行できるよう、介護支援専門員と連携を図る必要がある。
- 保健所の保健師
正解 4
- 夫に頑張るよう励ます。
- 頑張るよう励ますことは支援にならない。
- 病院に入院するよう提案する。
- 自宅で最期を迎えたいというAさんの希望と異なり、不適切である。
- 麻薬の量を増やすことを提案する。
- 痛みで苦しんでいる様子はないので、麻薬の量を増やす必要はない。
- Aさんが希望する看取りの場について再度話し合う。
- 夫は家で看取ることができるか不安を感じており、Aさんが希望する看取りの場について再度話し合うことは適切である。