第105回看護師国家試験一般問題・状況設定問題解説(午後問題91〜105)
次の文を読み91〜93の問いに答えよ。
Aさん(28歳、女性、会社員)は、夫と1歳の娘との3人で暮らしている。25歳のときに潰瘍性大腸炎と診断され、内服治療を続けてきた。Aさんは27歳で出産後、職場に復帰していたが3か月前から排便回数が増え、便に血液が混入するようになった。1週前から下痢が1日8〜10回あり、腹痛や発熱もみられ、外来受診したところ、潰瘍性大腸炎の再燃のため入院することになった。身長158.2cm、体重40.2kg。体温38.3℃、脈拍92/分、血圧108/76mmHgであった。血液検査データは、赤血球340万/μL、白血球9,800/μL、Hb7.8g/dL、アルブミン2.5g/dL、CRP5.5mg/dL。
【問題91】 Aさんの状態のアセスメントで適切なのはどれか。
正解 3
- BMIによる肥満度の判定基準では普通体重に該当する。
- BMIは40.2÷1.582÷1.582=16.06となり、低体重に該当する。
- 貧血は心不全の徴候を示している。
- 貧血は潰瘍性大腸炎による血便が原因であり、心不全の徴候ではない。
- 浮腫が出現する可能性がある。
- アルブミン2.5g/dLであり、浸透圧低下による浮腫が出現する可能性がある。
- 脱水に陥る可能性は低い。
- 下痢が1日8〜10回あり、脱水に陥る可能性がある。
正解 3
- プレドニゾロンの内服
- 点滴静脈内注射の実施
- 急性増悪
- 発熱、下痢、強い倦怠感から、入浴による身体的負担を考慮して清拭を提案したと考えられる。
- 貧血
正解 4
- 「仕事は今までどおりで大丈夫です」
- 職場復帰をしてから再燃しており、今までどおりで大丈夫とは言えない。
- 「下痢が続いたら炭水化物を減らしてください」
- 下痢が続いたら低脂肪、低残渣食とする。
- 「経腸成分栄養剤600mLで1日分の栄養が確保できます」
- 経腸成分栄養剤600mLでは、1日分の栄養は確保できない。
- 「悪化のきっかけになるようなことがなかったか一緒に考えてみましょう」
- 再燃を予防するため、原因を一緒に考えることは適切である。
次の文を読み94〜96の問いに答えよ。
Aさん(48歳、男性)は、横断歩道を歩行中に乗用車に衝突され、救命救急センターに搬送された。搬送時、呼びかけに開眼せず、四肢の筋緊張が亢進していた。呼吸数30/分、脈拍60/分、血圧142/98mmHgであった。右側頭部と右肩甲骨部の擦過傷以外に目立った外傷はなかった。
【問題94】 搬送時のAさんの様子を図に示す。Aさんの状態はどれか。
正解 3
- 項部硬直
- 項部硬直は、髄膜炎やクモ膜下出血などでみられる髄膜刺激症状である。仰臥位で頭部を持ち上げると抵抗がみられる。
- 除脳硬直
- 除脳硬直は、中脳や橋の障害によってみられる異常肢位である。四肢の伸展、上肢の内転、下肢の足底屈などがみられる。
- 除皮質硬直
- 除皮質硬直は、大脳皮質に広範囲の障害が起こった際に生じ、上肢の屈曲、下肢の伸展がみられる。
- 間代性けいれん
- 間代性けいれんは、筋肉の収縮と弛緩を繰り返す痙攣で、てんかんなどでみられる。
- 強直性けいれん
- 強直性けいれんは、筋肉の強直のため、四肢や体幹が固くつっぱったような痙攣で、てんかんなどでみられる。
【問題95】 Aさんは、硬膜下血腫および脳挫傷と診断され、硬膜下血腫に対して開頭血腫除去術が行われた。ICUに入室後、マンニトールの投与が開始された。このときの体位で最も適切なのはどれか。
正解 5
- 座位
- 腹臥位
- 側臥位
- 仰臥位
- semi-Fowler(セミファウラー)位
- 頭蓋内圧が亢進しているので、頭蓋内の静脈還流を促進して脳循環を改善させるためセミファウラー位とする。
正解 1
- 離床センサーを設置する。
- 車椅子への移乗は看護師の介助が必要であるにもかかわらず、1人でベッドから降りようとする行動がみられるため、離床センサーを設置し、転倒事故などを防止する。
- 右側を意識するように促す。
- 左の視空間失認があるため、左側を意識するように促す。
- 食器をAさんの左側に配置する。
- 左の視空間失認があるため、認識できるよう食器は右側に配置する。
- 残した食事は看護師が介助して口に運ぶ。
- 食事を残しているのは認識できていないだけであり、自力で食事を摂ることは可能である。
- 視空間失認が改善してから歩行訓練を開始する。
- 歩行訓練は早期から開始する。
次の文を読み97〜99の問いに答えよ。
Aさん(85歳、女性)は、1人暮らしで、他県に住んでいる長男家族がいる。腰部脊柱管狭窄症と診断されているが、ゆっくりとした動作であれば日常生活が可能であり、畑で野菜をつくることを趣味としている。
正解 2
- 溢流性尿失禁
- 溢流性尿失禁は、慢性尿閉によって尿が膀胱に溜まり、膀胱内圧が上昇して尿が漏れ出してしまうものである。
- 機能性尿失禁
- 機能性尿失禁は、運動機能低下や認知症などによりトイレに間に合わなかったり、排尿すべき場所を認識できずに生じる尿失禁である。Aさんは洋式トイレに座るまでに時間がかかることで尿失禁が起こっており、機能性尿失禁が考えられる。
- 切迫性尿失禁
- 切迫性尿失禁は、膀胱が過敏な状態で、強い尿意が急に起こり、我慢できずに尿が漏れてしまうものである。
- 腹圧性尿失禁
- 腹圧性尿失禁は、骨盤底筋や尿道括約筋の低下により、努責やくしゃみなどの腹圧に耐えられずに尿失禁が生じるものである。
【問題98】 Aさんから「尿が漏れて困ります。洗濯物が増えるので、干したり取り込んだりするのが大変です。どうしたらよいでしょうか」と相談を受けた。看護師の対応で最も適切なのはどれか。
正解 4
- テープ付き紙おむつを紹介する。
- 背もたれ付きポータブルトイレを紹介する。
- 介護保険の訪問介護を受けた方がよいと説明する。
- 下着の中に入れて使う尿失禁用パッドを紹介する。
- 少量の尿漏れであるので、尿失禁用パッドを使用するのが最も適切である。
正解 4
- 「痛くなれば、また入院して治療しましょう」
- 「入院が長引くと、もっと動けなくなりますよ」
- 「1人暮らしが心配なら息子さんと同居したらいかがですか」
- 「自宅でも痛みが強くならないような生活の工夫を考えましょう」
- Aさんは腰痛が出現することに対して不安を感じており、自宅での生活の工夫を一緒に考えることは援助として最も適切である。
次の文を読み100〜102の問いに答えよ。
Aさん(81歳、女性)は、6年前にレビー小体型認知症と診断された。Aさんは雨の中を1人で外出して自宅に戻れなくなり、同居している娘に発見された。その夜、娘が話しかけたときのAさんの反応が鈍くなったため、かかりつけの病院を受診し、細菌性肺炎と診断され入院した。呼吸器疾患の既往はない。
正解 3
- 樽状胸郭
- 樽状胸郭は、肺内に空気が溜まって肺が過膨張し、胸郭が樽状に膨張した状態である。慢性閉塞性肺疾患などでみられる。
- 呼気の延長
- 呼気の延長は、慢性閉塞性肺疾患などでみられる。
- 粗い断続性副雑音
- 粗い断続性副雑音は、肺炎などで気道内に分泌物が貯留している際に聴取される。
- 高調性連続性副雑音
- 高調性連続性副雑音は、気管支喘息など気道の狭窄時に聴取される。
【問題101】 入院当日、抗菌薬の点滴静脈内注射が開始された。投与開始直後からAさんが輸液ラインを指し「虫がいる」と大きな声を上げている。このときの看護師の対応で最も適切なのはどれか。
正解 4
- 虫がいないことを説明する。
- 点滴静脈内注射を中止する。
- Aさんをナースステーションに移動する。
- 輸液ラインをAさんから見えない状態にする。
- 輸液ラインを指し「虫がいる」と言っているので、輸液ラインをAさんから見えない状態にするのが最も適切である。
正解 2
- 転倒の危険を説明する。
- 転倒の危険を説明しても本人は納得しないため、適切ではない。
- 行きたい場所へ付き添う。
- 転倒予防のため付き添うことは適切である。
- 子ども時代の思い出を尋ねる。
- 話をそらすのは適切ではない。
- 子どもはどこかへ行ってしまったと説明する。
- 幻視を否定することは適切ではない。
次の文を読み103〜105の問いに答えよ。
Aちゃん(11歳、女児)は、両親と3人で暮らしている。3週前から疲労感を訴え昼寝をするようになった。そのころから夜間に尿意で起きてトイレに行くようになり、1日の尿の回数が増えた。2日前から食欲がなくヨーグルトや水分を摂取していたが、今朝から吐き気と嘔吐とがあり水分も摂れない状態になったため、母親とともに受診した。血液検査データは、赤血球580万/μL、Hb13.9g/dL、Ht44%、白血球9,500/μL、尿素窒素31mg/dL、クレアチニン0.7mg/dL、Na141mEq/L、K4.8mEq/L、Cl94mEq/L、随時血糖900mg/dL。動脈血ガス分析は、pH7.21、BE-12.3、HCO3-10.9mEq/L。尿検査は、尿糖2+、尿ケトン体3+であった。Aちゃんは1型糖尿病の疑いで入院した。
正解 4,5
- 冷汗
- 冷汗は低血糖の症状である。
- 浮腫
- 糖尿病で浮腫は起こらない。
- 悪寒
- 発熱の情報はなく、悪寒は起こらない。
- 意識障害
- 尿ケトン体3+から、ケトアシドーシスによる意識障害を起こす可能性があり、注意が必要である。
- 皮膚の弾力性の低下
- 嘔吐があり水分も摂れない状態であり、脱水が予測されるため、皮膚の弾力性の低下に注意が必要である。
正解 1,3
- インスリンを注射する部位は前回と違う部位に行う。
- インスリン注射を同じ部位に繰り返すと吸収が悪くなるため、注射する部位は前回と違う部位にする。
- 超速効型インスリンは単位数を変更せずに注射する。
- 超速効型インスリンは、食事量や血糖値によって単位数を変更する。
- 食欲がないときは食後に超速効型インスリンを注射する。
- 食欲がないときは、食事量に合わせて食後に超速効型インスリンを注射する。
- 血糖値が100mg/dL以下のときは持効型溶解インスリンの注射を中止する。
- 注射は中止しない。
- インスリンの注射をした後は針を刺した場所をよくもむ。
- 注射した場所をもむと吸収が早まり低血糖になる可能性があるため、もんではならない。
正解 5
- 「長距離走や水泳の授業は見学させてください」
- 運動は可能であり、授業を見学する必要はない。
- 「宿泊を伴う校外活動は保護者の同伴が必要です」
- 保護者の同伴は必要ない。
- 「教室内にインスリン注射を行う場所を設けてください」
- インスリン注射は保健室で行う。
- 「家庭科の調理実習は同級生と違う献立にしてください」
- 違う献立にする必要はない。
- 「手指の震えや強い空腹感があるときはブドウ糖の補食が必要です」
- 手指の震えや強い空腹感は低血糖症状であるため、ブドウ糖の補食が必要である。